いちにち

ハイディ・ゴーネル えくにかおり訳 PRCO出版局 1992年

女の子のなんでもない一日が描かれます。

早起きして、服を着て、朝ごはんをたっぷり食べて・・・。色画用紙を切り抜いてはったような絵で、くっきりとした絵です。よくある日常ですが、バスで学校へ行ったり、ヴァイオリンの授業があったり、お昼休みは給食ではなくてベンチでパンを食べたりと、文化の違いが感じられます。家に帰ってからは友だちとバスケットやかくれんぼで遊び、夜には犬のえさをやり、夜ご飯の後はテレビを見たり本を読んだり。宿題をして日記を書いて寝る。

きちんとした日常は、平和だからすごすことができる。

ゲームの時間がないのがいいなあ。

ぼく・わたし

高畠那生 絵本館 2003年

見開きの右ページに「ぼく、べんきょうはとくいじゃないけれど」と、男の子がノートの上にひじをつき、スツールに片足上げてつまらなそうな顔で、遠くを見ています。ノートの横にはおそらく算数と国語と思われる教科書が開かれています。同じ机の上に、鉛筆が二本と消しゴムが直立しています。

左ページには、「かみひこうきはとくい。」。同じ部屋の中、同じ机の前で、男の子は笑顔で紙飛行機を飛ばしています。右ページでは気付かなかったくず入れが、左ページでは大きく描かれ、中に紙飛行機がふたつ、そばには四つ落ちています。飛んでいるのも置いてあるのも手に持っているのも、紙飛行機はあちこちの方向を向いています。鉛筆と消しゴムは倒れ、算数の教科書は閉じられています。

このようなページ構成で、「ぼくむしにさされるのはだいきらい。」=「でも、ちゅうしゃはがまんできる。」とか、「ぼく、ちょっときがよわい。」=「でも、こたえはしってるんだ」とか、人には不得手なものと得意なものがあって当然だと主張しています。

最後のページは、登場した子どもたちがみんないっしょにジェットコースターに乗っている場面です。

子どもの健やかな心の成長に欠かせないのは、自己肯定感。親子で読んでほしいなと思う本です。

しろいかみ

谷内つねお作/西山悦子撮影/福音館書店 2018年『こどものとも0,1,2』の2018年2月号です。
 
背景は、はっきりした一色。その上に白い紙が置かれています。紙は、「くる」と丸まり、「くるくる」と丸まります。「ぎこ」と折れ曲がり、「ぎこぎこ」と折れ曲がります。影があるので、ほんとうにつかめそうです。一枚の紙が、単純だけれど自由自在に変形します。
2歳から4歳に読みましたが、ごく当たり前のことに、こんなに子どもは驚きを感じ喜ぶのかと、目を見張ります。

ウメ・モモ・サクラ

赤木かん子作/藤井英美写真/新樹社 2016年

科学絵本です。わたしたちは、ふつう、梅の実と桃の実とサクランボの区別はつきますね。でも、葉っぱだけ並べてみて、どれがどれか分かりますか?冬になって葉っぱも落ちて裸になった木を見て、どれがどれか言い当てられますか?

どこがどう違うのか、花のつき方やおしべめしべのつき方まで、写真でわかりやすく説明してくれています。

ところで、この3種は、みな同じバラ目バラ科の木です。へえ、バラなんだと思われるかもしれません。じゃあ、うちの庭に咲いているバラとどこが同じなんでしょうって、調べてみたくなりませんか?

身近なところに知らないことがいっぱいあります。知るのはおもしろいです。

空の飛びかた

ゼバスティアン・メッシェンモーザー作/関口裕昭訳/光村教育図書 2009年

語り手「わたし」は中年の男性です。わたしは、歩いているとペンギンに会いました。ペンギンは、「空から落っこちたんだよ」といいます。

ペンギンは、鳥になりきれば飛べると思って飛んだんだけど、飛んでる最中にほかの飛んでいる鳥に出会ったとたん、自分は飛ぶようにはできていないなと不安になった。で、墜落したというのです。

かわいそうになったわたしは、ペンギンと暮らしはじめます。そして、ペンギンが飛べるように、奇想天外な方法を次つぎと試します。そのリアルな絵がとにかく笑えてしまうのです。

ある日、ペンギンの群れが頭上を飛んでいくのを見つけます。すると彼のペンギンはエイっとジャンプして・・・

さて、飛べたでしょうか?

はなを くんくん

ルース・クラウス文/マーク・サイモント絵/きじまはじめ訳/福音館書店 1967年

雪の降り積もる森の中。白黒モノトーンで雪原と、冬眠中の動物たちが描かれます。地面の下、石の間で眠っているのは野ネズミです。岩あなで眠っているのはクマ、木の洞にはかたつむりが眠っています。りすは木の中で、山ネズミは地面の下で。

いきなり動物たちは目を覚まし、雪の中を走りだします。
のねずみが鼻をクンクン。くまが鼻をクンクン。みんなみんな走りだします。
 そして、ある地点でいっせいに立ちどまり、笑い、おどりだします。

最後のページのまんなかに、黄色い花が描かれ、動物たちは喜びにあふれた目で見つめています。心なしか、描かれている雪も、春の雪に見えてきます。

てぶくろ

エウゲーニー・M・ラチョフ絵/うちだりさこ訳/福音館書店 1965年

ウクライナの昔話です。昔話絵本ではピカイチです。ラチョフはこの絵本を描いた後、違った絵柄で描き直していて、日本では2003年に田中潔訳で出版されています。新しいほうもおしゃれですが、古いほうが読者にはなじみがあり、また、昔話らしい雰囲気があるように思います。

おじいさんが森の中に落としていった手袋。ねずみが駆けてきて、「ここでくらすことにするわ」といって、はしご付きの家にします。そこへ、蛙がやって来ていっしょに暮らしはじめると、うさぎやきつねやおおかみやいのししもやって来て手袋の中で暮らしはじめます。
 
てぶくろにバルコニーがつき、ドアがつき、窓が付き、呼び鈴が付き。細部まで楽しめます。ウクライナの民族衣装も興味深いです。
 
最後にクマがやって来て、さて、手袋はどうなったでしょう?

ゆきのうえのあしあと

ウォン・ハーバート・イー作/福本友美子訳/ひさかたチャイルド 2008年

雪が降り積もり、女の子がそりすべりをしているところからページが始まります。大きな雪だるまも作っています。ひとりきりなのですが、それでも雪遊びの楽しさが満載です。
女の子は雪の上に足跡を見つけます。誰の足跡だろうと、あとをつけて行きます。足跡はどこまでもどこまでも続きます。いろんな動物がいますが、どれの足跡でもありません。また雪が降りだし、寒くなって帰ろうと思っていると、足跡はお家に向かって続いています!さて、だれの足跡だったでしょう。
 
幼児からでも楽しめるかもしれませんが、オチがちょっと分かりづらいです。

サンカクさん

マック・バーネット文/ジョン・クラッセン絵/長谷川義史訳/クレヨンハウス 2017年

表紙のサンカクさんの目を見ただけで、はっと思いだす人は多いでしょう。『どこいったん』のジョン・クラッセンの絵です。

サンカクさんの家は三角で、建物?も、山?も、何もかも三角です。サンカクさんは、シカクに悪さをしにでかけます。すると、風景がどんどん変化します。「あーしんど」といいながらもどんどん行くと、山?も、建物?も四角い場所に到着します。シカクの家の入り口でサンカクさんは悪さをします。どんな悪さかって? それは読んでのお楽しみ。

怒ったシカクは、仕返しをしようと、サンカクさんといっしょにサンカクさんの家に向かいます。さて、どんな仕返しをしたのでしょう?

読後は、サンカクさんとシカクさん、ほんまはえらい仲ええねんなと笑うてしまいますねん。

ねむるまえにクマは

フィリップ・C・ステッド文/エリン・E・ステッド絵/青山南訳/光村教育図書 2012年

「冬がちかづいてきて、クマはねむくなってきました。」と、物語は始まります。丸太にこしかけたクマは、ほんとうに眠そうです。でも、冬眠に入る前に、みんなに話したいことがありました。それで、友だちを次つぎと呼びとめます。ねずみ、かも、かえる、でもみんな冬支度に大忙しで、クマの話なんて聞いていられません。もぐらなんて、もう冬眠していました。雪が降りはじめ、クマはあきらめてあなにもぐって眠ってしまいました。

何か月かして春になりました。クマはみんなを起こして回りました。そしてみんなを集めて話をしようと思いました。みんな楽しみに待っています。が、思いだせない…

『エイモスさんがかぜをひくと』と同じ作者のゆったり温かな絵本です。