「2 幼児から」カテゴリーアーカイブ

すしん

たなかひかる ポプラ社 2023年

お寿司たちが織り成す奇想天外な逃走劇。

最初に登場するのは、マグロのにぎり。まぐろのにぎりは、いきなりねじ込み式キャスターに飛び乗って走り出す。
すしーん
すると、たまご、えび、サーモン、ほたて、うに、いくら、・・・
みなキャスターを付けて、全速力で、走る、走る。
そこへ、プロペラをつけたお寿司の集団が飛んできて、まぐろのにぎりから、ネタだけつかんでぬすんでいく。しゃりとわさびだけになったにぎりの途方に暮れた表情が、何んともまぬけであわれ。
大人も思わずくすっと笑ってしまいます。
ところがそこで終わらない!
ものすごい「すしーん」と音がして、やってきたのは・・・・

あかちゃんのゆりかご

あかちゃんのゆりかご

レベッカ・ボンド作 さくまゆみこ訳 偕成社 2002年

最初のページは見開きで、赤ちゃんが生まれてくると分かった時の家族たちの喜びのダンスが描かれます。
お母さん、お父さん、おばあちゃん、おじいちゃん、ぼく。犬も踊り、窓の外の庭の木も踊りだしそうです。

みんなはそれぞれ、赤ちゃんをむかえるために、何かできることはないかと考えます。そして、お父さんは板を切ってゆりかごを作りました。しっかりできたので、お父さんはゆりかごに入ってみます。そして、あかちゃんみたいにすやすやと眠ってしまいます。
おじいちゃんは、ゆりかごにペンキで色を塗り、海や魚やキリンやシマウマを描きます。うまく描けたので、おじいちゃんはゆりかごに入ってみます。やっぱりすやすや眠ります。
おばあちゃんも、ぼくも、ゆりかごに何かを加えて行きます。
お母さんは、出来上がったゆりかごに何かが足りないと感じて・・・

明るく、温かく、楽しい絵で誕生の喜びを伝える絵本です。

ごきげんならいおん

ごきげんならいおん

ルイーズ・ファティオ文 ロジャー・デュボアザン絵 むらおかはなこ訳 福音館書店 1964年

フランスのおしゃれな街とアフリカの猛獣らいおんとのコントラストがさえています。
街の中の公園に小さな動物園があって、その岩山に、らいおんが住んでいます。街の人たちは、このらいおんにいつも声をかけてくれます。だから、らいおんは、いつもごきげんです。とくに、飼育係の息子フランソワとは、仲良しでした。
あるとき、飼育室のドアがしめわすれてありました。そこで、ごきげんならいおんは、今日は自分が町のみんなのところへ声をかけに行こうと思います。ところが、らいおんが石畳の道を歩いていくと・・・

安全な場所からだと相手をする大人と、どんなときでも友だちでいる子どもと。本当の信頼とは何かと考えさせられます。

アブラ・カダブラ・タクリコ

きたむらさとし BL出版 2019年

シルクハットの中から出てきたのは、うさぎのハティー。
ハティーは、魔法が使えます。

アブラ カダブラ カタクリコ

魔法の言葉を唱えると、帽子の中から出てきたのは・・・ねこ!

アブラ カダブラ カタクリコ

こんどは、リスが出てきます。
シルクハットからちょっとのぞいている動物の一部から何が出てくるのかを想像する楽しみがあります。
想像を裏切るものも出てきますが、それが愉快です。

一番大きいゾウをみんなでひっぱりだすと、あとはもう何もないのかな?
のぞいてみたら・・・うわー!

しろいゆき あかるいゆき

しろいゆき あかるいゆき

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アルビン・トレッセルト文 ロジャー・デュボアザン絵 えくにかおり訳 ブックローン出版 1995年 

冬、雪が降り始めると、人びとは空を見上げてこれからの季節に向けて準備を始めます。
ゆうびんやさん、おまわりさん、おまわりさんのおくさん、そして、子どもたち。
雪が少しずつつもって家も道路も田畑も雪で覆われます。
雪の中での人々の生活が静かに描かれます。

雪が解け始め、春が来ます。その年最初のこまどりが、子どもたちに、春を告げます。
詩のような静かな文章に、素朴な絵がぴったりです。

ねずみのおいしゃさま

なかがわまさふみ作 やまわきゆりこ絵 福音館書店 1957年

《こどものとも傑作集》の一冊です。

ねずみのお医者さまの家に、りすさんから「子どもが熱を出した」と電話がかかります。
ねずみのお医者さまは、雪の中をスクーターで急ぎます。けれども、雪はどんどん降り積もり、お医者さんは、雪だるまのようになってしまいました。スクーターも動かなくなりました。
そのとき、冬眠中のカエル一家の家を見つけました。

すいぶん古い本なので、電話機やスクーター、往診など、今の子どもたちの知らないものが出てきますが、絵とストーリーが十分にカバーしてくれます。

まよなかのおしっこ

まよなかのおしっこ

さいとうしのぶ作 KADOKAWA 2022年

今日からひとりで寝ると宣言をしたぼく。でも、問題は、おしっこです。真夜中におしっこがしたくなりました。
ぼくは、どうやってこの問題を解決するのでしょうか。子どもにとって、永遠の課題かもしれませんね。あるある感がいっぱいの共感できるストーリーです。
ところどころのページに隠れている小さなお化けを見つけるのも楽しいです。

わたしのぼうし

わたしのぼうし

佐野洋子作・絵 ポプラ社 2022年

おにいさんは青いリボンのついた帽子、わたしは赤い花のついた帽子を持っています。
幼い兄妹は、でかけるとき、いつも帽子をかぶります。
トンボとりに行くときも、動物園に行くときも、「おかあさん、ぼうし、ぼうし」といって、かぶります。
古くなって少しよごれていますが、羊の噛み跡があったり、デパートで迷子になっても帽子のおかげで見つかったりと、日常のささやかな経験とともになくてはならない帽子です。
ところが、わたしは電車の窓から帽子を飛ばしてしまったのです。
お父さんは、「とんでいったのが、おまえでなくてよかったよ」といい、お母さんは、アイスクリームを買ってくれましたが、わたしは悲しくて大声で泣き続けます。
帽子をなくした次の日、お父さんは、兄妹に新しい帽子を買って来ました。
おにいさんは、すぐにその帽子をかぶりましたが、わたしはかぶることができません。わたしの帽子のようではなかったからです。

幼い子どもにとって、「自分のもの」がどのようにしてほんとうの自分のものになるのかが、よく分かります。

両親の子どもへの対応がとてもあたたかく、信頼しうる親というもののあり方も、よく分かります。
心優しいストーリーと文章と絵がマッチした傑作です。

1876年刊『わたしのぼうし』の新装版です。 

ここからおいしいよかんがするよ

たな作 パイ・インターナショナル 2021年 

しかけ絵本です。
左ページに、おいしい予感で期待にあふれた男の子が、温かなタッチで描かれます。
そして右ページには、ふたをしたおべんとう箱、茶碗蒸しのふた、リボンをかけた四角い缶、なべのふた、ふたをした重箱・・・
そのページを上に開くと、ぎっしり詰まっためっちゃおいしそうな・・・!
父親と母親、祖父母もさりげなく登場しますが、それぞれに重要な役割を持っています。

やがて男の子は、ホットケーキミックスの箱を見つけます。
 ここからおいしいよかんが・・・
ところが、箱の中はからっぽです。男の子は考えます。そして、とってもいいことを思いつきます。

最後に、台所からいい匂いが漂って来て、おいしい予感が!
男の子とお母さんが走って行くと、お父さんがホットケーキを作っていました。

ごちそうさま!

あっ おちてくる ふってくる

あっおちてくるふってくる

ジーン・ジオン文 マーガレット・ブロイ・グレアム絵 まさきるりこ訳 あすなろ書房 2005年 

『どろんこハリー』のふたりが贈る詩のような絵本です。

落ちてくる物、降ってくる物といったら何を思い浮かべますか?
はなびらが、テーブルの上に音もなく落ちてきます。
あけ放たれたドアからあたたかないい匂いの風が吹いてくるのが感じられます。
公園の噴水の水が落ちてきます。水の音、鳥のさえずり、子どもたちの歓声が聞こえるようです。
りんごが木から落ちてきます。日差しの中でりんごを集める子どもたちの息遣いが聞こえるようです。
季節は移り、夏の海辺、木の葉の散る公園、雪遊び。雨の日。夕闇、夜。

落ちてくる物、降ってくるものに注目すると、日常の中に自然を見つけることができます。
最後は、朝、お父さんがジミーを抱きあげて、空中にぽーんと放り上げます。
ジミーは落ちる? 
いいえ、お父さんがしっかり受け止めます。

ドラマチックなストーリーはありませんが、楽しく、心がしずまっていく絵本です。