ばいばい

まついのりこ作 偕成社 1983年

ページをめくると、ひよこが「こんにちは」。めくると「ばいばい」。まためくるとうさぎが「こんにちは」。めくると「ばいばい」いろいろの動物が、一匹ずつ登場しては、「こんにちは」「ばいばい」を繰り返します。一歳未満の子どもから喜びます。

子どもが自分以外の人とコミュニケーションをとる、その最初の動作がバイバイであることが多いですね。「こんにちは」もそうです。その続きに「いないいないばあ」があり、「ちょちちょちあばば」があり、手遊びを伴うわらべ歌へと発展していきます。これらは、おはなしの世界への第一歩です。

一歳の子に『ばいばい』を読んでみてください。子どもの集中力に驚きますよ。

おやすみ おやすみ

シャーロット・ゾロトウ文 ウラジミール・ボブリ絵 ふしみみさを訳 2014年 岩波書店

落ち着いたグレーの背景に優しい色調の絵が続きます。ページをめくるごとに、ひとつずつ寝ているものが描かれます。

クマは雪をかぶった巣穴の中で、ハトはからだを寄せ合って、サカナは水草の中で、ガは窓にとまって、ウマは野原でたったまま、・・・

ストーリーに展開はないのですが、それぞれの動物たちに物語を感じるのは、作者ゾロトウの筆の力です。

「こどもたちは ふとんに すっぽり くるまって、ぐっすり すやすや ねむります。おやすみ おやすみ よいゆめを。」

騒いでいる子どもたちの心を静めてくれる本です。

妖怪―身近にいるあやしいもの―

小松和彦著 野村たかあき絵 2013年 グラフィック社

出ました出ました、妖怪たち!子どもの大好きな妖怪です! 

子泣き爺、雪女、木魂、河童、小豆洗い、塗り壁・・・日本に古くからいる妖怪がずらり、あらわれる場所と特徴が説明してあります。もちろん迫力ある絵姿も。

著者の小松和彦さんは、国際日本文化研究センターの所長を務めている文化人類学者で、妖怪の専門家です。だから、妖怪の説明も科学的(?)。

妖怪が出るのは、人があまり行かない、薄暗くってよく見通せないところ。そうした場所は半分は人間の世界だけれど、半分は妖怪の世界でもあるのです。夜道、山小屋、空き家、ふだん使わない座敷や納戸は、要注意です。人も動物も物も、年をとると化けることができるようになる、妖怪になるのですって。

ところで、鬼は、妖怪の中でも特別古い妖怪だそうです。妖怪のご先祖様。いまのような角をはやして虎皮のふんどしをするようになったのは、平安時代になってからだそうです。

それから、河童って、川に棲んでいると思うでしょ。たしかに、そうなんだけれど、秋に稲刈りが終わると、山へ帰るのだそうです。山に帰った河童は、山童(やまわろ)になるそうです。

などなど、豆知識も満載の楽しい「ほんとにいるんですか?絵図鑑」の1冊目。2冊目は「幽霊」です。こちらもおすすめです。ちょっと怖いけど(笑)

ぞうのボタン

うえののりこ作 冨山房 1975年

字のない絵本です。
字のない絵本はお話会では読みにくい?いえいえ、そんなことはありません。絵が十分に語っています。だから、子どもたちは自分の言葉でお話を語ります。読み手は、子どもたちの言葉にうなずきながら「あはは、あはは」と笑っていればいいのです。

ぞうのお腹にボタンが四つついています。ボタンをはずすと、中から馬が出てきました。なあんだ、馬がぞうの着ぐるみを着てたのか。ところが、その馬のお腹にもボタンが四つ。ボタンをはずすと、中からライオンが出てきました。なあんだ、ライオンが馬の着ぐるみ着てたのかあ。ところが・・・・どんどん小型の動物になっていって、とうとうねずみが出てきました。あら、ネズミのお腹にもボタンが四つ。さて、何が出てくると思いますか?

ピーターのてがみ

エズラ=ジャック=キーツ作 きじまはじめ訳 偕成社 1974年

ピーターは、エイミーに誕生日の招待状を書いています。会って口で言えばいいのだけど、これはとくべつの手紙なのです。手紙を出しに行くとちゅうで雨が降りだしました。とつぜん強い風が吹いて手紙をさらっていきました。ピーターは追いかけます。するとむこうからエイミーがやってきて、いっしょに手紙を追いかけました。たいへん、エイミー宛の手紙だと分かったら、びっくりしなくなる!
ころんだエイミーは泣きながら家に帰っていきました。ピーターは、エイミーはもう誕生会に来てくれないだろうと、とても沈んだ気持ちになります。

さあ、誕生日、エイミーはパーティーに来てくれるでしょうか。

かいじゅうたちのいるところ

モーリス・センダック作 神宮輝夫訳 冨山房 1975年

古典中の古典。センダックの代表作です。

マックスは、いたずらをして大暴れ。おかあさんに夕ごはん抜きで寝室にほうりこまれます。すると、寝室ににょきりにょきりと木が生えだして、森になり、マックスは船にのって航海に出ます。
「一週間過ぎ、二週間過ぎ、ひと月、ふた月、日がたって、一年と一日航海すると、かいじゅうたちのいるところ」
リズミカルな訳文に、声に出して読むととても心地がいいです。かいじゅうと過ごすマックスの様子が、文字なしで三ページにわたって描かれます。それが迫力満点なのです。

行きて帰りし物語です。

とらっく とらっく とらっく

渡辺茂男・山本忠敬 福音館書店 1966年

山本忠敬さんの乗り物絵本は、小さい男の子をひきつけて離しません。なかでも、渡辺・山本コンビの『しょうぼうじどうしゃじぷた』と『とらっくとらっくとらっく』は、ドラマ性が高く、夢中になってはいりこみます。
一台のトラックが、高速道路を走り、山の向こうの目的地に着くまでのほぼ一日間の行程が描かれます。途中で出会う働く車たち。道路標識。見るべきものが的確に描かれています。

擬人化されているわけではないのに、子どもは自分がトラックになったような気持ちで聞きます。白バイに追いかけられるあたりからはぐっと集中が高まり、夜になって山道をくねりながら登る場面は しーんとして、みんなのがんばれの声が聞こえてきそうなほどです。

あるとき高校生に読みました。子どもたちと同じような聞きかたをしていました。そして、ひとこと「白バイがかっこよかった」。

初めての乗り物絵本としては、山本忠敬さんの『ぶーぶーじどうしゃ』がおすすめ。再版された『とっきゅうでんしゃあつまれ!』は、今ではもう見られなくなった列車ばかりですが、電車の魅力が満ちあふれていて、子どもたちは大好きです。どちらも福音館書店刊。

まほうのコップ

藤田千枝原案・川島敏生写真・長谷川摂子文 福音館書店 2012年

ふしぎなたねシリーズの写真絵本です。

コップに水を入れます。いちごをコップの向こうがわに置きます。すると、あらふしぎ、いちごがぐんにゃりつぶれていきます。

きのこのしめじを置くと、あらふしぎ、どう見てもガマガエルです。

フォークをすうっと置くと、反対側からもフォークがすうっと現れます。

水の入ったコップがレンズの役割をして、光の屈折によって、コップの向こう側にあるものの形が変化して見えるのです。とても身近な科学実験ですね。

実験。では、コップを切子ガラスのものに変えるとどう見えるでしょうか。コップではなく、ビンならどうなるかな。さまざまな形のビンに入れてみよう。

子どもの好奇心をそそる一冊です。ページを繰るごとに、ため息のようなふしぎな笑いがおこります。

太陽へとぶ矢

ジェラルド・マクダーモット作・神宮輝夫訳 ほるぷ出版 1975年

副題に「インディアンにつたわるおはなし」とあります。

むすめが太陽の放ついのちの矢を受けて身ごもり、男の子を生みます。男の子は、「父なし子」といじめられ、父親をさがしに旅に出ます。トウモロコシづくりも、壺作りも教えてくれません。矢づくりの男は男の子を矢に変えて太陽にむかって放ちます。
ようやく父親に対面しますが、父親は、自分の息子である証拠を見せてもらおうといって、男の子にライオンの部屋、蛇の部屋、蜂の部屋、稲妻の部屋を通りぬけるよう命じます。

オレンジと黒を基調にしたカラフルな絵は、躍動感と力強さにあふれています。子どもたちは、しーんと聞き入ります。とくに男の子の心にしみいるようです。

パンめしあがれ

高原美和 絵/視覚デザイン研究所 2013年

なんとおいしそうなパンたちでしょう!

メロンパンが最初に出てくるのはうまいですね。子どもたちの一番のお気に入りですから。そばにはクリームソーダがいかにもどうぞというふうに置いてあります。ダブルハートのピンクのストローです。
あんパンは、ちゃんとつぶあんとこしあんが並んでいます。桜の散る丘の上。花びらは煎茶の上にもおちています。

あ~、ホットドッグ!
あかん、ぜんぶ書いてしまいそう(笑)

赤ちゃんと絵本を楽しむ会で読むと、1~2歳さんが、ページをめくるたびに近づいてきてとって食べる真似をします。学童保育に持っていったときも、手を伸ばしてきました。
一冊読むと、ああお腹いっぱい。え? もう一回読むの?

シリーズの「めしあがれ」「おべんとうめしあがれ」もどうぞ。