ならの大仏さま

加古里子作 福音館書店 1985年

奈良の東大寺は、いつも、遠足の小学生や、修学旅行生でにぎわっています。金堂(大仏殿)の柱の穴をくぐり抜けた経験をお持ちの人もおられるでしょう。

東大寺は、八世紀、聖武天皇の発願によって建立されました。そのころの世界の宗教の広がりからかきおこしたのが、この絵本です。仏教が大陸から朝鮮半島を通って日本に伝わります。伝わるにはそれなりの国内事情がありました。そのことを、世界地図、平城京の地図、当時の役人の給料表、皇室と藤原氏の系図、疫病流行の人々の様子の絵などなどで説明していきます。

大仏造営の過程は、基礎つくりから丁寧に描かれ、どれだけの費用と材料がどのように集められたのか、どうやって技術者や専門職人や作業者を集めたのかまで説明しています。

おそらく、高校の日本史の教科書より丁寧で、興味をそそると思われます。

さらにさらに、その後の二度の焼失と再興、現代にいたるまでの歴史が語られ、いま、わたしたちにとって「だいぶつさん」ってなんだろうという問題提起で終わっているのです。

もちろんすべての文章を読み聞かせることはできませんが、ぜひ子どもたちに紹介したい本です。読んだ大人もちょっとかしこくなるかも、です。
子どもの絵本といえども、詳細な調査に基づく本作り。かこさとしの面目躍如といったところでしょうか。

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 * が付いている欄は必須項目です