石井桃子文 横内襄絵 福音館書店1963年
ちょっとした猫ブームです。猫の絵本といえばこれ。50年以上も前に作られた本ですが、子どもたちをひきつけてやみません。古典中の古典です。
最初のページは、見開きで、広い部屋の畳の上に小さな猫がしっぽを振って座っています。何気なく外を見ている様子。いまにも外へ飛び出しそうな表情です。
「ちいさなねこ、おおきなへやに ちいさなねこ。」
石井桃子の文章は的確です。美しい文章というのは、正確な文章のことだと思わせてくれます。
あんのじょう、猫は縁側からおりて走りだしました。子どもにつかまったり、自動車に引かれそうになったり、大きな犬に追いかけられたり。犬に追いつめられて木の上に登りますが、下りられません。
でも、だいじょうぶ。お母さん猫が、子ねこの声を聞いて探しに来ます。お母さん猫の表情の頼もしいこと。
最後のページでは、子ねこがおかあさんのおっぱいをのんでいます。
幼い子には、冒険と帰還の物語、つまり「行きて帰りし物語」がぴったりなのです