katarinomori のすべての投稿

おたんじょうびおめでとう!

パット・ハッチンス作/渡辺茂男訳 偕成社 1980年

きょうはサム君のお誕生日です。歳がひとつ大きくなりました。それなのに小さなサム君は、自分で明かりをつけようにも壁スイッチに手が届きません。タンスの服にもお風呂の蛇口にも手が届かないので、自分で服を着られないし、自分で歯を磨くこともできない。せっかく両親からすてきなボートをプレゼントしてもらったのに、流しに手が届かないのでボートを浮かべることができません。郵便屋さんがおじいちゃんからのプレゼントを届けてくれたのですが、取っ手に手が届かず、自分でドアを開けることもできないのです。

幼い子の「自分で!」という自立心をどうやって育めばいいでしょうか。大人は「まだ無理よ」といって、その芽を積んでしまいがちです。ところが、ハッチンスは、こうすればいいんですよと、教えてくれます。郵便屋さんが持ってきたおじいちゃんからのプレゼントは何だったと思いますか。おじいちゃん、ナイスジョブ!

同じ作者の『ティッチ』『ぶかぶかティッチ』も幼い子の心理をうまくとらえています。

ばったくん

五味太郎 福音館書店 1989年

かわいくてユーモラスでリズミカルなおはなしです。ばったくんがお散歩に出て、家の中にとびこんでしまいます。テーブルのお皿の上を滑ったり、テレビにこつんとぶつかったり、ピアノの鍵盤の上を飛んでいったり、ゴミ箱の中に入ったり、工作のりの上に飛び乗ってしまったり。小さなばったくんでも、それなりに冒険があるのです。

「ばったくん おさんぽ まだまだ つづきます」といいつつ、次のページをめくると・・・あらまあ!

この季節、小さな子どもから小学生まで楽しめる本です。

ごきげんななめのてんとうむし

エリック=カール作/もりひさし訳 偕成社 1980年

夜、ホタルがお月さまの明かりで踊っていました。朝五時、お日さまがのぼってきました。左から機嫌のよいテントウムシが、右からご機嫌ななめのテントウムシが飛んできました。ご機嫌ななめのテントウムシは、けんかをふっかけます。でもあまり自信がないので、「おまえじゃ小さすぎるな」と意地を張って、もっと大きな敵を探しに飛んでいきます。すると、蜂、クワガタ、カマキリ、・・・と、どんどん大きない相手に出会います。

各ページの上には、テントウムシが他の生きものと出会った時間を示す時計が書かれています。文章の文字は、相手が大きくなるにしたがってどんどん大きくなります。何だか迫力があります。

とうとう最後に、クジラに出会います。テントウムシは45分かかってくじらのしっぽまで行き着きます。すると、しっぽが・・・!

エリック・カールといえば『はらぺこあおむし』が有名ですね。『ごきげんななめのてんとうむし』も同じようにカラフルな、仕掛けのある楽しい絵本です。

バスていよいしょ

重松彌佐作/西村繁男絵 童心社 2017年

小学生のしんごくんは、お隣の大邸宅の前にあるバス停を自分の家の前に持っていこうと引っ張ります。コンクリートの重しがあるので重くてなかなか動きません。そこへ「えっさ、えっさ」と駕籠屋さんがやって来ます。事情を聞いて駕籠屋さんたちは笑っていってしまいました。でも、なぜ駕籠屋さん?
その後からきたのは浪人者。お姫様。なぜか江戸時代とこんがらがっています。しまいに大名行列が来て、おとのさまは、なぜしんんごくんがバス停を移動させようとしているのかを聞くと、「よかろう」と、家来たちに命じて、バス停を動かしてくれました。

しんごくんの理由は何だったでしょう。これは夏の風物詩のはなしです。

うたってくださいことりさん

五味太郎 偕成社 2002年

五味太郎の作品は、あんがい幼児に難しかったりするのですが、これはいけます。

小鳥が歌うと、花が咲きます。みんなワクワク楽しくなるのです。小鳥が歌うと、ぐったりしている猫も元気になります。しゃきっ。ブランコでけんかしているブタたちもにこにこ仲良くなります。などなど。

こんな小鳥が、あなたのところにも来ましたよ。

心が温かくなって、疲れたおとなはちょっとうれし涙がにじむかもしれません。

だいすき

田島征三 偕成社 1997年

おそろいの黄色い帽子に黄色いかばんの男の子と女の子。幼稚園児でしょうね。肩をくんでにこにこ笑っている表紙から始まります。見開き一面に、筆で、いろんな色いろんな大きさの「だいすき」が書かれています。

頁を繰っていくと、文章は、どのページも「だいすき」だけ。ミニトマトがふたつ、絡まっています。魚が二匹、ぴたっとお腹を合わせています。白鳥が長い首を絡ませています。みんな、みんな、「だいすき」をからだであらわしています。

タコの「だいすき」はたいへんです(笑)

しろさんとちびねこ

エリシャ・クーパー作 椎名かおる訳 あすなろ書房 2017年

白地に黒の素朴な線で描かれています。
 
ひとりで暮らしている白猫のところに、ちびの黒猫がやって来ます。白猫は黒猫に、かしこい猫のすることを教えます。食べる、飲む、トイレなどなど。幸せな時がたち、黒猫は成長して白猫と同じ大きさになります。さらに時がたち、白猫がいなくなります。
悲しくてどうしようもない黒猫のところに、ちびの白猫がやって来ます、黒猫は、かつて教わったのと同じように、ちびねこに、賢い猫のすることを教えます。
命のつながり。

二匹の猫が抱き合って眠っている場面(3カ所)だけ、地の色が温かなクリーム色。白猫がいなくなった場面(1箇所)は灰色。

地味だし、難しいテーマのはずなのに、子どもたちは、もういちど読んでとアンコールしました。図書館のお話会、3歳から8歳の子どもたちでした。

いちにち

ハイディ・ゴーネル えくにかおり訳 PRCO出版局 1992年

女の子のなんでもない一日が描かれます。

早起きして、服を着て、朝ごはんをたっぷり食べて・・・。色画用紙を切り抜いてはったような絵で、くっきりとした絵です。よくある日常ですが、バスで学校へ行ったり、ヴァイオリンの授業があったり、お昼休みは給食ではなくてベンチでパンを食べたりと、文化の違いが感じられます。家に帰ってからは友だちとバスケットやかくれんぼで遊び、夜には犬のえさをやり、夜ご飯の後はテレビを見たり本を読んだり。宿題をして日記を書いて寝る。

きちんとした日常は、平和だからすごすことができる。

ゲームの時間がないのがいいなあ。

ぼく・わたし

高畠那生 絵本館 2003年

見開きの右ページに「ぼく、べんきょうはとくいじゃないけれど」と、男の子がノートの上にひじをつき、スツールに片足上げてつまらなそうな顔で、遠くを見ています。ノートの横にはおそらく算数と国語と思われる教科書が開かれています。同じ机の上に、鉛筆が二本と消しゴムが直立しています。

左ページには、「かみひこうきはとくい。」。同じ部屋の中、同じ机の前で、男の子は笑顔で紙飛行機を飛ばしています。右ページでは気付かなかったくず入れが、左ページでは大きく描かれ、中に紙飛行機がふたつ、そばには四つ落ちています。飛んでいるのも置いてあるのも手に持っているのも、紙飛行機はあちこちの方向を向いています。鉛筆と消しゴムは倒れ、算数の教科書は閉じられています。

このようなページ構成で、「ぼくむしにさされるのはだいきらい。」=「でも、ちゅうしゃはがまんできる。」とか、「ぼく、ちょっときがよわい。」=「でも、こたえはしってるんだ」とか、人には不得手なものと得意なものがあって当然だと主張しています。

最後のページは、登場した子どもたちがみんないっしょにジェットコースターに乗っている場面です。

子どもの健やかな心の成長に欠かせないのは、自己肯定感。親子で読んでほしいなと思う本です。

しろいかみ

谷内つねお作/西山悦子撮影/福音館書店 2018年『こどものとも0,1,2』の2018年2月号です。
 
背景は、はっきりした一色。その上に白い紙が置かれています。紙は、「くる」と丸まり、「くるくる」と丸まります。「ぎこ」と折れ曲がり、「ぎこぎこ」と折れ曲がります。影があるので、ほんとうにつかめそうです。一枚の紙が、単純だけれど自由自在に変形します。
2歳から4歳に読みましたが、ごく当たり前のことに、こんなに子どもは驚きを感じ喜ぶのかと、目を見張ります。