「2 幼児から」カテゴリーアーカイブ

サンカクさん

マック・バーネット文/ジョン・クラッセン絵/長谷川義史訳/クレヨンハウス 2017年

表紙のサンカクさんの目を見ただけで、はっと思いだす人は多いでしょう。『どこいったん』のジョン・クラッセンの絵です。

サンカクさんの家は三角で、建物?も、山?も、何もかも三角です。サンカクさんは、シカクに悪さをしにでかけます。すると、風景がどんどん変化します。「あーしんど」といいながらもどんどん行くと、山?も、建物?も四角い場所に到着します。シカクの家の入り口でサンカクさんは悪さをします。どんな悪さかって? それは読んでのお楽しみ。

怒ったシカクは、仕返しをしようと、サンカクさんといっしょにサンカクさんの家に向かいます。さて、どんな仕返しをしたのでしょう?

読後は、サンカクさんとシカクさん、ほんまはえらい仲ええねんなと笑うてしまいますねん。

こねてのばして

ヨシタケシンスケ作/ブロンズ新社 2017年

2歳半の孫が、「りんごと同じ!」とさけんだそうな。そう、『りんごかもしれない』の作者です。ばあちゃんは『もうぬげない』と『あるかしら書店』にバカ受けしました(笑)

やわらかであたたかなのびやかな人物(?)たち。

朝がきて、起きて、着替えて、用意して。これはどうみてもパン作りです。う~ん、うどんかもしれない。彼はひたすら、こねてのばしてまたこねて、こねてのばして・・・・。
つついて、つまんで、おしつけて・・・すわらせて、おどって、・・・・

いったい、なにができるのでしょう? ああ、もうこれ以上は書きません。読んでください。孫は最後で大笑いしたそうです。わたしは、「あやまって」のところでいっちばん笑いました。

しおちゃんとこしょうちゃん

ルース・エインズワース作 こうもとさちこ訳・絵 福音館書店 1993年

ストーリーテリングで語られることもよくあるおはなしです。かわいいかわいい子ねこたちと、やわらかで愛情あふれるお母さんねこのタビ―夫人が、あたたかなタッチで描かれています。
 
しおちゃんとこしょうちゃんは、どちらが高くまで登れるか競争しようと、庭のもみの木に登っていきます。「うちよりも高い木」が、素話では想像しきれないほどの高さで描かれています。

下りられなくなったしおちゃんとこしょうちゃんは、カッコウに助けてもらおうとしますが、カッコウは飛んでいってしまいます。つぎに飛行機に呼びかけますが、やはり飛んでいってしまいます。夜の風に頼んでもだめ。子どもの好む三回のくりかえしのなかで、不安と寂しさがつのっていきます。

暗い木の下で動くふたつの緑色の光。不安が頂点に達したとき、やさしいおかあさんの姿と声が現れます。緑色の光はお母さんの目の色でした。ぶじ自分たちのかごの中にもどり、のどをごろごろ鳴らして、三匹はねむりました。行きて帰りし物語です。

フワフワ

おおなり修司文 高畠那生絵 絵本館 2017年

なぜかダチョウが群れをなして走っています。するとその羽がとんでフワフワ。カバが大きな鼻で羽を吸い込んで、ハックション。びっくりしたダチョウが、ダチョーと走っていくと、ワニやライオンが池に浸かっています。ダチョウがダダダダダー!と走りぬけたひょうしに、ライオンのたてがみがふわっと飛んでしまいます。なんと、かつらだったのだ?かつらがまたフワフワ飛んでいって、池に浸かっているかピパラ(?)の頭に乗っかります。

何とも言えないナンセンス絵本です。ダチョウの表情に大笑いすること請け合いです。

ちいさなねこ

石井桃子文 横内襄絵 福音館書店1963年

ちょっとした猫ブームです。猫の絵本といえばこれ。50年以上も前に作られた本ですが、子どもたちをひきつけてやみません。古典中の古典です。
 
最初のページは、見開きで、広い部屋の畳の上に小さな猫がしっぽを振って座っています。何気なく外を見ている様子。いまにも外へ飛び出しそうな表情です。
「ちいさなねこ、おおきなへやに ちいさなねこ。」
 
石井桃子の文章は的確です。美しい文章というのは、正確な文章のことだと思わせてくれます。
 
あんのじょう、猫は縁側からおりて走りだしました。子どもにつかまったり、自動車に引かれそうになったり、大きな犬に追いかけられたり。犬に追いつめられて木の上に登りますが、下りられません。
でも、だいじょうぶ。お母さん猫が、子ねこの声を聞いて探しに来ます。お母さん猫の表情の頼もしいこと。
最後のページでは、子ねこがおかあさんのおっぱいをのんでいます。

幼い子には、冒険と帰還の物語、つまり「行きて帰りし物語」がぴったりなのです

100まんびきのねこ

ワンダ・ガアグ作 石井桃子訳 福音館書店 1961年

これも猫の本です。白黒画法の絵ですが、デフォルメされた雲や木や花は、自由に色を想像することができ、むしろカラフルにさえ感じさせます。
 
おじいさんとおばあさんは、ふたりきりで暮らしていて、とても寂しいのです。それで、猫が一匹いればいいなあと話しあいます。おじいさんは、丘を越え、谷を越えて、猫をさがしにでかけました。
 
とうとう、どこもここも猫でいっぱいの丘にやってきました。白い猫、灰色の猫、白黒の猫、茶色の猫・・・どれもこれもかわいくて、おじいさんは選びきれません。とうとうぜんぶ連れて帰ることにしましたが・・・。
   
ひゃっぴきのねこ
せんびきのねこ
ひゃくまんびき、一おく 一ちょうひきの ねこ
 
こり返しのリズムがここちよく、行列は進みます。ところが、家に帰ると、おばあさんが、「こんなにたくさんのねこに、ごはんはやれません」といいます。そこで、一兆匹の猫たちはけんかを始めます。
最後に残ったのは、どんな猫だったでしょうか。

しゅっぱつしんこう!

山本忠敬・作 福音館書店 1984年

電車絵本のピカイチです。

みなさんは、特急列車「はつかり」に乗ったことはありますか。東京と東北・北海道をつなぎ、1958年から、2002年に東北新幹線が八戸まで延伸したときまで走っていました。だから、今の子どもたちはもう見たことがない列車です。

『しゅっぱつしんこう!』は、みよちゃんがおかあさんといっしょに、はつかりに乗って出発、急行列車に乗り換え、普通電車に乗り換えて、おじいさんの家の最寄り駅まで行く、その行程を描いています。
 
古い知らない列車が書かれているのに、子どもたちに大人気で増刷を続けている、その魅力は、手に取ればすぐに分かります。列車の正確な描写は生命感にあふれています。そして、流れていく風景の、あくまでも背景でありながら、その美しさ。おとなにはノスタルジーを呼び起こしますが、子どもにとっては風土の生命を吹きこんでくれるのではないかと感じます。走る列車への作者の愛を感じます。
 
やまもとただよしさんは、乗り物絵本の作家として有名です。『しょうぼうじどうしゃじぷた』『とらっく とらっく とらっく』『のろまなろーらー』などなど。子どもたちは、主人公といっしょに走ります。

セミがうまれるよ

あかぎかんこ・作 きたじまひでお・写真 埼玉福祉会 2017年

セミの幼虫が成虫になるまでの成長の様子が、大きな写真とわかりやすい言葉で描かれています。科学的な正確さから考えると、小学生向きかとも思いますが、わかりやすさと、幼い子の探求心にきちんと応えていることから、幼児からとしました。

みなさんは、セミの雄と雌の見分け方を知っていますか?なんと、飛んでいった後の抜け殻から判断できるのですって。

昆虫は、子どもにとっての身近な生命です。おとなは毛嫌いせずに、子どもに、他の生命との出会いを用意してやりたいものです。

にんじゃ あまがえる

 松井孝爾監修 ひさかたチャイルド 2006年

子どもたちにとって、なじみの深いアマガエルの写真絵本です。
 
「せっしゃはにんじゃあまがえるでござる。きょうはわれわれあまがえるのすごいじゅつをたくさんみせるでござる」と、忍者言葉でアマガエルのふしぎを教えてくれます。その語り口調だけでも子どもは大よろこびです。

大人でも、カエルは保護色で身を守ることは知っていても、証拠写真を見せられると、う~んとうなってしまうし、透明のまぶたが下から閉まるのには、「へえ~」。

楽しく得した気分になる科学絵本です。

おへそのあな

長谷川義史 BL出版 2006年

まだ生まれていない赤ちゃんが、おかあさんのおへそのあなから、外をのぞいています。
お兄ちゃんやお姉ちゃん、おとうさん、おかあさん、おじいちゃん、おばあちゃん。みんな赤ちゃんが生まれてくるのが楽しみで、それぞれ準備しているのが、見えます、聞こえます、においます。

子どもたちに読むと、「うへ~」と、てれくさそうにします。でも、そのほころびきった顔は、嬉しくてしかたがないというようです。

どの子もこんなふうに迎えられるのだと気づいてくれるでしょう。