「2 幼児から」カテゴリーアーカイブ

おやすみ おやすみ

シャーロット・ゾロトウ文 ウラジミール・ボブリ絵 ふしみみさを訳 2014年 岩波書店

落ち着いたグレーの背景に優しい色調の絵が続きます。ページをめくるごとに、ひとつずつ寝ているものが描かれます。

クマは雪をかぶった巣穴の中で、ハトはからだを寄せ合って、サカナは水草の中で、ガは窓にとまって、ウマは野原でたったまま、・・・

ストーリーに展開はないのですが、それぞれの動物たちに物語を感じるのは、作者ゾロトウの筆の力です。

「こどもたちは ふとんに すっぽり くるまって、ぐっすり すやすや ねむります。おやすみ おやすみ よいゆめを。」

騒いでいる子どもたちの心を静めてくれる本です。

ぞうのボタン

うえののりこ作 冨山房 1975年

字のない絵本です。
字のない絵本はお話会では読みにくい?いえいえ、そんなことはありません。絵が十分に語っています。だから、子どもたちは自分の言葉でお話を語ります。読み手は、子どもたちの言葉にうなずきながら「あはは、あはは」と笑っていればいいのです。

ぞうのお腹にボタンが四つついています。ボタンをはずすと、中から馬が出てきました。なあんだ、馬がぞうの着ぐるみを着てたのか。ところが、その馬のお腹にもボタンが四つ。ボタンをはずすと、中からライオンが出てきました。なあんだ、ライオンが馬の着ぐるみ着てたのかあ。ところが・・・・どんどん小型の動物になっていって、とうとうねずみが出てきました。あら、ネズミのお腹にもボタンが四つ。さて、何が出てくると思いますか?

かいじゅうたちのいるところ

モーリス・センダック作 神宮輝夫訳 冨山房 1975年

古典中の古典。センダックの代表作です。

マックスは、いたずらをして大暴れ。おかあさんに夕ごはん抜きで寝室にほうりこまれます。すると、寝室ににょきりにょきりと木が生えだして、森になり、マックスは船にのって航海に出ます。
「一週間過ぎ、二週間過ぎ、ひと月、ふた月、日がたって、一年と一日航海すると、かいじゅうたちのいるところ」
リズミカルな訳文に、声に出して読むととても心地がいいです。かいじゅうと過ごすマックスの様子が、文字なしで三ページにわたって描かれます。それが迫力満点なのです。

行きて帰りし物語です。

とらっく とらっく とらっく

渡辺茂男・山本忠敬 福音館書店 1966年

山本忠敬さんの乗り物絵本は、小さい男の子をひきつけて離しません。なかでも、渡辺・山本コンビの『しょうぼうじどうしゃじぷた』と『とらっくとらっくとらっく』は、ドラマ性が高く、夢中になってはいりこみます。
一台のトラックが、高速道路を走り、山の向こうの目的地に着くまでのほぼ一日間の行程が描かれます。途中で出会う働く車たち。道路標識。見るべきものが的確に描かれています。

擬人化されているわけではないのに、子どもは自分がトラックになったような気持ちで聞きます。白バイに追いかけられるあたりからはぐっと集中が高まり、夜になって山道をくねりながら登る場面は しーんとして、みんなのがんばれの声が聞こえてきそうなほどです。

あるとき高校生に読みました。子どもたちと同じような聞きかたをしていました。そして、ひとこと「白バイがかっこよかった」。

初めての乗り物絵本としては、山本忠敬さんの『ぶーぶーじどうしゃ』がおすすめ。再版された『とっきゅうでんしゃあつまれ!』は、今ではもう見られなくなった列車ばかりですが、電車の魅力が満ちあふれていて、子どもたちは大好きです。どちらも福音館書店刊。

パンめしあがれ

高原美和 絵/視覚デザイン研究所 2013年

なんとおいしそうなパンたちでしょう!

メロンパンが最初に出てくるのはうまいですね。子どもたちの一番のお気に入りですから。そばにはクリームソーダがいかにもどうぞというふうに置いてあります。ダブルハートのピンクのストローです。
あんパンは、ちゃんとつぶあんとこしあんが並んでいます。桜の散る丘の上。花びらは煎茶の上にもおちています。

あ~、ホットドッグ!
あかん、ぜんぶ書いてしまいそう(笑)

赤ちゃんと絵本を楽しむ会で読むと、1~2歳さんが、ページをめくるたびに近づいてきてとって食べる真似をします。学童保育に持っていったときも、手を伸ばしてきました。
一冊読むと、ああお腹いっぱい。え? もう一回読むの?

シリーズの「めしあがれ」「おべんとうめしあがれ」もどうぞ。

がたごと ばん たん

パット・ハッチンス作/いつじあけみ訳/福音館書店 2007年

ぼくは、おじいちゃんの手押し車にのって農場を進んでいきます。小さな赤いめんどりがついてきます。

明るい晴れた農場に、「がたごとばんたん」と繰り返しのリズムが明るく響きます。ぼくは、ジャガイモを掘り、ニンジンを掘り、玉ねぎを掘り、……高い蔓になっている豆も、地面のいちごもとります。ついてくるめんどりに、ぼくは、とっても得意そうに「こんなこともできるんだよ」といいます。

でも、あれ? めんどりは、鶏小屋に入ってしまいました。ついていくと、…!

この本の中には30種以上の植物が描かれています。それを見るだけでも楽しい絵本です。

どんぐりころちゃん

正高もとこ作絵/鈴木出版刊 2015年

どんぐりころちゃんが木からとびおりて散歩に行きます。歌いながら歩いていきます。 ♪ どんぐりころちゃん……

ある日のおはなし会でこの本を読みました。以下、実況中継。

「 わあ、どんぐりころちゃんや~ 」
子どもたちは、おはなし会の始まりで歌った歌が出てくるので、おおよろこび。いろんな形のどんぐりに次々と出会って、いっしょに歩いていきます。
「 ♪ どんぐりころちゃん あたまはとんがって…… 」
ページを繰るたびに子どもたちもいっしょに歌います。ほんと、たのしい~
そこへ、リスがやって来ます。
「 ひゃあっ 」
子どもたちはすっかりどんぐりになりきっています。
リスが 「 おいしそうなどんぐりたち。わたしについておいで。いいところにつれて
いってあげるから 」 というと、子どもたち 「 あかんあかん。いったらあかん 」
どんぐりたちは木の葉の下に隠れます。
リスはどんぐりたちを見つけられなかったけど、葉っぱのあいだから、ちらっちらっと見えてるんですね。
子どもたち 「 みえてる~。あそこ。ここも~ 」
ひとしきりミッケをやってから ( 笑 )、さいごのぺージへ。
子どもたち 「 あ~、芽が出てる~ 」

表の見返しにはわらべ歌が楽譜つきで載っているし、裏表紙には、登場したドングリたちの名前が紹介されています。
子ども心満載、遊び心いっぱいの、地味だけれどぜいたくな絵本です。