「3 低学年から」カテゴリーアーカイブ

サイモンは、ねこである。

ガリア・バーンスタイン作/なかがわちひろ訳/あすなろ書房 2017年

表紙にはいかにも気の強そうな猫がでんとすわっています。この目ぢからのあるサイモンが、「こんにちは。ぼく、サイモンです。ぼくたち、にてますね」と声をかけてきます。子どもたちは、「え~っ、似てない」と言って笑いますが、ページをめくると、ライオン、チータ、ピューマ、クロヒョウ、トラが、やっぱり驚いて大笑いします。そして、サイモンをばかにします。サイモンはがっかりです。
でも、実は、似ているのです。ライオンたちは考えます。「みんな耳はいいよな」「りっぱなひげと、長いしっぽ」「鋭い歯、とがったつめ」「暗闇でもよく見える大きな目」。
 
サイモンが「それぜんぶ、ぼくも持ってます。ちっちゃいですけど!」というと、みんなは、自分たちがネコの仲間だったことに気がつきます。そして、みんなでネコらしくじゃれあって、一日じゅうなかよく遊びました。
 
こんなに楽しい動物絵本。みなさんもどうぞ。

クリスマスのちいさなおくりもの

アリスン・アトリー作/上條由美子訳/山内ふじ江絵 福音館書店 2006年

アリスン・アトリーは、1884年にイギリスのダービシャーの農場に生まれます。アトリーの作品は、野原や森が舞台で、うさぎや野ネズミなどの小さな動物たちが物語を作っています。この物語は1970年に書かれたものです。

クリスマス・イブなのに、お母さんが病気で入院しているので、お父さんとふたりの子どもは、クリスマスの飾りつけもせずに寝てしまいました。夜中の11時になると、ネズミたちがネコのおかみさんに、どうして飾りがないのかと文句を言います。そこで、ネコとたくさんのネズミたちと、一匹のクモが、飾りつけをして、ミンスパイを焼き、ケーキを焼き、みんなのくつ下をつるします。
 
そこへ、もちろん! サンタクロースがやって来ます。サンタクロースは、ネコやネズミやクモにもプレゼントをくれました。ネコには真っ赤な房飾りのついた首飾り、クモにはルビーの冠、ネズミたちにはダイヤモンド(もしかしたらまほうのつゆ)。
 
おはなしにぴったりの、やさしいかわいい絵です。

カイとカイサのぼうけん

エルサ・ベスコフ作/まつむらゆうこ訳 福音館書店 2016年

原作は1923年に出版されています。ベスコフといえば、『ペレのあたらしいふく』『ブルーベリーもりでのプッテのぼうけん』がおなじみですね。スウェーデンの絵本作家です。

カイとカイサは兄妹で、森の奥の家に両親と住んでいます。ある日、倒れた枯れ木にまたがって遊んでいるとき、ふと、枯れ木に壊れた傘を打ち付けて、「枯れ木ドラゴン」にして遊び始めました。すると、オークの木にすんでいるトムテが魔法をかけて、生きているドラゴンにしてしまったのです。ふたりはドラゴンに乗って、おはなしの国へ冒険に出かけます。
ふたりはおひめさまと騎士を救いだします。

行きて帰りし物語です。

きのうえのおうちへようこそ!

ドロシア・ウォーレン・フォックス作/おびかゆうこ訳 偕成社 2017年 

10月に出たばかりの本です。原作は1966年にアメリカ合衆国で出版されました。

年配女性のツイグリーさんは、人とつき合うのが苦手で、木の上の家で犬のニャンコとふたりで暮らしています。ときどき、くまたちもやって来て、好きなことだけして楽しく生きています。買い物も、ニャンコがやってくれます。町の人たちは、ツイグリーさんを変わり者だといって、困った人だと思っています。とうとう市町の奥さんがツイグリーさんを追いはらってしまおうといいだしました。

ところがある日、大洪水が起こります。町の人たちや動物が、どんどん流されていくのですが、それを見たツイグリーさんは、なんとかして助けようと大活躍します。

暖かく懐かしい絵です。

くまさんどこ?

ジョナサン・ベントレー 林木林訳 講談社 2016年

大事なくまがいなくなります。男の子は家じゅう探し、庭も探しますが、どうしても見つかりません。絵本を見ている者には、くまが見えています。だから、ドアの向こうからのぞいているくまやテーブルの下にいるくまのおしりを指さして、「ほら、あそこにいるのに!」と笑います。ここまでは、幼児向きの絵本だなと思うのですが、ところがどっこい。男の子が見つけたのは・・・。みんな、すっかりだまされて大笑いします。

男の子が正面を向いて「ねえ、くまさん みなかった?」と訊いたり、聞き手をまきこんで楽しむ絵本です。

バナナのはなし

伊沢尚子文 及川賢治絵 福音館書店 2013年

2009年に「かがくのとも」として発行されました。

バナナを冷蔵庫で冷やすと黒くなります。なぜだか知っていますか?傷をつけると黒くなるのと同じで、バナナに含まれるタンニンのせいなのです。皮が黒くなっても、腐っているのではないので食べられます。この性質を利用して、バナナの皮につまようじで字や絵をかいて遊ぶことができます。

バナナは産地から出荷されるときはまだ緑色で渋くて固くておいしくない。では、どんなふうになったときが食べごろか知っていますか?

バナナはどうやって増えるか知っていますか?バナナの種はどこにある?などなど、子どもたちの好きなバナナの秘密がいっぱい詰まった本です。

うし

内田麟太郎詩 高畠純絵 アリス館 2017年

こども文学の実験『ざわざわ』第2号所収の詩「うし」を絵本にしたものです。

ただ牛がつぎつぎつぎと並んでいるだけなのですが。なんともきまじめで、しかも飄々とした牛の表情がユーモラスで、笑えてきます。詩のことばと、スタンプのように並ぶ絵が絶妙にコラボしています。ナンセンス詩を絵本にするのって独特の感性がいるんでしょうね。

子どもたちは、確実につぎを予想して、大笑いします。最後のページ、私は予想が外れたけれど、子どもたちは、ぴたりと当てました。さすが!

川はどこからながれてくるの

トマス=ロッカー・作 みのうらまりこ・訳 偕成社 1992年

まるでターナーの絵のような美しい風景の中を、おじいさんとふたりの孫が、川の源流を求めて旅立ちます。川を渡り、水浴びをし、キャンプをしながら、自然の中を歩いていきます。高原の小さな池が源流でした。少しずつ湧き出て流れ出した水が、次第に大きな川になっていたのです。
 
三人は、流れとともに帰りの旅につきます。夕暮れのあわい光の中に、両親の待つ家の窓の灯りが見えました。

マロンちゃん カレーつくってみよう!

西村敏雄作 文溪堂 2017年

マロンちゃんは犬です。飼い主(家族?)はオジーさんという名の紳士。マロンちゃんがオジーさんにサポートしてもらってカレーを作るというだけの話なんですが、子ども心をくすぐる楽しさです。

おなかがすいたのでお料理を作ろう、何作ろう、ハンバーグ、オムライス、からあげ。ね、子どもの好きな物ばかり。結局、そうだ、カレーにしよう。絵を見ている子どもたちも大きくうなずきます。

材料は何かな?定番なので、絵を見ながら大きな声でいいます。それからが楽しい。買い物に行くのです。肉屋、八百屋。パン屋、・・・。買ってきたのは、もちろんさっき大声でいったカレーの材料。と、牛乳、とろけるチーズ、スパゲッティ、うどん、マカロニ食パン菓子パン。気持ち、わかりますよねえ。

さて、カレーを作ります。材料を切るところから丁寧に描かれるので、リアリティがあります。だから、うれしい。お鍋にふたをして、歌って踊りながら待ちます。

 ババ~ン! カレーのできあがり!
 
ご近所さんが集まってきますが、もうカレーライスはありません。どうなったと思いますか?さっきの無駄遣いは無駄ではなかったのです。カレーサンド、カレーグラタン、カレースパゲティ、カレーうどん、・・・ああおいしかった。

おっと、学童保育で読んだら、カレーうどんを知らない子がいましたよ。

なにをたべたかわかる?

長新太作 絵本館 2003年

気持ちのいい朝の海で、ねこが釣りをしています。すると、ものすごく大きな魚が釣れました。ねずみが後ろでびっくりして見ていると、なんとその魚が・・・!

子どもの好きな入れ子細工のストーリーです。そのナンセンスというか、ブラックユーモアがなんともいえず、絶妙!
 
いっしょに見ている大人もおおよろこびしてくれます。