「3 低学年から」カテゴリーアーカイブ

おとなっていいなあ、こどもっていいなあ―はだかんぼうがふたり

奥田継夫文/関屋敏隆絵/サンリード 1979年

以前、図書館のおはなし会で読んだ数日後、司書さんから質問がありました。

「年配の男性が、このあいだのおはなし会で読んでいた性教育の本の名前を教えてほしいといってこられました」と。しばらく考えて、ああこれだなと思い当たりました。

男の子が両親と銭湯に行くというだけの話です。商店街をぬけて、いつもの銭湯です。顔見知りの番台のおばさん、近所のお姉ちゃん、友達。母親が「きょうはどっちにはいるのん?」ときくと、ぼくは、「きまってるやん。男、男」と答えます。

お風呂の湯気とともに心までとけそうなリラックス感にあふれた絵本です。関西弁で書かれています。

銭湯から出ると、外では雪が降っていました。
「あしたつもるかなあ」

エイモスさんがかぜをひくと

フィリップ・C・ステッド作 エリン・E・ステッド絵 青山南訳 光村教育出版 2010年

年配の飼育員のエイモスさんは、毎日バスに乗って動物園に出勤します。そして、ゾウとチェスをしたり、カメとかけっこしたり、サイにハンカチを貸してやったりと、動物の友だちとおだやかな日々をすごしています。

ある日、エイモスさんは風邪をひいて、園を休んでしまいました。動物たちは手持無沙汰でしようがありません。エイモスさんのことも心配です。とうとうみんなはバスに乗ってエイモスさんの家へお見舞いにでかけます。

写実的な絵なので、動物たちがバス停に並んでいるあたりから、子どもたち、「え~っ、バスにのれるの?」と声をあげます。次のページで動物たちが乗っているバスを見て、思わず笑ってしまいます。

動物たちは、それぞれのやり方で、エイモスさんがしてほしいことをしてあげます。いつもエイモスさんが動物たちにしてくれているのと同じように。

かぜは どこへいくの

シャーロット・ゾロトウ作 ハワード・ノッツ絵 松岡享子訳 偕成社 1981年

楽しく美しい一日の終わり、男の子は寝室の窓からながめながら、お母さんに尋ねます。
「どうして、ひるはおしまいになってしまうの?」
さて、お母さんは何と答えるでしょう。あなたならどう答えますか?

おかあさんは、「よるがはじめられるようによ」と答えて、白く細い月を指さし、「あれが、よるのはじまりよ」といいます。そして、昼はおしまいにならないで、別のところで始まる。どんなものでもおしまいになることはないのだと説明します。

風は止んだらどこへ行くのか、道はどこまで続くのか、山はどこでおしまいになるのか、砕けた波はどこへ行くのか、・・・・

ノッツの繊細な鉛筆画は、遠目はききませんが、母子の対話にぴったり寄り添って、やさしくあたたかです。

ピーターのてがみ

エズラ=ジャック=キーツ作 きじまはじめ訳 偕成社 1974年

ピーターは、エイミーに誕生日の招待状を書いています。会って口で言えばいいのだけど、これはとくべつの手紙なのです。手紙を出しに行くとちゅうで雨が降りだしました。とつぜん強い風が吹いて手紙をさらっていきました。ピーターは追いかけます。するとむこうからエイミーがやってきて、いっしょに手紙を追いかけました。たいへん、エイミー宛の手紙だと分かったら、びっくりしなくなる!
ころんだエイミーは泣きながら家に帰っていきました。ピーターは、エイミーはもう誕生会に来てくれないだろうと、とても沈んだ気持ちになります。

さあ、誕生日、エイミーはパーティーに来てくれるでしょうか。

まほうのコップ

藤田千枝原案・川島敏生写真・長谷川摂子文 福音館書店 2012年

ふしぎなたねシリーズの写真絵本です。

コップに水を入れます。いちごをコップの向こうがわに置きます。すると、あらふしぎ、いちごがぐんにゃりつぶれていきます。

きのこのしめじを置くと、あらふしぎ、どう見てもガマガエルです。

フォークをすうっと置くと、反対側からもフォークがすうっと現れます。

水の入ったコップがレンズの役割をして、光の屈折によって、コップの向こう側にあるものの形が変化して見えるのです。とても身近な科学実験ですね。

実験。では、コップを切子ガラスのものに変えるとどう見えるでしょうか。コップではなく、ビンならどうなるかな。さまざまな形のビンに入れてみよう。

子どもの好奇心をそそる一冊です。ページを繰るごとに、ため息のようなふしぎな笑いがおこります。

時計つくりのジョニー

エドワード・アーディゾーニ作/あべきみこ訳/こぐま社 1998年

ジョニーは手先のとても器用な男の子です。でもかなづちやトンカチであれこれ作りはじめると、お父さんもお母さんも、うるさいといってどなります。

ジョニーのお気に入りの本は、『船のもけいのつくりかた』『テーブルといすのつくりかた』『大時計のつくりかた』の三冊です。
ある日、ジョニーは「大時計をつくろう」と思いつきました。嬉しくて、両親や教室でこの思いつきを話しました。でも、みんなはそれを聞いてジョニーをばかにして笑いました。それでもジョニーはあきらめません。

だれにも、身につまされるような経験が少なからずあります。だから、読みながら思わずがんばれと応援してしまいます。作中にも頼もしい応援者がいます。

もちろん、ジョニーは素晴らしい大時計をつくります。

バナナじけん

高畠 邦生作/BL出版刊  2012年

道にバナナが一本おちていました。そこへ猿がやってきました。どうするとおもう ? もちろん食べますね。猿はバナナの皮をぽいっと捨てていってしまいます。そこへウサギが走ってきます。どうなると思う ? もちろん滑りますね。あとからワニがやってきてその川を背中に乗せて歩いていきました。そして、落ちたバナナは一本ではなかった ! そこで猿は次から次 と… 、ウサギは次から次と、 … ワニは次から次と … 。聞いている子どもたち、笑いが止まらない。

よあけ

ユリ・シュルヴィッツ作/瀬田貞二訳/福音館書店刊  1977年   

暗い木の下でお爺さんと孫が寝ています。静まり返った湖畔。モノトーンの景色に少しずつ色合いが浮かんできます。それにつれてそよ風の揺らぎや蛙が水に飛び込む音が描かれていきます。お爺さんと孫は火を焚いて朝ご飯を作り、湖にボートをこぎだします。とつぜん太陽が昇ります。そのまばゆい美しさ。はっと息をのむ美しさです。
わが子が一歳のとき、はじめて自分から手を伸ばした本です。