だんだんやまのそりすべり

あまんきみこ作/西村繁男絵/福音館書店 2002年

いずみちゃんは友だちとみんなで、だんだん山にそりすべりに行きます。でもこわくてすべれない。みんなが、「いっちゃーん」って呼んでも、ひとり山の上で待っています。すると、山の反対のほうからも、「いっちゃーん」と呼ぶ声がします。見ると、そばに、やっぱりこわくてすべれない狐の男の子がいました。一郎という名前だからいっちゃんです。
 
ふたりのいっちゃんは、勇気を出して一緒に滑ってみることにします。

真っ白な画面にたくさんのそりが思い思いにすべっているのが見えます。人間も動物もいっしょになってすべっている様子が楽しいです。

雪が降ると、かならずお話会で読みます。

サイモンは、ねこである。

ガリア・バーンスタイン作/なかがわちひろ訳/あすなろ書房 2017年

表紙にはいかにも気の強そうな猫がでんとすわっています。この目ぢからのあるサイモンが、「こんにちは。ぼく、サイモンです。ぼくたち、にてますね」と声をかけてきます。子どもたちは、「え~っ、似てない」と言って笑いますが、ページをめくると、ライオン、チータ、ピューマ、クロヒョウ、トラが、やっぱり驚いて大笑いします。そして、サイモンをばかにします。サイモンはがっかりです。
でも、実は、似ているのです。ライオンたちは考えます。「みんな耳はいいよな」「りっぱなひげと、長いしっぽ」「鋭い歯、とがったつめ」「暗闇でもよく見える大きな目」。
 
サイモンが「それぜんぶ、ぼくも持ってます。ちっちゃいですけど!」というと、みんなは、自分たちがネコの仲間だったことに気がつきます。そして、みんなでネコらしくじゃれあって、一日じゅうなかよく遊びました。
 
こんなに楽しい動物絵本。みなさんもどうぞ。

どうぶつのおかあさん

小森厚文/薮内正幸絵/福音館書店 1977年

子どもは赤ちゃんにとても興味を持ちます。お母さんに抱っこされている赤ちゃんやお父さんにおんぶされている赤ちゃん。では、動物の赤ちゃんたちはどんなふうに抱っこされているのでしょう。
 
ネコ。お母さんねこは、子どもをくわえて運びます。ライオンも口にくわえて運びます。くわえられている赤ちゃんのかわいらしいこと!
 
さるは、お母さんのお腹にしがみついています。チンパンジーは抱っこ。コアラは、おんぶです。では、なまけものは?カンガルーは、もちろん、分かりますよね。では像は?シマウマは?イノシシ、ハリネズミ。親の後から自分の足でついて歩くのは、早く自立するからでしょうか?人間の子どもがいちばん親とくっついているようです。
 
あたたかな動物絵本です。

こねてのばして

ヨシタケシンスケ作/ブロンズ新社 2017年

2歳半の孫が、「りんごと同じ!」とさけんだそうな。そう、『りんごかもしれない』の作者です。ばあちゃんは『もうぬげない』と『あるかしら書店』にバカ受けしました(笑)

やわらかであたたかなのびやかな人物(?)たち。

朝がきて、起きて、着替えて、用意して。これはどうみてもパン作りです。う~ん、うどんかもしれない。彼はひたすら、こねてのばしてまたこねて、こねてのばして・・・・。
つついて、つまんで、おしつけて・・・すわらせて、おどって、・・・・

いったい、なにができるのでしょう? ああ、もうこれ以上は書きません。読んでください。孫は最後で大笑いしたそうです。わたしは、「あやまって」のところでいっちばん笑いました。

クリスマスのちいさなおくりもの

アリスン・アトリー作/上條由美子訳/山内ふじ江絵 福音館書店 2006年

アリスン・アトリーは、1884年にイギリスのダービシャーの農場に生まれます。アトリーの作品は、野原や森が舞台で、うさぎや野ネズミなどの小さな動物たちが物語を作っています。この物語は1970年に書かれたものです。

クリスマス・イブなのに、お母さんが病気で入院しているので、お父さんとふたりの子どもは、クリスマスの飾りつけもせずに寝てしまいました。夜中の11時になると、ネズミたちがネコのおかみさんに、どうして飾りがないのかと文句を言います。そこで、ネコとたくさんのネズミたちと、一匹のクモが、飾りつけをして、ミンスパイを焼き、ケーキを焼き、みんなのくつ下をつるします。
 
そこへ、もちろん! サンタクロースがやって来ます。サンタクロースは、ネコやネズミやクモにもプレゼントをくれました。ネコには真っ赤な房飾りのついた首飾り、クモにはルビーの冠、ネズミたちにはダイヤモンド(もしかしたらまほうのつゆ)。
 
おはなしにぴったりの、やさしいかわいい絵です。

カイとカイサのぼうけん

エルサ・ベスコフ作/まつむらゆうこ訳 福音館書店 2016年

原作は1923年に出版されています。ベスコフといえば、『ペレのあたらしいふく』『ブルーベリーもりでのプッテのぼうけん』がおなじみですね。スウェーデンの絵本作家です。

カイとカイサは兄妹で、森の奥の家に両親と住んでいます。ある日、倒れた枯れ木にまたがって遊んでいるとき、ふと、枯れ木に壊れた傘を打ち付けて、「枯れ木ドラゴン」にして遊び始めました。すると、オークの木にすんでいるトムテが魔法をかけて、生きているドラゴンにしてしまったのです。ふたりはドラゴンに乗って、おはなしの国へ冒険に出かけます。
ふたりはおひめさまと騎士を救いだします。

行きて帰りし物語です。

きのうえのおうちへようこそ!

ドロシア・ウォーレン・フォックス作/おびかゆうこ訳 偕成社 2017年 

10月に出たばかりの本です。原作は1966年にアメリカ合衆国で出版されました。

年配女性のツイグリーさんは、人とつき合うのが苦手で、木の上の家で犬のニャンコとふたりで暮らしています。ときどき、くまたちもやって来て、好きなことだけして楽しく生きています。買い物も、ニャンコがやってくれます。町の人たちは、ツイグリーさんを変わり者だといって、困った人だと思っています。とうとう市町の奥さんがツイグリーさんを追いはらってしまおうといいだしました。

ところがある日、大洪水が起こります。町の人たちや動物が、どんどん流されていくのですが、それを見たツイグリーさんは、なんとかして助けようと大活躍します。

暖かく懐かしい絵です。

しおちゃんとこしょうちゃん

ルース・エインズワース作 こうもとさちこ訳・絵 福音館書店 1993年

ストーリーテリングで語られることもよくあるおはなしです。かわいいかわいい子ねこたちと、やわらかで愛情あふれるお母さんねこのタビ―夫人が、あたたかなタッチで描かれています。
 
しおちゃんとこしょうちゃんは、どちらが高くまで登れるか競争しようと、庭のもみの木に登っていきます。「うちよりも高い木」が、素話では想像しきれないほどの高さで描かれています。

下りられなくなったしおちゃんとこしょうちゃんは、カッコウに助けてもらおうとしますが、カッコウは飛んでいってしまいます。つぎに飛行機に呼びかけますが、やはり飛んでいってしまいます。夜の風に頼んでもだめ。子どもの好む三回のくりかえしのなかで、不安と寂しさがつのっていきます。

暗い木の下で動くふたつの緑色の光。不安が頂点に達したとき、やさしいおかあさんの姿と声が現れます。緑色の光はお母さんの目の色でした。ぶじ自分たちのかごの中にもどり、のどをごろごろ鳴らして、三匹はねむりました。行きて帰りし物語です。

くまさんどこ?

ジョナサン・ベントレー 林木林訳 講談社 2016年

大事なくまがいなくなります。男の子は家じゅう探し、庭も探しますが、どうしても見つかりません。絵本を見ている者には、くまが見えています。だから、ドアの向こうからのぞいているくまやテーブルの下にいるくまのおしりを指さして、「ほら、あそこにいるのに!」と笑います。ここまでは、幼児向きの絵本だなと思うのですが、ところがどっこい。男の子が見つけたのは・・・。みんな、すっかりだまされて大笑いします。

男の子が正面を向いて「ねえ、くまさん みなかった?」と訊いたり、聞き手をまきこんで楽しむ絵本です。

バナナのはなし

伊沢尚子文 及川賢治絵 福音館書店 2013年

2009年に「かがくのとも」として発行されました。

バナナを冷蔵庫で冷やすと黒くなります。なぜだか知っていますか?傷をつけると黒くなるのと同じで、バナナに含まれるタンニンのせいなのです。皮が黒くなっても、腐っているのではないので食べられます。この性質を利用して、バナナの皮につまようじで字や絵をかいて遊ぶことができます。

バナナは産地から出荷されるときはまだ緑色で渋くて固くておいしくない。では、どんなふうになったときが食べごろか知っていますか?

バナナはどうやって増えるか知っていますか?バナナの種はどこにある?などなど、子どもたちの好きなバナナの秘密がいっぱい詰まった本です。