にんじゃ あまがえる

 松井孝爾監修 ひさかたチャイルド 2006年

子どもたちにとって、なじみの深いアマガエルの写真絵本です。
 
「せっしゃはにんじゃあまがえるでござる。きょうはわれわれあまがえるのすごいじゅつをたくさんみせるでござる」と、忍者言葉でアマガエルのふしぎを教えてくれます。その語り口調だけでも子どもは大よろこびです。

大人でも、カエルは保護色で身を守ることは知っていても、証拠写真を見せられると、う~んとうなってしまうし、透明のまぶたが下から閉まるのには、「へえ~」。

楽しく得した気分になる科学絵本です。

プアー

長新太作、和田誠しあげ 福音館書店 2008年

長新太さんが2005年に亡くなる前に描かれたラフスケッチが遺されました。それを和田誠さんが彩色して完成させた本です。別に紹介した『わんわん にゃーにゃー』も同じようにして作られました。

犬が右向いて立ってるだけです。わんわん。

いきなり、しっぽがプアーとふくらみます。続いて耳がプアー。顔がプアー、鼻がプアー・・・。この発想、なにがなんだか(笑)。この魅力、幼い子を引きつける力はすごいです。おとなにはきっと分からない人もいると思います(笑)

犬のいっしょうけんめいな顔がすてきです。

ブルーナの0歳からの本 第3集 どうぶつ

ディック・ブルーナ 講談社 1997年

わが子が生まれたとき、うさこちゃんシリーズをどかっと譲っていただきました。
ブルーナの絵は、まっすぐ子どもの目を見つめています。原色を使った、輪郭のはっきりしたとても分かりやすい絵です。ですから、サイズは小さいのですが、遠くからでも見つけてはいよってきます。

『ちいさいことり』や『ゆきのひのうさこちゃん』『うさこちゃんとうみ』などは、まだ経験しないものがたくさん出てきます。でも絵画としての魅力から、赤ちゃんでもじゅうぶん楽しめるでしょう。もちろん、雪を経験し、浜での遊びを経験すると、うさこちゃんと気持ちを合わせることができます。通りすがりの本ではない、ということですね。

今回は、ほんとうに赤ちゃん向きのじゃばら絵本をご紹介しました。

おへそのあな

長谷川義史 BL出版 2006年

まだ生まれていない赤ちゃんが、おかあさんのおへそのあなから、外をのぞいています。
お兄ちゃんやお姉ちゃん、おとうさん、おかあさん、おじいちゃん、おばあちゃん。みんな赤ちゃんが生まれてくるのが楽しみで、それぞれ準備しているのが、見えます、聞こえます、においます。

子どもたちに読むと、「うへ~」と、てれくさそうにします。でも、そのほころびきった顔は、嬉しくてしかたがないというようです。

どの子もこんなふうに迎えられるのだと気づいてくれるでしょう。

なにをたべたかわかる?

長新太作 絵本館 2003年

気持ちのいい朝の海で、ねこが釣りをしています。すると、ものすごく大きな魚が釣れました。ねずみが後ろでびっくりして見ていると、なんとその魚が・・・!

子どもの好きな入れ子細工のストーリーです。そのナンセンスというか、ブラックユーモアがなんともいえず、絶妙!
 
いっしょに見ている大人もおおよろこびしてくれます。

ゆきのひ

エズラ・ジャック・キーツ作/木島始訳/偕成社 1969年

以前紹介したピーターのシリーズです。このピーターがいちばん幼いかなと思います。
 
雪の中を赤いコートで出かけるピーター。コントラストが美しく、貼り絵がすばらしいです。
 
ピーターは大きい子どもたちの仲間入りはできません。でも、ひとりで精一杯雪を楽しみ、すばらしい時間を過ごします。雪の上にさまざまな足形をつけたり、天使の形を作ったり。わが子が小さかったとき、スキー場でピーターのまねをして遊びました。

ピーターは雪の玉をたいせつに持ってかえりますが、すっかり融けてしまいました。でも、つぎの日はもっとたくさん積もっていたのです。こんどは、友だちと遊びに出かけました。

ゆき

ユリ・シュルヴィッツ作/さくまゆみこ訳/あすなろ書房 1998年

子どもはたいてい雪が好きです。雪があまり降らない地域の子どもは特に、雪に憧れます。そんな思いを美しい色をかさねて描いています。

初めは雪なんてふらないように見えます。ところが、一ひらだけ、小さく小さく描かれます。少しずつ数が増えていきます。大人たちは雪なんてふらないといいますが、どんどん降ってきます。男の子は雪の町を踊って、走って、よろこびます。

マザーグースの登場人物たちもとびだして、ふしぎな世界があらわれます。

おとなっていいなあ、こどもっていいなあ―はだかんぼうがふたり

奥田継夫文/関屋敏隆絵/サンリード 1979年

以前、図書館のおはなし会で読んだ数日後、司書さんから質問がありました。

「年配の男性が、このあいだのおはなし会で読んでいた性教育の本の名前を教えてほしいといってこられました」と。しばらく考えて、ああこれだなと思い当たりました。

男の子が両親と銭湯に行くというだけの話です。商店街をぬけて、いつもの銭湯です。顔見知りの番台のおばさん、近所のお姉ちゃん、友達。母親が「きょうはどっちにはいるのん?」ときくと、ぼくは、「きまってるやん。男、男」と答えます。

お風呂の湯気とともに心までとけそうなリラックス感にあふれた絵本です。関西弁で書かれています。

銭湯から出ると、外では雪が降っていました。
「あしたつもるかなあ」

とおいクリスマス

えびなみつる作 白泉社 1994年

言葉はとても少ないのです。でも、人物のにこやかな表情がたくさんたくさん語っています。雪の降る情景も、バスの窓明かりも。そして、くっきりと浮かび上がる彼らの家の窓の灯りも。

お父さんとお兄ちゃんと弟が、うきうきとクリスマスのごちそうを作ります。ろうそくの明かりのもとで三人は食卓をかこみます。お母さんの写真もテーブルの上から参加しています。

雪がやみ、皆は外に出て大きな天体望遠鏡をセットします。
「あの星?」
「そう あの星!」
兄弟は庭にある大きなパラボラアンテナから電話をします。
「メリークリスマス もしもし おかあさん あのね・・・・・

読んでいて涙ぐみそうになったとき、お母さんがどこにいるかわかります。
宇宙船の中なのです。かっこいい、お母さん。お母さんは宇宙飛行士です。

エイモスさんがかぜをひくと

フィリップ・C・ステッド作 エリン・E・ステッド絵 青山南訳 光村教育出版 2010年

年配の飼育員のエイモスさんは、毎日バスに乗って動物園に出勤します。そして、ゾウとチェスをしたり、カメとかけっこしたり、サイにハンカチを貸してやったりと、動物の友だちとおだやかな日々をすごしています。

ある日、エイモスさんは風邪をひいて、園を休んでしまいました。動物たちは手持無沙汰でしようがありません。エイモスさんのことも心配です。とうとうみんなはバスに乗ってエイモスさんの家へお見舞いにでかけます。

写実的な絵なので、動物たちがバス停に並んでいるあたりから、子どもたち、「え~っ、バスにのれるの?」と声をあげます。次のページで動物たちが乗っているバスを見て、思わず笑ってしまいます。

動物たちは、それぞれのやり方で、エイモスさんがしてほしいことをしてあげます。いつもエイモスさんが動物たちにしてくれているのと同じように。