セミがうまれるよ

あかぎかんこ・作 きたじまひでお・写真 埼玉福祉会 2017年

セミの幼虫が成虫になるまでの成長の様子が、大きな写真とわかりやすい言葉で描かれています。科学的な正確さから考えると、小学生向きかとも思いますが、わかりやすさと、幼い子の探求心にきちんと応えていることから、幼児からとしました。

みなさんは、セミの雄と雌の見分け方を知っていますか?なんと、飛んでいった後の抜け殻から判断できるのですって。

昆虫は、子どもにとっての身近な生命です。おとなは毛嫌いせずに、子どもに、他の生命との出会いを用意してやりたいものです。

川はどこからながれてくるの

トマス=ロッカー・作 みのうらまりこ・訳 偕成社 1992年

まるでターナーの絵のような美しい風景の中を、おじいさんとふたりの孫が、川の源流を求めて旅立ちます。川を渡り、水浴びをし、キャンプをしながら、自然の中を歩いていきます。高原の小さな池が源流でした。少しずつ湧き出て流れ出した水が、次第に大きな川になっていたのです。
 
三人は、流れとともに帰りの旅につきます。夕暮れのあわい光の中に、両親の待つ家の窓の灯りが見えました。

マロンちゃん カレーつくってみよう!

西村敏雄作 文溪堂 2017年

マロンちゃんは犬です。飼い主(家族?)はオジーさんという名の紳士。マロンちゃんがオジーさんにサポートしてもらってカレーを作るというだけの話なんですが、子ども心をくすぐる楽しさです。

おなかがすいたのでお料理を作ろう、何作ろう、ハンバーグ、オムライス、からあげ。ね、子どもの好きな物ばかり。結局、そうだ、カレーにしよう。絵を見ている子どもたちも大きくうなずきます。

材料は何かな?定番なので、絵を見ながら大きな声でいいます。それからが楽しい。買い物に行くのです。肉屋、八百屋。パン屋、・・・。買ってきたのは、もちろんさっき大声でいったカレーの材料。と、牛乳、とろけるチーズ、スパゲッティ、うどん、マカロニ食パン菓子パン。気持ち、わかりますよねえ。

さて、カレーを作ります。材料を切るところから丁寧に描かれるので、リアリティがあります。だから、うれしい。お鍋にふたをして、歌って踊りながら待ちます。

 ババ~ン! カレーのできあがり!
 
ご近所さんが集まってきますが、もうカレーライスはありません。どうなったと思いますか?さっきの無駄遣いは無駄ではなかったのです。カレーサンド、カレーグラタン、カレースパゲティ、カレーうどん、・・・ああおいしかった。

おっと、学童保育で読んだら、カレーうどんを知らない子がいましたよ。

にんじゃ あまがえる

 松井孝爾監修 ひさかたチャイルド 2006年

子どもたちにとって、なじみの深いアマガエルの写真絵本です。
 
「せっしゃはにんじゃあまがえるでござる。きょうはわれわれあまがえるのすごいじゅつをたくさんみせるでござる」と、忍者言葉でアマガエルのふしぎを教えてくれます。その語り口調だけでも子どもは大よろこびです。

大人でも、カエルは保護色で身を守ることは知っていても、証拠写真を見せられると、う~んとうなってしまうし、透明のまぶたが下から閉まるのには、「へえ~」。

楽しく得した気分になる科学絵本です。

プアー

長新太作、和田誠しあげ 福音館書店 2008年

長新太さんが2005年に亡くなる前に描かれたラフスケッチが遺されました。それを和田誠さんが彩色して完成させた本です。別に紹介した『わんわん にゃーにゃー』も同じようにして作られました。

犬が右向いて立ってるだけです。わんわん。

いきなり、しっぽがプアーとふくらみます。続いて耳がプアー。顔がプアー、鼻がプアー・・・。この発想、なにがなんだか(笑)。この魅力、幼い子を引きつける力はすごいです。おとなにはきっと分からない人もいると思います(笑)

犬のいっしょうけんめいな顔がすてきです。

ブルーナの0歳からの本 第3集 どうぶつ

ディック・ブルーナ 講談社 1997年

わが子が生まれたとき、うさこちゃんシリーズをどかっと譲っていただきました。
ブルーナの絵は、まっすぐ子どもの目を見つめています。原色を使った、輪郭のはっきりしたとても分かりやすい絵です。ですから、サイズは小さいのですが、遠くからでも見つけてはいよってきます。

『ちいさいことり』や『ゆきのひのうさこちゃん』『うさこちゃんとうみ』などは、まだ経験しないものがたくさん出てきます。でも絵画としての魅力から、赤ちゃんでもじゅうぶん楽しめるでしょう。もちろん、雪を経験し、浜での遊びを経験すると、うさこちゃんと気持ちを合わせることができます。通りすがりの本ではない、ということですね。

今回は、ほんとうに赤ちゃん向きのじゃばら絵本をご紹介しました。

おへそのあな

長谷川義史 BL出版 2006年

まだ生まれていない赤ちゃんが、おかあさんのおへそのあなから、外をのぞいています。
お兄ちゃんやお姉ちゃん、おとうさん、おかあさん、おじいちゃん、おばあちゃん。みんな赤ちゃんが生まれてくるのが楽しみで、それぞれ準備しているのが、見えます、聞こえます、においます。

子どもたちに読むと、「うへ~」と、てれくさそうにします。でも、そのほころびきった顔は、嬉しくてしかたがないというようです。

どの子もこんなふうに迎えられるのだと気づいてくれるでしょう。

なにをたべたかわかる?

長新太作 絵本館 2003年

気持ちのいい朝の海で、ねこが釣りをしています。すると、ものすごく大きな魚が釣れました。ねずみが後ろでびっくりして見ていると、なんとその魚が・・・!

子どもの好きな入れ子細工のストーリーです。そのナンセンスというか、ブラックユーモアがなんともいえず、絶妙!
 
いっしょに見ている大人もおおよろこびしてくれます。

ゆきのひ

エズラ・ジャック・キーツ作/木島始訳/偕成社 1969年

以前紹介したピーターのシリーズです。このピーターがいちばん幼いかなと思います。
 
雪の中を赤いコートで出かけるピーター。コントラストが美しく、貼り絵がすばらしいです。
 
ピーターは大きい子どもたちの仲間入りはできません。でも、ひとりで精一杯雪を楽しみ、すばらしい時間を過ごします。雪の上にさまざまな足形をつけたり、天使の形を作ったり。わが子が小さかったとき、スキー場でピーターのまねをして遊びました。

ピーターは雪の玉をたいせつに持ってかえりますが、すっかり融けてしまいました。でも、つぎの日はもっとたくさん積もっていたのです。こんどは、友だちと遊びに出かけました。

ゆき

ユリ・シュルヴィッツ作/さくまゆみこ訳/あすなろ書房 1998年

子どもはたいてい雪が好きです。雪があまり降らない地域の子どもは特に、雪に憧れます。そんな思いを美しい色をかさねて描いています。

初めは雪なんてふらないように見えます。ところが、一ひらだけ、小さく小さく描かれます。少しずつ数が増えていきます。大人たちは雪なんてふらないといいますが、どんどん降ってきます。男の子は雪の町を踊って、走って、よろこびます。

マザーグースの登場人物たちもとびだして、ふしぎな世界があらわれます。