デヴィッド・カリ&セルジュ・ブロック作/小山薫堂訳 千倉書房 2006年
一本の赤い毛糸が、ページを彩り、人や命をつないでいきます。
11、5×27、5の横長の絵本です。
初めに待っているのは男の子。おにいちゃんって呼ばれる日を待っています。
お休みのキスを待っています。
ママのケーキが焼けるのを待っています。
雨が止むのを待っています。
クリスマスを待っています。
そうです、わたしたちは子どもの頃から、ずうっと何かを待ちつづけているのですね。
男の子は青年になり、待っていた彼女と出会い、彼女は戦場に出掛けた青年を待ちます。青年は負傷し、病院で戦争の終わるのを待ち、彼女からの色よい返事を待ちます。
青年は父親となり、子どもたちが独立し、妻が病に倒れ、「さようなら。ありがとう」って言わなきゃいけない日を待ちます。
それが人生です。
最後に待つのは新しい家族です。息子の妻のおなかに毛糸の切れはしがあります。
そう、それが人生です。
最後のページに赤い毛糸が美しくたばねられてあります。