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こねてのばして

ヨシタケシンスケ作/ブロンズ新社 2017年

2歳半の孫が、「りんごと同じ!」とさけんだそうな。そう、『りんごかもしれない』の作者です。ばあちゃんは『もうぬげない』と『あるかしら書店』にバカ受けしました(笑)

やわらかであたたかなのびやかな人物(?)たち。

朝がきて、起きて、着替えて、用意して。これはどうみてもパン作りです。う~ん、うどんかもしれない。彼はひたすら、こねてのばしてまたこねて、こねてのばして・・・・。
つついて、つまんで、おしつけて・・・すわらせて、おどって、・・・・

いったい、なにができるのでしょう? ああ、もうこれ以上は書きません。読んでください。孫は最後で大笑いしたそうです。わたしは、「あやまって」のところでいっちばん笑いました。

クリスマスのちいさなおくりもの

アリスン・アトリー作/上條由美子訳/山内ふじ江絵 福音館書店 2006年

アリスン・アトリーは、1884年にイギリスのダービシャーの農場に生まれます。アトリーの作品は、野原や森が舞台で、うさぎや野ネズミなどの小さな動物たちが物語を作っています。この物語は1970年に書かれたものです。

クリスマス・イブなのに、お母さんが病気で入院しているので、お父さんとふたりの子どもは、クリスマスの飾りつけもせずに寝てしまいました。夜中の11時になると、ネズミたちがネコのおかみさんに、どうして飾りがないのかと文句を言います。そこで、ネコとたくさんのネズミたちと、一匹のクモが、飾りつけをして、ミンスパイを焼き、ケーキを焼き、みんなのくつ下をつるします。
 
そこへ、もちろん! サンタクロースがやって来ます。サンタクロースは、ネコやネズミやクモにもプレゼントをくれました。ネコには真っ赤な房飾りのついた首飾り、クモにはルビーの冠、ネズミたちにはダイヤモンド(もしかしたらまほうのつゆ)。
 
おはなしにぴったりの、やさしいかわいい絵です。

カイとカイサのぼうけん

エルサ・ベスコフ作/まつむらゆうこ訳 福音館書店 2016年

原作は1923年に出版されています。ベスコフといえば、『ペレのあたらしいふく』『ブルーベリーもりでのプッテのぼうけん』がおなじみですね。スウェーデンの絵本作家です。

カイとカイサは兄妹で、森の奥の家に両親と住んでいます。ある日、倒れた枯れ木にまたがって遊んでいるとき、ふと、枯れ木に壊れた傘を打ち付けて、「枯れ木ドラゴン」にして遊び始めました。すると、オークの木にすんでいるトムテが魔法をかけて、生きているドラゴンにしてしまったのです。ふたりはドラゴンに乗って、おはなしの国へ冒険に出かけます。
ふたりはおひめさまと騎士を救いだします。

行きて帰りし物語です。

きのうえのおうちへようこそ!

ドロシア・ウォーレン・フォックス作/おびかゆうこ訳 偕成社 2017年 

10月に出たばかりの本です。原作は1966年にアメリカ合衆国で出版されました。

年配女性のツイグリーさんは、人とつき合うのが苦手で、木の上の家で犬のニャンコとふたりで暮らしています。ときどき、くまたちもやって来て、好きなことだけして楽しく生きています。買い物も、ニャンコがやってくれます。町の人たちは、ツイグリーさんを変わり者だといって、困った人だと思っています。とうとう市町の奥さんがツイグリーさんを追いはらってしまおうといいだしました。

ところがある日、大洪水が起こります。町の人たちや動物が、どんどん流されていくのですが、それを見たツイグリーさんは、なんとかして助けようと大活躍します。

暖かく懐かしい絵です。

しおちゃんとこしょうちゃん

ルース・エインズワース作 こうもとさちこ訳・絵 福音館書店 1993年

ストーリーテリングで語られることもよくあるおはなしです。かわいいかわいい子ねこたちと、やわらかで愛情あふれるお母さんねこのタビ―夫人が、あたたかなタッチで描かれています。
 
しおちゃんとこしょうちゃんは、どちらが高くまで登れるか競争しようと、庭のもみの木に登っていきます。「うちよりも高い木」が、素話では想像しきれないほどの高さで描かれています。

下りられなくなったしおちゃんとこしょうちゃんは、カッコウに助けてもらおうとしますが、カッコウは飛んでいってしまいます。つぎに飛行機に呼びかけますが、やはり飛んでいってしまいます。夜の風に頼んでもだめ。子どもの好む三回のくりかえしのなかで、不安と寂しさがつのっていきます。

暗い木の下で動くふたつの緑色の光。不安が頂点に達したとき、やさしいおかあさんの姿と声が現れます。緑色の光はお母さんの目の色でした。ぶじ自分たちのかごの中にもどり、のどをごろごろ鳴らして、三匹はねむりました。行きて帰りし物語です。

くまさんどこ?

ジョナサン・ベントレー 林木林訳 講談社 2016年

大事なくまがいなくなります。男の子は家じゅう探し、庭も探しますが、どうしても見つかりません。絵本を見ている者には、くまが見えています。だから、ドアの向こうからのぞいているくまやテーブルの下にいるくまのおしりを指さして、「ほら、あそこにいるのに!」と笑います。ここまでは、幼児向きの絵本だなと思うのですが、ところがどっこい。男の子が見つけたのは・・・。みんな、すっかりだまされて大笑いします。

男の子が正面を向いて「ねえ、くまさん みなかった?」と訊いたり、聞き手をまきこんで楽しむ絵本です。

バナナのはなし

伊沢尚子文 及川賢治絵 福音館書店 2013年

2009年に「かがくのとも」として発行されました。

バナナを冷蔵庫で冷やすと黒くなります。なぜだか知っていますか?傷をつけると黒くなるのと同じで、バナナに含まれるタンニンのせいなのです。皮が黒くなっても、腐っているのではないので食べられます。この性質を利用して、バナナの皮につまようじで字や絵をかいて遊ぶことができます。

バナナは産地から出荷されるときはまだ緑色で渋くて固くておいしくない。では、どんなふうになったときが食べごろか知っていますか?

バナナはどうやって増えるか知っていますか?バナナの種はどこにある?などなど、子どもたちの好きなバナナの秘密がいっぱい詰まった本です。

いろいろいっぱい

ニコラ・デイビス文 エミリー・サットン絵 越智典子訳 ゴブリン書房 2017年

副題が「ちきゅうのさまざまないきもの」

科学絵本。術語は難しいですが、ひらがなが多用してあるので、興味のある子どもなら低学年でも読めます。

「ちきゅうにはなんしゅるいのいきものがいるとおもう?」との問いかけから始まります。「ひとつ」「ふたつ」「みっつ」と数えていって、「いっぱい!」
 
虫、花、象といった子どもの好きな物が描かれ、つぎには多種多様なきのこ。そして微生物。大きさの多様性を教えたあとは、棲家の多様性。砂漠、島。鳥の羽のすきま。それからつぎは、種類の多様性。見た目が違うのに種類は同じだったり、見た目がそっくりなのに違う種類だったり。
 
「すべての生きものが複雑にからみあってひとつの大きくて美しい模様を織りあげているようだ」という説明(主張)とこまやかな素朴な絵とがマッチしています。
 そして、人間がこの模様をこわしている、人間もこの模様がないと生きられないのに。 

同じ作者たちの『ちいさなちいさな  めにみえないびせいぶつのせかい』もおすすめです。

フワフワ

おおなり修司文 高畠那生絵 絵本館 2017年

なぜかダチョウが群れをなして走っています。するとその羽がとんでフワフワ。カバが大きな鼻で羽を吸い込んで、ハックション。びっくりしたダチョウが、ダチョーと走っていくと、ワニやライオンが池に浸かっています。ダチョウがダダダダダー!と走りぬけたひょうしに、ライオンのたてがみがふわっと飛んでしまいます。なんと、かつらだったのだ?かつらがまたフワフワ飛んでいって、池に浸かっているかピパラ(?)の頭に乗っかります。

何とも言えないナンセンス絵本です。ダチョウの表情に大笑いすること請け合いです。

うし

内田麟太郎詩 高畠純絵 アリス館 2017年

こども文学の実験『ざわざわ』第2号所収の詩「うし」を絵本にしたものです。

ただ牛がつぎつぎつぎと並んでいるだけなのですが。なんともきまじめで、しかも飄々とした牛の表情がユーモラスで、笑えてきます。詩のことばと、スタンプのように並ぶ絵が絶妙にコラボしています。ナンセンス詩を絵本にするのって独特の感性がいるんでしょうね。

子どもたちは、確実につぎを予想して、大笑いします。最後のページ、私は予想が外れたけれど、子どもたちは、ぴたりと当てました。さすが!