「2 幼児から」カテゴリーアーカイブ

としょかんライオン

としょかんライオン

ミシェル・ヌードセン作 ケビン・ホークス絵 福本友美子訳 岩崎書店 2007年

まずはりっぱな図書館に感動しました(笑)
こんなにたくさんの本が、高い棚の上までぎっしりあって、大人も子どもも、たくさんの人たちがゆったりと読書を楽しんでいる光景は、本好きの読者にはたまりません。絵もとても暖かいです。
その図書館に、のっそりと大きなライオンがやって来ます。
ライオンは、まるで人間の子どものように、当たり前にやって来て、くつろぎます。おはなしの時間が気にいったようです。すぐに、子どもたちの人気者になりました。
館長のメリーウェザーさんのお手伝いもします。

ところが、ちょっとした誤解がもとで、ライオンがやって来なくなります。
ライオンのいないおはなし会や児童書コーナーの子どもたちの寂しげな不安そうな表情。メリウェザーさんの遠い目。
ライオンがまたやって来たときのみんなの喜び。いきいきとした表情がすばらしいです。

ぞうくんのおおゆきさんぽ

なかのひろたか作 福音館書店 2022年

こどものとも(年中向き)430号。
ぞうくんのさんぽシリーズは、子どもたちに定評があります。
1冊目の『ぞうくんのさんぽ』は1977年発行です。
2冊目の『ぞうくんのあめふりさんぽ』は2006年だから、30年近く開いていますね。きっとシリーズ化は考えておられなかったのでしょう。でも子どもたちは喜んだと思います。
つづいて2010年『ぞうくんのおおかぜさんぽ』。
2019年の『かめくんのさんぽ』。
そして、昨年2021年末にこの『ぞうくんのおおゆきさんぽ』が出ました。まだ雑誌ですが、きっと絵本になるでしょう。

ぞうくんが散歩に出かけます。
やっぱり、かばくんに会います。
つぎにやっぱりわにくんに会って、最後にかめくんに会います。
4匹はやっぱり「うわー!」な目にあいます。

そして・・・

 みんな ごきげん
 きょうは おおゆき

この予定調和がなんともいえず心地よい安心感を与えてくれます。

うみがめのおじいさん

いとうひろし/講談社 2021年

対象を幼児からとしましたが、大人も楽しめます。

同じ作者の『おさるのまいにち』に出てくるあのうみがめのおじいさんの話です。
おさるたちのおだやかな毎日のなかで、うみがめのおじいさんが遥か彼方からやって来るのは、大事件です。
おじいさんは、旅のとちゅうでであったことをおさるたちに話してくれます。
そのストーリーを、おじいさんの視点で書いてあります。

おじいさんは、大きな船にぶつかるときもあるし、ぶつからないときもあります。
うつらうつら波間を漂っていると、そんなことはどうでもよくなってきます。

「ここがどこなのか。
 いまがいつなのか。
 じぶんがなんなのか。」

おじいさんにはどうでもいいことに思えるのです。
そうやって海とひとつになっていくおじいさん。
そんなふうに生きて老いて行きたいと思ってしまいます。

パパ、お月さまとって!

エリック・カール作 もりひさし訳/偕成社 1986年

モニカがベッドに行こうとすると、お月さまがとっても近くに見えました。
お月さまと遊びたくなったモニカは、パパに、お月さまをとってとたのみます。
パパは、長い長いはしごを持って来ますが届きません。
そこで、はしごを高い高い山にかつぎあげて登って行きます。
パパはお月さまに届きましたが、お月さまがあんまり大きすぎて、持って降りることができません。
さて、そこで、パパはどうやってモニカにお月さまを取ってあげたでしょうか?

はしごの長さや山の高さ、月の大きさを描くために、エリックカールは、本の形をはみ出します。紙を継ぎ足して広げ、ページの使い方が自由自在です。幼児が絵を描くときと同じ自由さがあります。

月を持って来るというファンタジーですが、月の満ち欠けをちゃんと教えてくれます。
父親が、当たり前のように子どもの願いをかなえてやるすがたに、温かな愛情を感じます。

やさいはいきている

やさいはいきている~そだててみようやさいのきれはし~

藤田智監修/ひさかたチャイルド 2007年

副題は「そだててみよう やさいの きれはし」。しぜんにタッチシリーズの写真絵本です。
にんじん、じゃがいも、ごぼう、ほうれんそう、キャベツ、等々、子どもたちがよく見る野菜が集合。
やさいたちは、みんな生きているのです。命が宿っている。ふだんはそのことに気が付きませんが、野菜が生きていることが分かる方法があります。
料理のあとの切れ端を水に入れておくといいのです。
大根やにんじんは、葉っぱのほうを上にして深皿に入れます。ホウレンソウやこまつなは、根っこのほうを下にしてコップに入れます。
どちらも畑に植わっていたときと上下が同じです。すると、根が出て、葉っぱがのびて、花が咲きます。
にんじんの葉っぱの美しいこと!
キャベツの芯から葉っぱがどんどん増える様子は、造形美に驚きます。
大根の花のかれんなこと!
根っこと芽が出たジャガイモを土に植えれば、新しいジャガイモが生まれます。

簡単にお家で実験できて、命について実感できます。

ママー、ポケット!

デヴィッド・エズラ・シュタイン作 ふしみみさを訳/光村教育出版 2018年

赤ちゃんカンガルーのジョーイは、初めてママのおなかのふくろから外をのぞきました。そして、「ママ、おそとをピョンピョンしたいよ」とせがみます。
ピョンピョンと2回はねると何かが飛んでいます。
「きみ、だあれ?」とジョーイが聞くと、それは、「ハチだよ」と答えました。そのとたん、ジョーイは「ママー、ポケット」と、あわててママのポケットに飛び込みました。でも、安心すると、すぐにまた、外へ出たくなるジョーイ。
今度は、ピョンピョンピョンを三回はねて、また誰かに会います。
「きみ、だあれ?」「ウサギだよ」で、また「ママー、ポケット!」
幼い子は《出かけて行っては安心できる所に帰って来る》を繰り返して外の世界を自分のものにして行くのですね。それがとても愛らしく、描かれています。
ジョーイを黙って見守るママの視線も素敵です。
少しずつ遠くはねていく様子が、遠近法で描かれていて、幼い子にもよくわかります。
最後に出会ったのはだれでしょう?

ラチとらいおん

マレーク・ベロニカ文・絵/とくながやすもと訳/福音館書店 1965年 

ラチは、世界一弱虫の男の子です。
ラチは飛行士になりたいのですが、犬は怖いし、暗い部屋も怖いし、友達さえ怖いのです。それで、ラチはいつも仲間外れにされて、泣いてばかりいました。
ラチは、ライオンの絵が大好きで、こんなライオンがいたら何も怖くないんだけどと思っています。

ある朝、目を覚ますと、ベッドのそばに、小さな赤いライオンがいました。ライオンは、とても強くて、片手で椅子を持ち上げることができました。
ラチはライオンに強くなる方法を教えてもらいます。

自分を小さく弱い存在だと感じている幼い子にとって、切実な願いをかなえてくれるライオンは、お守りのような存在です。
そして、いつか、お守りがなくても、ひとりでいじめっ子をやっつけられるほど、強くなれるのです。
勇気と希望を与えてくれるおはなしです。

ニットさん

たむらしげる作 イースト・プレス 2012年

ニットさんは、毛糸の編み物が得意なおばさんです。シャカシャカとどんどん編んで行きます。
まずはふわふわの椅子。のどがかわいたので、テーブルと、ティーポットと、カップ。風が吹いてきて寒くなったので、大きな家!
毛糸の玉と、毛糸のメリヤス編みは、写真を使ってあるので、リアリティがあって、おお~っと驚いてしまいます。
 
夜になると、三日月を編み、ベッドを編んでおやすみなさい。
よく見ると、地球も土星も、星たちも、みんな毛糸で編んであります。

ひよこのコンコンがとまらない

ポール・ガルドン作/福本友美子訳 ほるぷ出版 2007年

北欧の昔話です。めんどりのコッコさんが、ひよこのタッペンを連れて森に出かけます。おいしい種が落ちていないか探しに行ったのです。
コッコさんはタッペンに、大きい種は食べてはいけない、コンコン(せき)が出るからといいました。ところが、タッペンは、大きい種を飲みこんで、せきが止まらなくなりました。
 
コッコさんは、水をくみに泉へ行きますが、泉はコップを持ってこないと水をやらないといいます。
そこで、コッコさんは、かしの木にたのみましたが、かしの木は枝をゆすってくれなければ、コップをやらないといいます。
そこで・・・コッコさんは、木こりの息子、くつ屋、雌牛・・・と、必死で走ってたのみに行きます。連鎖譚です。

絵は、素朴であたたかいです。コッコさんは左から右へ走って行き、出会うものたちは、右にいて左を向いています。だから、連鎖譚の楽しさがわかります。

うどんのうーやん

岡田よしたか作 ブロンズ新社 2012年

主人公は、きつねうどん。どんぶりばちから威勢よくのびている二本のうどんが手になって、お箸もつかめるし、腕組みもできます。
 
うどん屋にうどんの出前の電話がきます。ダイヤル式の黒電話!
 
「うーやん でまえや。たのむでー」
「ほな いってきますう」

人手不足なので、うどんのうーやんは、自分でお客さんの家に行かなければなりません。威勢よく走りだすと、後ろから、おあげとお箸が追いかけます。

途中で出会ったやせねこに、うどんを食べさせてやり、半分に減ったうどん。困ったうーやんは、お客の家に向かう道で会った者たちと仲間になって、どんぶりに入れていきます。そうめん、めざし、うめぼし、とうふ、たこやき、ミニトマト、コロッケ、エビフライ。川をわたり、山を越え、河内音頭を歌いながら進みます。

名付けて、にぎやかうどん!

大阪弁の文章なのですが、関西人でなくても、なりきって読めばきっと楽しいと思います。