「2 幼児から」カテゴリーアーカイブ

ゆきのひ

エズラ・ジャック・キーツ作/木島始訳/偕成社 1969年

以前紹介したピーターのシリーズです。このピーターがいちばん幼いかなと思います。
 
雪の中を赤いコートで出かけるピーター。コントラストが美しく、貼り絵がすばらしいです。
 
ピーターは大きい子どもたちの仲間入りはできません。でも、ひとりで精一杯雪を楽しみ、すばらしい時間を過ごします。雪の上にさまざまな足形をつけたり、天使の形を作ったり。わが子が小さかったとき、スキー場でピーターのまねをして遊びました。

ピーターは雪の玉をたいせつに持ってかえりますが、すっかり融けてしまいました。でも、つぎの日はもっとたくさん積もっていたのです。こんどは、友だちと遊びに出かけました。

ゆき

ユリ・シュルヴィッツ作/さくまゆみこ訳/あすなろ書房 1998年

子どもはたいてい雪が好きです。雪があまり降らない地域の子どもは特に、雪に憧れます。そんな思いを美しい色をかさねて描いています。

初めは雪なんてふらないように見えます。ところが、一ひらだけ、小さく小さく描かれます。少しずつ数が増えていきます。大人たちは雪なんてふらないといいますが、どんどん降ってきます。男の子は雪の町を踊って、走って、よろこびます。

マザーグースの登場人物たちもとびだして、ふしぎな世界があらわれます。

はぐ

佐々木マキ作 福音館書店 2013年

幼児がよろこぶ本だと思って、図書館で読みました。もちろんうれしそうにしていましたが、小学校で読んだら、「なんでやねん!」とつっこみを入れながら、隣の子とハグしていました(笑)

砂浜の波打ち際で、左右から子どもやブタやタコがあらわれ、会えたことを喜びあうだけのお話です。ハグしているその顔の安らかで幸せそうなこと。

幼い子には続けて何度も読むといいと思います。

こんたのおつかい

田中友佳子作 徳間書店 2004年

こぎつねのこんたは、おかあさんに、おあげを買いに行くように頼まれます。こんたは、忘れないように「おあげ、おあげ」と唱えながら行くのですが、寄り道して天狗に襲われます。走ってにげますが、「おあげ、おあげ」がいつのまにか、「てんぐ、てんぐ」になってしまいます。「てんぐ、てんぐ」と走っていくと、こんどは鬼が出てきて・・・

昔話の「どっこいしょ」から想をとった楽しい絵本です。恐いものから逃げるモティーフが使ってあって、小さい子はとても喜びます。

ピーターのいす

E=ジャック=キーツ作 木島始訳 偕成社 1969年

ピーターに、妹のスージーが生まれます。ピーターが赤ちゃんのとき使っていたゆりかごがピンクに塗られ、スージーが寝ています。食堂いすも赤ちゃんベッドも、ピンクになってスージーのものになってしまいました。

「あれ、ぼくのなのに」と、ピーターは不満です。ピーターは家出することにしました。犬のウィリーといっしょに、たいせつなものを持って家の前に出ていきました。ところが、もちだした赤ちゃんいすに座ろうとすると、お尻が入りません。ピーターは大きくなりすぎていたのです。

ピーターはどうやって心の折り合いをつけたのでしょう。

ほかに、「ピーターのくちぶえ」「ピーターのてがみ」「ピーターのめがね」もおすすめです。どれも、両親のさりげない対応が絶妙です.

じどうしゃトロット

ユリ・シュルヴィッツ作 金原瑞人訳 そうえん社 2015年

元気な小型車のトロットは、あちこち走ってある日サボテン村にやって来ます。そこで出会ったトラック三台。赤トラ、青トラ、黄トラ。トラックたちは小さなトロットをばかにします。負けん気のトロットは、ぜったい負かしてやると考えます。

「ぼくときょうそうしない?サボテン山で12時に」

いぜん紹介した『よあけ』と同じ作者の絵本です。
学童保育(小学1~5年生)のおはなし会で読みました。レースがスタートして見開き3枚分、ずっとトロットがしんがりです。子どもたちはがっかり、ため息。そして次のページから、一台ずつ抜いていきます。大きなトラックたちがパンクしたりつっかえたりするのを横目に、ちいさいがゆえの勝利です。子どもたちの顔が輝きます。

シュルヴィッツらしい色使いで、デフォルメされたマスコットのような自動車たちはとても親しみを感じさせてくれます。

最後のページ「ゆうひにむかって走っていった。でっかいかげをうしろにつれて」
子どもたち「ほんまや~!」

かっこいい、トロットのおはなし。

おやすみ おやすみ

シャーロット・ゾロトウ文 ウラジミール・ボブリ絵 ふしみみさを訳 2014年 岩波書店

落ち着いたグレーの背景に優しい色調の絵が続きます。ページをめくるごとに、ひとつずつ寝ているものが描かれます。

クマは雪をかぶった巣穴の中で、ハトはからだを寄せ合って、サカナは水草の中で、ガは窓にとまって、ウマは野原でたったまま、・・・

ストーリーに展開はないのですが、それぞれの動物たちに物語を感じるのは、作者ゾロトウの筆の力です。

「こどもたちは ふとんに すっぽり くるまって、ぐっすり すやすや ねむります。おやすみ おやすみ よいゆめを。」

騒いでいる子どもたちの心を静めてくれる本です。

ぞうのボタン

うえののりこ作 冨山房 1975年

字のない絵本です。
字のない絵本はお話会では読みにくい?いえいえ、そんなことはありません。絵が十分に語っています。だから、子どもたちは自分の言葉でお話を語ります。読み手は、子どもたちの言葉にうなずきながら「あはは、あはは」と笑っていればいいのです。

ぞうのお腹にボタンが四つついています。ボタンをはずすと、中から馬が出てきました。なあんだ、馬がぞうの着ぐるみを着てたのか。ところが、その馬のお腹にもボタンが四つ。ボタンをはずすと、中からライオンが出てきました。なあんだ、ライオンが馬の着ぐるみ着てたのかあ。ところが・・・・どんどん小型の動物になっていって、とうとうねずみが出てきました。あら、ネズミのお腹にもボタンが四つ。さて、何が出てくると思いますか?

かいじゅうたちのいるところ

モーリス・センダック作 神宮輝夫訳 冨山房 1975年

古典中の古典。センダックの代表作です。

マックスは、いたずらをして大暴れ。おかあさんに夕ごはん抜きで寝室にほうりこまれます。すると、寝室ににょきりにょきりと木が生えだして、森になり、マックスは船にのって航海に出ます。
「一週間過ぎ、二週間過ぎ、ひと月、ふた月、日がたって、一年と一日航海すると、かいじゅうたちのいるところ」
リズミカルな訳文に、声に出して読むととても心地がいいです。かいじゅうと過ごすマックスの様子が、文字なしで三ページにわたって描かれます。それが迫力満点なのです。

行きて帰りし物語です。

とらっく とらっく とらっく

渡辺茂男・山本忠敬 福音館書店 1966年

山本忠敬さんの乗り物絵本は、小さい男の子をひきつけて離しません。なかでも、渡辺・山本コンビの『しょうぼうじどうしゃじぷた』と『とらっくとらっくとらっく』は、ドラマ性が高く、夢中になってはいりこみます。
一台のトラックが、高速道路を走り、山の向こうの目的地に着くまでのほぼ一日間の行程が描かれます。途中で出会う働く車たち。道路標識。見るべきものが的確に描かれています。

擬人化されているわけではないのに、子どもは自分がトラックになったような気持ちで聞きます。白バイに追いかけられるあたりからはぐっと集中が高まり、夜になって山道をくねりながら登る場面は しーんとして、みんなのがんばれの声が聞こえてきそうなほどです。

あるとき高校生に読みました。子どもたちと同じような聞きかたをしていました。そして、ひとこと「白バイがかっこよかった」。

初めての乗り物絵本としては、山本忠敬さんの『ぶーぶーじどうしゃ』がおすすめ。再版された『とっきゅうでんしゃあつまれ!』は、今ではもう見られなくなった列車ばかりですが、電車の魅力が満ちあふれていて、子どもたちは大好きです。どちらも福音館書店刊。