「3 低学年から」カテゴリーアーカイブ

つくえはつくえ

五味太郎 偕成社 2018年

主人公は男の子。
机の上が山のようになっていて、「せまいきがする」といったら、お父さんが、「きがするんじゃない。せまいのだ。ひろいつくえをつくってやろう!」といって、大工道具を出してきて、ひろーい机を作ってくれました。見開き2ページ分の広さです。男の子が左のページの上の方にちょこんといて「ちょっとひろすぎ」といっています。
そこへ、友だちが、ひとり、ふたりとやって来て、机の上で遊びだします。野球、なわとび、スケートボード・・・ページをめくるたびにどんどん子どもが増えていきます。ラジコン、カラオケ、トランプ、そのうち、絵でいっぱいになって、「もうもじもはいらなくなってきました」という文字を探さなくてはなりません。とうとう、「あ、あ、あ」「おちたようなきがする」「きがするんじゃない おちたのだ」

そこでお父さんは、広すぎない狭すぎない机を作ってくれました。

ちょうどいい机、わたしも欲しいなあと思いながら読みました。

雨、あめ

ピーター・スピア 評論社 1984年

雨が降りだしたので、姉弟はレインコートを着て大きな傘をさして、散歩に出かけます。雨の日は見慣れたものがいつもと違った顔を見せます。それはとても美しい顔です。

ハチの巣箱をのぞき、洗濯物の下を通り、土の道を歩き、電線にとまっている鳥たちを見上げます。雨樋から落ちてくる雨を手で受け、傘で受け、傘を逆さにして受けます。くもの巣にかかった雨粒。自動車の下で雨宿りする猫。

ずぶ濡れになって家に飛びこみ、お風呂に入って美味しいおやつ。室内での遊びや夕食や食後のテレビ。そのあいだにも外では雨が降っています。寝室の窓から見る夜の雨。

翌日はすっかり晴れて、さわやかな一日が始まりました。

この本には字がありません。だから、絵の隅々まで心ゆくまで楽しめます。

ちょうちょのためにドアをあけよう

ルース・クラウス文/モーリス・センダック絵/木坂涼訳 岩波書店 2018年

『かいじゅうたちのいるところ』『まどのそとのそのまたむこう』などでおなじみのモーリス・センダックは、ルース・クラウスとのあいだに『あなはほるものおっこちるとこ』などの共著があります。この『ちょうちょのためにドアをあけよう』も、それらと同じナンセンス絵本、詩のような絵本です。小さな本なので、グループへの読み聞かせは難しいですが、こっそり楽しむのにちょうどよいてのひらサイズです。

「おおごえでうたううたを ひとつくらい おぼえておくといいよ ぎゃーって さけびたくなる ひの ために」とか「ワニとすれちがうときは まずそうな かおを するといいよ」とか「どうしても ねむりたくないときは ふねに のりこめー!っていってから ベッドにはいると ねむれるよ」とか、笑える深~い人生のアドヴァイスが続きます。

「おかあさんとおとうさんをつくるのは あかちゃん もしあかちゃんがうまれなければ ふたりはどっちも ただのひと」なんてすてきな視点でしょ。
最後のページにはこうあります。

「ものがたりの いちばんいいおわりかたは 「おうじさまとおひめさまは ずっとしあわせにくらしましたとさ。ねずみたちも いっしょにね」

ごきげんななめのてんとうむし

エリック=カール作/もりひさし訳 偕成社 1980年

夜、ホタルがお月さまの明かりで踊っていました。朝五時、お日さまがのぼってきました。左から機嫌のよいテントウムシが、右からご機嫌ななめのテントウムシが飛んできました。ご機嫌ななめのテントウムシは、けんかをふっかけます。でもあまり自信がないので、「おまえじゃ小さすぎるな」と意地を張って、もっと大きな敵を探しに飛んでいきます。すると、蜂、クワガタ、カマキリ、・・・と、どんどん大きない相手に出会います。

各ページの上には、テントウムシが他の生きものと出会った時間を示す時計が書かれています。文章の文字は、相手が大きくなるにしたがってどんどん大きくなります。何だか迫力があります。

とうとう最後に、クジラに出会います。テントウムシは45分かかってくじらのしっぽまで行き着きます。すると、しっぽが・・・!

エリック・カールといえば『はらぺこあおむし』が有名ですね。『ごきげんななめのてんとうむし』も同じようにカラフルな、仕掛けのある楽しい絵本です。

バスていよいしょ

重松彌佐作/西村繁男絵 童心社 2017年

小学生のしんごくんは、お隣の大邸宅の前にあるバス停を自分の家の前に持っていこうと引っ張ります。コンクリートの重しがあるので重くてなかなか動きません。そこへ「えっさ、えっさ」と駕籠屋さんがやって来ます。事情を聞いて駕籠屋さんたちは笑っていってしまいました。でも、なぜ駕籠屋さん?
その後からきたのは浪人者。お姫様。なぜか江戸時代とこんがらがっています。しまいに大名行列が来て、おとのさまは、なぜしんんごくんがバス停を移動させようとしているのかを聞くと、「よかろう」と、家来たちに命じて、バス停を動かしてくれました。

しんごくんの理由は何だったでしょう。これは夏の風物詩のはなしです。

いちにち

ハイディ・ゴーネル えくにかおり訳 PRCO出版局 1992年

女の子のなんでもない一日が描かれます。

早起きして、服を着て、朝ごはんをたっぷり食べて・・・。色画用紙を切り抜いてはったような絵で、くっきりとした絵です。よくある日常ですが、バスで学校へ行ったり、ヴァイオリンの授業があったり、お昼休みは給食ではなくてベンチでパンを食べたりと、文化の違いが感じられます。家に帰ってからは友だちとバスケットやかくれんぼで遊び、夜には犬のえさをやり、夜ご飯の後はテレビを見たり本を読んだり。宿題をして日記を書いて寝る。

きちんとした日常は、平和だからすごすことができる。

ゲームの時間がないのがいいなあ。

ウメ・モモ・サクラ

赤木かん子作/藤井英美写真/新樹社 2016年

科学絵本です。わたしたちは、ふつう、梅の実と桃の実とサクランボの区別はつきますね。でも、葉っぱだけ並べてみて、どれがどれか分かりますか?冬になって葉っぱも落ちて裸になった木を見て、どれがどれか言い当てられますか?

どこがどう違うのか、花のつき方やおしべめしべのつき方まで、写真でわかりやすく説明してくれています。

ところで、この3種は、みな同じバラ目バラ科の木です。へえ、バラなんだと思われるかもしれません。じゃあ、うちの庭に咲いているバラとどこが同じなんでしょうって、調べてみたくなりませんか?

身近なところに知らないことがいっぱいあります。知るのはおもしろいです。

ゆきのうえのあしあと

ウォン・ハーバート・イー作/福本友美子訳/ひさかたチャイルド 2008年

雪が降り積もり、女の子がそりすべりをしているところからページが始まります。大きな雪だるまも作っています。ひとりきりなのですが、それでも雪遊びの楽しさが満載です。
女の子は雪の上に足跡を見つけます。誰の足跡だろうと、あとをつけて行きます。足跡はどこまでもどこまでも続きます。いろんな動物がいますが、どれの足跡でもありません。また雪が降りだし、寒くなって帰ろうと思っていると、足跡はお家に向かって続いています!さて、だれの足跡だったでしょう。
 
幼児からでも楽しめるかもしれませんが、オチがちょっと分かりづらいです。

ねむるまえにクマは

フィリップ・C・ステッド文/エリン・E・ステッド絵/青山南訳/光村教育図書 2012年

「冬がちかづいてきて、クマはねむくなってきました。」と、物語は始まります。丸太にこしかけたクマは、ほんとうに眠そうです。でも、冬眠に入る前に、みんなに話したいことがありました。それで、友だちを次つぎと呼びとめます。ねずみ、かも、かえる、でもみんな冬支度に大忙しで、クマの話なんて聞いていられません。もぐらなんて、もう冬眠していました。雪が降りはじめ、クマはあきらめてあなにもぐって眠ってしまいました。

何か月かして春になりました。クマはみんなを起こして回りました。そしてみんなを集めて話をしようと思いました。みんな楽しみに待っています。が、思いだせない…

『エイモスさんがかぜをひくと』と同じ作者のゆったり温かな絵本です。

だんだんやまのそりすべり

あまんきみこ作/西村繁男絵/福音館書店 2002年

いずみちゃんは友だちとみんなで、だんだん山にそりすべりに行きます。でもこわくてすべれない。みんなが、「いっちゃーん」って呼んでも、ひとり山の上で待っています。すると、山の反対のほうからも、「いっちゃーん」と呼ぶ声がします。見ると、そばに、やっぱりこわくてすべれない狐の男の子がいました。一郎という名前だからいっちゃんです。
 
ふたりのいっちゃんは、勇気を出して一緒に滑ってみることにします。

真っ白な画面にたくさんのそりが思い思いにすべっているのが見えます。人間も動物もいっしょになってすべっている様子が楽しいです。

雪が降ると、かならずお話会で読みます。