「4 中学年から」カテゴリーアーカイブ

リスとお月さま

セバスティアン・メッシェンモーザ 松永美穂訳 コンセル 2007年

ある朝、リスがびっくりして目をさましました。お月さまが落ちてきたからです。
リスは、月どろぼうと間違われて牢屋に入れられてはたいへんと、お月さまを木の枝から突き落としました。すると、お月さまは、下で寝ていたハリネズミの背中にささって取れなくなってしまいました。
そこへやぎがやって来て、お月さまを角で突きさしました。すると、お月さまが角にささって取れなくなりました。やぎは角を振り回しているうちに、木に角が刺さって身動きできなくなりました。

動けなくなったやぎとハリネズミの表情がなんとも言えず笑えます。何度も出てくるモノトーンの牢屋の場面は、そのたび爆笑してしまいます。

読み手には、はじめから、「月」は実は「チーズ」であることが分かっているのですが、最後まで読むと、「? やっぱり月だったのかしら?」と思わせるオチで、想像の楽しさを思い切り味わえる本です。

子どもたちは、絵の細部まで読んで大喜びします。でも、一番受けたのはおとなの聞き手でした!

きみの家にも牛がいる

小森香折文 中川洋典絵 リブロポート 2005年

親子四人が、食卓で朝食をとっています。さあ、この絵の中に、牛でできている
ものを見つけてください。牛乳、チーズ、バターはもちろん、おかあさんのペンダントは牛の顔だし、クッションは牛柄、玄関マットには「COW」って書いてあるし・・・。

つぎのページから答え合わせが始ますのですが、牛乳からとれる食品については4ページで終わりです。あとは、屠殺場、食肉市場を経て、肉牛が焼き肉になるまでが描かれます。パック詰めの肉が、もとは生きていた牛だということを、きちんと教えてくれる本です。

さらに、牛の皮、骨、爪、・・・牛の体のあらゆる部分が加工されて人間の使うものになっています。最後に再び初めの台所。さあ、あらためて牛探しをすると、あるわあるわ。

「人間は、牛の命をもらっている。そして牛の命を生かすのも、人間」これが作者のメッセージです。

妖怪―身近にいるあやしいもの―

小松和彦著 野村たかあき絵 2013年 グラフィック社

出ました出ました、妖怪たち!子どもの大好きな妖怪です! 

子泣き爺、雪女、木魂、河童、小豆洗い、塗り壁・・・日本に古くからいる妖怪がずらり、あらわれる場所と特徴が説明してあります。もちろん迫力ある絵姿も。

著者の小松和彦さんは、国際日本文化研究センターの所長を務めている文化人類学者で、妖怪の専門家です。だから、妖怪の説明も科学的(?)。

妖怪が出るのは、人があまり行かない、薄暗くってよく見通せないところ。そうした場所は半分は人間の世界だけれど、半分は妖怪の世界でもあるのです。夜道、山小屋、空き家、ふだん使わない座敷や納戸は、要注意です。人も動物も物も、年をとると化けることができるようになる、妖怪になるのですって。

ところで、鬼は、妖怪の中でも特別古い妖怪だそうです。妖怪のご先祖様。いまのような角をはやして虎皮のふんどしをするようになったのは、平安時代になってからだそうです。

それから、河童って、川に棲んでいると思うでしょ。たしかに、そうなんだけれど、秋に稲刈りが終わると、山へ帰るのだそうです。山に帰った河童は、山童(やまわろ)になるそうです。

などなど、豆知識も満載の楽しい「ほんとにいるんですか?絵図鑑」の1冊目。2冊目は「幽霊」です。こちらもおすすめです。ちょっと怖いけど(笑)

太陽へとぶ矢

ジェラルド・マクダーモット作・神宮輝夫訳 ほるぷ出版 1975年

副題に「インディアンにつたわるおはなし」とあります。

むすめが太陽の放ついのちの矢を受けて身ごもり、男の子を生みます。男の子は、「父なし子」といじめられ、父親をさがしに旅に出ます。トウモロコシづくりも、壺作りも教えてくれません。矢づくりの男は男の子を矢に変えて太陽にむかって放ちます。
ようやく父親に対面しますが、父親は、自分の息子である証拠を見せてもらおうといって、男の子にライオンの部屋、蛇の部屋、蜂の部屋、稲妻の部屋を通りぬけるよう命じます。

オレンジと黒を基調にしたカラフルな絵は、躍動感と力強さにあふれています。子どもたちは、しーんと聞き入ります。とくに男の子の心にしみいるようです。

ものぐさトミー

ベーン・デュボア文絵/松岡享子訳/岩波書店刊 1977年

トミー・ナマケンボという名前からして、子どもたちは喜びます。そのトミーが電気仕掛けの家に住んでいて、自分で何もしないでも寝間着から抜け出してお風呂にすべりこみ、お風呂がからだを洗ってくれる、となると、「いいなあ」とうらやましがります。
ところが、ある晩嵐のせいで停電してしまうのです。そのあたりから爆笑につぐ爆笑で、私も笑いながら読んでいます。
絵は大きくはないのですが、教室の後ろの子どもにもよく見えます。

せかいのひとびと

ピーター・スピア作/松川真弓訳/ 評論社刊 1982年

地球上の人々がどんなに違っているか、興味と好奇心に駆られて細かく詳しく楽しく見てしまいます。

みんな同じだったらどんなにつまらないか。うしろから2番目の見開きページに、灰色の町が描かれます。さいごのページをめくると、この町のなんと雑多で美しいことでしょう。

グループへの読み聞かせには向きませんが、ブックトークや本の紹介にはよく使います。