急行「北極号」

急行「北極号」

クリス・ヴァン・オールズバーグ作/村上春樹訳/あすなろ書房 2003年

ダークブラウンが基調の落ち着いた幻想的な絵。読み進めるあいだじゅう、静かな音が流れています。

クリスマスイブの晩、「ぼく」は、ベッドの中でサンタのそりの鈴の音が聞こえるのをじっと待っていました。友達は、サンタなんていないといっていたけれど、「ぼく」は信じて待っていました。

真夜中に聞こえて来たのは、しゅうっという汽車の蒸気の音でした。それは、北極点に向かう、急行「北極号」でした。車掌に引っぱり上げられて、「ぼく」は北極号に乗りこみました。車中は、「ぼく」と同じような、パジャマやナイトガウン姿の子どもたちでいっぱいでした。みんなでクリスマス・キャロルを歌ったり、雪のように真っ白なヌガーがまんなかに入ったキャンディを食べたり、とろりと濃くて香ばしいココアを飲んだりしているあいだに、北極号は、北へ進みます。

暗い森を抜け、高い山を越え、遥かに街の明かりが見えて来ました。そこが北極点でした。
何百というこびとたちがサンタの手伝いをしていました。
サンタが登場して、最初のプレゼントを「ぼく」がもらう場面は圧巻です。

帰りの車中、プレゼントをなくした「ぼく」と周りの子どもたちの表情、描き方がすばらしい。

さて、サンタのプレゼントはどうなったでしょうか?

「ぼくはすっかりおとなになってしまったけれど、鈴の音はまだ耳に届く。心から信じていれば、その音はちゃんと聞こえるんだよ」

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