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ネコが見た”きせき”

マイケル・フォアマン作/せなあいこ訳 評論社 2001年

イエスキリストの誕生の物語は、古来絵画で表され、降誕劇として演じられてきました。絵本にも、たくさんの作品があります。

この『ネコが見た”きせき”』は、題名のとおり、ねこの目で描かれたキリストの誕生です。

その夜、外では雪が降っていて星が驚くほど明るく光っていたと、ネコはいいます。ネコは、牛やヤギといっしょに納屋の中にいて、ねずみを取ろうと考えていました。そこへ、いきなりとびらが開いて、雪まみれの人間がふたりとロバが入って来ます。赤ちゃんが生まれ、羊飼いたちがやって来て、ラクダに乗ったりっぱな人間が三人もやって来て、ねずみたちもぞろぞろ出て来て、みなで赤ちゃんを見つめます。

翌日、男の人と女の人は赤ちゃんをつれて出て行きました。その夜以来、ネコはねずみをいっぴきも取っていません。だれかと争うのが、すっかりいやになったからだと、ネコはいいます。

マリアやヨセフという名まえは出てきません。ただのネコに過ぎないのに、キリストの愛の心を手に入れた、奇跡の夜の物語です。

静かなクリスマスにぴったりの絵です。

みらいのえんそく

ジョン・ヘア作/椎名かおる文 あすなろ書房 2019年

ジョン・ヘアは、アメリカのイラストレーター。これは、彼の最初の絵本です。
 
学校の遠足で月に着陸するところから話は始まります。絵を描くのに夢中で一人取り
残された男の子。こういう子って、どこにでもいますね(笑)取り残されたけれど、諦めて絵でも描こうと腰を落ち着けます。そこへ、目がひとつの宇宙人が5人、恐る恐る近づいてきます。宇宙人たちは、好奇心いっぱい。
 
男の子は、宇宙人たちにクレヨンを貸してって、宇宙人たちは大喜びで月の岩に落書きを始めます。
 
とにかく絵がうまい。宇宙服を着ているのに、何を考えているのか、微妙な表情までわかるのです。

そらはあおくて

シャーロット・ゾロトウ文/なかがわちひろ訳/松浦さやか絵 あすなろ書房 2018年

女の子が、お母さんの子どもの頃のアルバムを見ています。服もお店も家の中にある物も、お母さんが子どもの頃は、今とずいぶん違っていることに気が付きます。する
とお母さんがいいます。
「そんなことないわ。大切な事は少しも変わっていない。空は青くて、草は緑。雪は白
くて冷たくて、お日さまはまぶしく暖かい。今とおんなじだったのよ」
夜になるとお母さんがベッドで寝かしつけてくれるのも、今と同じだとお母さんはいい
ます。

もっと古いアルバムを開くと、おばあさんの子どもの頃の写真がありました。女の子
は、今とはずいぶん違うと思いましたが、お母さんは、
「そんなことないわ。大切な事は少しも変わっていない。空は青くて、草は緑。雪は白
くて冷たくて、お日さまはまぶしく暖かい。今とおんなじだったのよ」といいます。

曾祖母のアルバムも開いてみます。やはり、たいせつなことは変わらないと、お母さ
んは説明します。そして、女の子が大きくなったら、わが子に同じことを説明してあげ
てねというのです。

ソロトウの「終わりになるものは何もない」という思想に心が揺すぶられます。

うどんのうーやん

岡田よしたか作 ブロンズ新社 2012年

主人公は、きつねうどん。どんぶりばちから威勢よくのびている二本のうどんが手になって、お箸もつかめるし、腕組みもできます。
 
うどん屋にうどんの出前の電話がきます。ダイヤル式の黒電話!
 
「うーやん でまえや。たのむでー」
「ほな いってきますう」

人手不足なので、うどんのうーやんは、自分でお客さんの家に行かなければなりません。威勢よく走りだすと、後ろから、おあげとお箸が追いかけます。

途中で出会ったやせねこに、うどんを食べさせてやり、半分に減ったうどん。困ったうーやんは、お客の家に向かう道で会った者たちと仲間になって、どんぶりに入れていきます。そうめん、めざし、うめぼし、とうふ、たこやき、ミニトマト、コロッケ、エビフライ。川をわたり、山を越え、河内音頭を歌いながら進みます。

名付けて、にぎやかうどん!

大阪弁の文章なのですが、関西人でなくても、なりきって読めばきっと楽しいと思います。

あかちゃんがやってきた

角野栄子作/はたこうしろう絵 福音館書店 2009年

1998年に月刊「こどものとも」として発行された絵本のハードカバー版です。
 
お母さんが、ケイくんにささやきます。「あかちゃんがうまれるの」。
 
お母さんのおなかが少しずつ大きくなるにつれて、ケイくんは、期待したり、しっとしたり。おかあさんは、そんなケイくんの気持ちを大事に、大事にして、おなかの中の赤ちゃんとコミュニケーションを取らせます。
 
弟が生まれると想定して、ケイくんは、何をして遊ぶか考えます。楽しみで仕方がありません。
 
お母さんが入院して、ケイくんは、お父さんといっしょに病院に行きます。赤ちゃんとご対面です。ベッドには、男の子と女の子。ふたごです。
 
「ちっちゃいなあ。ぼく おにいちゃんになったんだ。」

思わず「おめでとう」っていいたくなるようなおしゃれでかわいい絵本です。

サン・サン・サンタひみつきち

かこさとし作 偕成社 1986年

「かこさとし七色のおはなしえほん」シリーズの10冊目です。

あとがきに、「たった一日で地球のすみずみの各家庭を、いっせいに訪れることができる不思議なサンタの謎と、その秘密の全部を、すっかり明らかにしたのが、この本です。」とあります。
 
サンタクロースの秘密を知りたいと思っている子どもはたくさんいるでしょう。子どもたちの質問にうまく答えられないとき、この絵本はうってつけです。
 
子どもたちには、サンタクロースの存在を疑いもしない幼い時代をできるだけ長く、幸せに過ごさせてやりたいと思います。また、地球上には、サンタクロースの存在を知らず飢えと病気で苦しんでいる子どもたちがたくさんいます。その子たちにもこの本を贈ることができたらどんなにいいかと思います。
 
ところで、サンタの秘密基地は、どこにあると思いますか?

いったでしょ

五味太郎作 偕成社 2003年

幼児からと書きましたが、小学生でも十分楽しめます。むしろ小学生のほうがこのユーモアは分かるかもしれません。
 
子馬?とお母さん馬。馬?ろばかな?人間?ではないしなあ。と、いつものように正体不明の登場人物です。

子馬(にしておきましょう)は、お母さんの後から歩いて行きます。
道に穴があります。お母さんが「おちますよ」と警告します。つぎの見開きページで、子馬は穴に落ちます。「おちた!」 するとお母さんが、「いったでしょ」
 
この2パターンが繰り返されます。「ぶつかりますよ」「つまづきますよ」・・・
 
最後は階段です。「落ちますよって言って」「とびますよ」 そして、子馬は飛びます!「いったでしょ」

すてきな親子です。

いそげ!きゅうきゅうしゃ

竹下文子作/鈴木まもる絵 偕成社 2017年

幼児からと書きましたが、小学生でも十分楽しめる、力のある絵本です。
 
消防署で出番を待つ救急車、出動する救急車。けが人や病人をどのようにして運ぶのかを、クリアで力強い絵と簡潔な文章で、きちんと説明していきます。表現の誠実さが、救急車への信頼を呼び起こすように思います。

けがや急病でうろたえているとき、救急車も隊員さんも、どれほど頼もしく感じられることでしょう。

でも、救急車では運べないような遠方の急病人は、どうすればいいでしょう。大丈夫、ドクターヘリの出動です。ヘリの内部で隊員に励まされる病人の様子、眼下の景色、遥かに見える病院のヘリポート。大人でも、「かっこいい!」って声をあげてしまいます。

何人もの人たちの連携によって、わたしたちは助けられているのです。

最後のページには、救急車の運転席の細かな絵。見ている子どもの目がきら~んと光りました。

パンプキン

ケン・ロビンズ写真と文/千葉茂樹訳 BL出版 2007年

枯草色の広大な畑に転がるオレンジ色の大きなカボチャたち。色も大きさも、日本のカボチャのイメージとはずいぶん違います。とってもダイナミックです。ここは、アメリカ合衆国の畑です。

ノンフィクションの写真絵本です。カボチャの種まきから始まって、芽が出てつるが伸びて、花が咲いて子房がふくらんできてりっぱなカボチャになります。掌サイズのものからものすごく大きいものまで。子どもたちは目を丸くして見つめます。

そのカボチャの頭を切って、中をくりぬいて、目や鼻や口を切り抜きます。畑にならぶお化けカボチャのさまざまな表情に、子どもたちは、○○ちゃんに似てるとか、××ちゃんやとか、おもしろがって見ています。
けれども、夜になって、カボチャの中にろうそくがともされると、一転「こわ~い!」

日が暮れた家の前にともされるお化けカボチャ。ハロウィーンの行列の中にうかび上がるカボチャのランタン。カボチャは、ささやかで楽しいちょっと恐いお祭りの主役です。

もみじのてがみ

きくちちき作 小峰書店 2018年

「てがみだよ
てがみだよ
もみじの
てがみだよ」
 
つぐみがかえでの紅葉を一枚口にくわえて森を飛んできます。ドングリをかじっていたねずみが、その紅葉を受けとって、もっとたくさんの紅葉をさがしに行きます。でも見つけたのは赤いきのこ。松ぼっくりをかじっていたりすが、それを見て、いっしょに紅葉をさがしに行きます。でも、見つけたのは、赤い椿。そこでヒヨドリもいっしょにさがしに行きます。

一羽と二匹は、深緑と灰色の森の中を、赤い物をさがしてどんどん進んでいきます。すると、次つぎに赤い秋の贈り物を発見するのです。そして、とうとう最後に、一面に散り敷いたかえでの葉。森がぱっと明るくなりました。おもわず、おお~っ!と声が上がります。