さいとうしのぶ作 KADOKAWA 2022年
今日からひとりで寝ると宣言をしたぼく。でも、問題は、おしっこです。真夜中におしっこがしたくなりました。
ぼくは、どうやってこの問題を解決するのでしょうか。子どもにとって、永遠の課題かもしれませんね。あるある感がいっぱいの共感できるストーリーです。
ところどころのページに隠れている小さなお化けを見つけるのも楽しいです。
さいとうしのぶ作 KADOKAWA 2022年
今日からひとりで寝ると宣言をしたぼく。でも、問題は、おしっこです。真夜中におしっこがしたくなりました。
ぼくは、どうやってこの問題を解決するのでしょうか。子どもにとって、永遠の課題かもしれませんね。あるある感がいっぱいの共感できるストーリーです。
ところどころのページに隠れている小さなお化けを見つけるのも楽しいです。
佐野洋子作・絵 ポプラ社 2022年
おにいさんは青いリボンのついた帽子、わたしは赤い花のついた帽子を持っています。
幼い兄妹は、でかけるとき、いつも帽子をかぶります。
トンボとりに行くときも、動物園に行くときも、「おかあさん、ぼうし、ぼうし」といって、かぶります。
古くなって少しよごれていますが、羊の噛み跡があったり、デパートで迷子になっても帽子のおかげで見つかったりと、日常のささやかな経験とともになくてはならない帽子です。
ところが、わたしは電車の窓から帽子を飛ばしてしまったのです。
お父さんは、「とんでいったのが、おまえでなくてよかったよ」といい、お母さんは、アイスクリームを買ってくれましたが、わたしは悲しくて大声で泣き続けます。
帽子をなくした次の日、お父さんは、兄妹に新しい帽子を買って来ました。
おにいさんは、すぐにその帽子をかぶりましたが、わたしはかぶることができません。わたしの帽子のようではなかったからです。
幼い子どもにとって、「自分のもの」がどのようにしてほんとうの自分のものになるのかが、よく分かります。
両親の子どもへの対応がとてもあたたかく、信頼しうる親というもののあり方も、よく分かります。
心優しいストーリーと文章と絵がマッチした傑作です。
1876年刊『わたしのぼうし』の新装版です。
たな作 パイ・インターナショナル 2021年
しかけ絵本です。
左ページに、おいしい予感で期待にあふれた男の子が、温かなタッチで描かれます。
そして右ページには、ふたをしたおべんとう箱、茶碗蒸しのふた、リボンをかけた四角い缶、なべのふた、ふたをした重箱・・・
そのページを上に開くと、ぎっしり詰まっためっちゃおいしそうな・・・!
父親と母親、祖父母もさりげなく登場しますが、それぞれに重要な役割を持っています。
やがて男の子は、ホットケーキミックスの箱を見つけます。
ここからおいしいよかんが・・・
ところが、箱の中はからっぽです。男の子は考えます。そして、とってもいいことを思いつきます。
最後に、台所からいい匂いが漂って来て、おいしい予感が!
男の子とお母さんが走って行くと、お父さんがホットケーキを作っていました。
ごちそうさま!
ジーン・ジオン文 マーガレット・ブロイ・グレアム絵 まさきるりこ訳 あすなろ書房 2005年
『どろんこハリー』のふたりが贈る詩のような絵本です。
落ちてくる物、降ってくる物といったら何を思い浮かべますか?
はなびらが、テーブルの上に音もなく落ちてきます。
あけ放たれたドアからあたたかないい匂いの風が吹いてくるのが感じられます。
公園の噴水の水が落ちてきます。水の音、鳥のさえずり、子どもたちの歓声が聞こえるようです。
りんごが木から落ちてきます。日差しの中でりんごを集める子どもたちの息遣いが聞こえるようです。
季節は移り、夏の海辺、木の葉の散る公園、雪遊び。雨の日。夕闇、夜。
落ちてくる物、降ってくるものに注目すると、日常の中に自然を見つけることができます。
最後は、朝、お父さんがジミーを抱きあげて、空中にぽーんと放り上げます。
ジミーは落ちる?
いいえ、お父さんがしっかり受け止めます。
ドラマチックなストーリーはありませんが、楽しく、心がしずまっていく絵本です。
ミシェル・ヌードセン作 ケビン・ホークス絵 福本友美子訳 岩崎書店 2007年
まずはりっぱな図書館に感動しました(笑)
こんなにたくさんの本が、高い棚の上までぎっしりあって、大人も子どもも、たくさんの人たちがゆったりと読書を楽しんでいる光景は、本好きの読者にはたまりません。絵もとても暖かいです。
その図書館に、のっそりと大きなライオンがやって来ます。
ライオンは、まるで人間の子どものように、当たり前にやって来て、くつろぎます。おはなしの時間が気にいったようです。すぐに、子どもたちの人気者になりました。
館長のメリーウェザーさんのお手伝いもします。
ところが、ちょっとした誤解がもとで、ライオンがやって来なくなります。
ライオンのいないおはなし会や児童書コーナーの子どもたちの寂しげな不安そうな表情。メリウェザーさんの遠い目。
ライオンがまたやって来たときのみんなの喜び。いきいきとした表情がすばらしいです。
なかのひろたか作 福音館書店 2022年
こどものとも(年中向き)430号。
ぞうくんのさんぽシリーズは、子どもたちに定評があります。
1冊目の『ぞうくんのさんぽ』は1977年発行です。
2冊目の『ぞうくんのあめふりさんぽ』は2006年だから、30年近く開いていますね。きっとシリーズ化は考えておられなかったのでしょう。でも子どもたちは喜んだと思います。
つづいて2010年『ぞうくんのおおかぜさんぽ』。
2019年の『かめくんのさんぽ』。
そして、昨年2021年末にこの『ぞうくんのおおゆきさんぽ』が出ました。まだ雑誌ですが、きっと絵本になるでしょう。
ぞうくんが散歩に出かけます。
やっぱり、かばくんに会います。
つぎにやっぱりわにくんに会って、最後にかめくんに会います。
4匹はやっぱり「うわー!」な目にあいます。
そして・・・
みんな ごきげん
きょうは おおゆき
この予定調和がなんともいえず心地よい安心感を与えてくれます。
いとうひろし/講談社 2021年
対象を幼児からとしましたが、大人も楽しめます。
同じ作者の『おさるのまいにち』に出てくるあのうみがめのおじいさんの話です。
おさるたちのおだやかな毎日のなかで、うみがめのおじいさんが遥か彼方からやって来るのは、大事件です。
おじいさんは、旅のとちゅうでであったことをおさるたちに話してくれます。
そのストーリーを、おじいさんの視点で書いてあります。
おじいさんは、大きな船にぶつかるときもあるし、ぶつからないときもあります。
うつらうつら波間を漂っていると、そんなことはどうでもよくなってきます。
「ここがどこなのか。
いまがいつなのか。
じぶんがなんなのか。」
おじいさんにはどうでもいいことに思えるのです。
そうやって海とひとつになっていくおじいさん。
そんなふうに生きて老いて行きたいと思ってしまいます。
エリック・カール作 もりひさし訳/偕成社 1986年
モニカがベッドに行こうとすると、お月さまがとっても近くに見えました。
お月さまと遊びたくなったモニカは、パパに、お月さまをとってとたのみます。
パパは、長い長いはしごを持って来ますが届きません。
そこで、はしごを高い高い山にかつぎあげて登って行きます。
パパはお月さまに届きましたが、お月さまがあんまり大きすぎて、持って降りることができません。
さて、そこで、パパはどうやってモニカにお月さまを取ってあげたでしょうか?
はしごの長さや山の高さ、月の大きさを描くために、エリックカールは、本の形をはみ出します。紙を継ぎ足して広げ、ページの使い方が自由自在です。幼児が絵を描くときと同じ自由さがあります。
月を持って来るというファンタジーですが、月の満ち欠けをちゃんと教えてくれます。
父親が、当たり前のように子どもの願いをかなえてやるすがたに、温かな愛情を感じます。
藤田智監修/ひさかたチャイルド 2007年
副題は「そだててみよう やさいの きれはし」。しぜんにタッチシリーズの写真絵本です。
にんじん、じゃがいも、ごぼう、ほうれんそう、キャベツ、等々、子どもたちがよく見る野菜が集合。
やさいたちは、みんな生きているのです。命が宿っている。ふだんはそのことに気が付きませんが、野菜が生きていることが分かる方法があります。
料理のあとの切れ端を水に入れておくといいのです。
大根やにんじんは、葉っぱのほうを上にして深皿に入れます。ホウレンソウやこまつなは、根っこのほうを下にしてコップに入れます。
どちらも畑に植わっていたときと上下が同じです。すると、根が出て、葉っぱがのびて、花が咲きます。
にんじんの葉っぱの美しいこと!
キャベツの芯から葉っぱがどんどん増える様子は、造形美に驚きます。
大根の花のかれんなこと!
根っこと芽が出たジャガイモを土に植えれば、新しいジャガイモが生まれます。
簡単にお家で実験できて、命について実感できます。
デヴィッド・エズラ・シュタイン作 ふしみみさを訳/光村教育出版 2018年
赤ちゃんカンガルーのジョーイは、初めてママのおなかのふくろから外をのぞきました。そして、「ママ、おそとをピョンピョンしたいよ」とせがみます。
ピョンピョンと2回はねると何かが飛んでいます。
「きみ、だあれ?」とジョーイが聞くと、それは、「ハチだよ」と答えました。そのとたん、ジョーイは「ママー、ポケット」と、あわててママのポケットに飛び込みました。でも、安心すると、すぐにまた、外へ出たくなるジョーイ。
今度は、ピョンピョンピョンを三回はねて、また誰かに会います。
「きみ、だあれ?」「ウサギだよ」で、また「ママー、ポケット!」
幼い子は《出かけて行っては安心できる所に帰って来る》を繰り返して外の世界を自分のものにして行くのですね。それがとても愛らしく、描かれています。
ジョーイを黙って見守るママの視線も素敵です。
少しずつ遠くはねていく様子が、遠近法で描かれていて、幼い子にもよくわかります。
最後に出会ったのはだれでしょう?