昔話の発端句(ほったんく)

昔話は一般的に、冒頭で時代・場所・人物が不特定に語られます。 「 むかし、あるところに、おじいさんとおばあさんがいました 」 のように。伝説が本当にあったことを語ろうとして時代・場所・人物を特定するのに比べると、とても抽象的ですね。いかにも昔話って感じさせます。昔話の語法的に言えば固定性があらわれているのですね。

そのなかでも 「 むかし 」 の部分、つまり時代を表す部分は、独立した文や句としてとくに印象的に語られることが多いです。

○ なんとむかしがあったげな ( 中国地方 )
○ とんとむかしがあったげな ( 中部地方など )
○ ざっとむかし ( 東北 ・ 中部 ・ 四国地方 )
○ むかしむかしさる昔、猿が三匹尾が四つ ( 丹波地方 )
○ あったことか、なかったことか ( コーカサス )
○ むかしむかし、まだ人の願い事がかなったころ ( ドイツ )
などなど。

これらを昔話の発端の句、発端句とよびます。これから昔話が始まるよという合図です。 「 ファンタジーの始まり始まり 」 というわけです。
本を読む場合は表紙をめくることで物語は始まりますが、耳で聞くおはなしは、この発端句がおはなしの始まりになるのです。

発端句はほかにもこんなのがあります。

○ ありしかなかりしか知らねども、あったこととして聞かねばならぬぞよ( 鹿児島 )

この話は伝承の話であって、創作でもないし直接体験でもないよ、ということを示しています。真偽のほどは責任をもたないということですね。

発端句は、伝承されたものであり、語り手によって一定していたり、土地によって決まっていたりします。