十二支のはじまり

民間信仰の干支(えと)のうち、動物に当てはめられた、子・丑・寅・卯・辰・巳・午・未・申・酉・戌・亥の十二支(じゅうにし)の起源を説明する昔話のひとつの話型です。

そもそも、十二支は、動物とは無関係です。中国の殷の時代の甲骨文字に書かれていて、日付を記録するためのものだったそうです。殷だから、紀元前十七世紀~紀元前十一世紀。つまり今から3000年以上前にはあったということになります。
 
それが、日付だけでなく、年月や時刻や方位もあらわすようになりました。つまり、天体や地理などの科学の基本的な記録方法だったのです。文明のアジアの中心だった中国で、古代から近代まで、長い間、使われてきたのですから、日本や周辺の文化圏に影響を及ぼさないはずはありません。タイやベトナム、モンゴルといったアジアはもちろんのこと、東ヨーロッパやロシアにも十二支はあるそうです。

さて、その十二支に動物が当てられるようになりました。なぜなのか、理由ははっきりしていません。覚えやすいからだとか、バビロニアの天文学と関係があるとか、諸説あるようです。とにかく紀元前200年にはすでに動物と組み合わせられていたということです。
 
どの国も十二の動物に大きな違いはありません。が、ちょっとだけ違うところもあります。「丑」はベトナムでは水牛、「寅」はモンゴルではヒョウ、「午」はタイではヤギです。「亥」は本来はブタの意味の漢字ですが、日本ではイノシシが当てられていますね。
 
そうして、なぜ、ねずみ、牛、虎、うさぎ、・・・の順番なのかという、お話が生まれ、語り伝えられていったのです。

さて、日本の昔話に話題をもどします。
「十二支のはじまり」は青森から鹿児島まで広く分布しています。
 
まず動物たちを招集するのは、神さま、お釈迦さまなど。
期日は、一月一日になってる話が案外少なくて、ふつうの日であることの方が多いです。
 
牛は足が遅いので早く出掛け、ねずみは牛の背中に乗って行き、牛より先に門に入る。ねこは、日にちを忘れ、ねずみに嘘を教えられたため一日遅れ、神さまに「顔を洗って出直して来い」といわれた。だから、ねこはいつも前足で顔を洗っているし、ねずみを見ると怒って追いかける。というのが、よくある話です。
動物競争譚であり、動物由来譚です。
幼い子ども向けのお話で、子どもに十二支を覚えさせるために語られたのでしょうか?
 
伝承によってバリエーションがあって、奈良には、イノシシが寝坊して、朝ごはんを食べながら一生懸命走っていったので、口が長くなったという話があります。こちら→

あなたの地域にはどんな伝承が残っているでしょうか。