呪宝譚(じゅほうたん)

呪宝というのは、魔法のアイテムのことです。
主人公がなんらかの理由で呪宝を得、それによって幸せになる話。また、さらに、欲深な人物がそれをまねようとして、逆に困った結果になる話。

国際的には、ATU560~649に「魔法の品(Magic Objects)」としてまとめられています。
どんな呪宝があるかあげてみましょう。
入手しやすい類話も上げておきます。ストーリーは話型ごとに違うので、どんな話か読んでみてください。呪宝をどんなふうに手に入れるのか、どんなふうに使うのか、結末はどうなるのか。おもしろいですよ。

560 魔法の指輪
願いがなんでも叶う指輪です。
朝鮮半島に「犬とねこと玉(こちら⇒)」がありますが、じつは世界じゅうにあって、呪宝譚の代表的なものです。
日本の話では、話型名「犬と猫と指輪」。「猿の一文銭(こちら⇒)」などがあります。

561 アラジン
魔法のランプをこすると魔神が現れて願いを叶えてくれる。
『アラビアンナイト』の「アラジンと魔法のランプ」は有名です。

562 青い火の中の精霊
地下の宝物蔵の中にある火打石は、こすると精霊が現れて願いを叶えてくれる。
グリム童話KHM116「青いあかり」

563 テーブルとロバとこん棒
ひとりでにごちそうが出てくるテーブル、黄金を出すロバ、持ち主が止めろとさけぶまで人をたたき続けるこん棒。
グリム童話KHM36「テーブルよ食卓の準備・金貨を出すろば・こん棒よ袋から出ろ」」
「北風に会いに行った男の子」(おはなしのろうそく13:東京子ども図書館)

564 魔法で物を出す巾着
いくらでも食べ物の出てくる袋。こん棒を持った男たちがぞろぞろ出てくる袋。
読める話は見つけられませんでした。

565 魔法のひき臼
欲しいものを何でも出すひき臼。
「海の水はなぜからい」(太陽の東月の西:アスビョルンセンとモー/岩波書店)
「塩吹き臼」(日本昔話百選:稲田浩二・稲田和子編/三省堂)
グリム童話KHM103「おいしいおかゆ」もこの話型です。

566 3つの魔法の品と不思議な果物
お金のなくならないさいふ、どこへでも行けるコート(または帽子)、兵隊を出す(または力をさずけてくれる)笛。
不思議な果物:食べると頭に角が生える、または鼻が伸びる、またはロバに変身する、など。
この話型は古く、ヨーロッパ中世の文献に記録されているそうです。
「さいふと笛とぼうし(こちら⇒)」
グリム童話KHM122「キャベツろば」

567 魔法の鳥の心臓
魔法の鳥の心臓を食べると黄金をはきだす力を得る。
人間をロバに変身させるハーブ。
グリム童話KHM60「二人兄弟」・KHM122「キャベツろば」

569 背嚢と帽子と角笛
食べ物を出すテーブルクロス(または、ナプキン、テーブル、ひき臼)、軍隊を出す背嚢(武器、ステッキ、サーベル、こん棒)、武器を出す帽子、壁を壊す角笛、非常に離れた距離を移動できる7里靴(まほうのじゅうたん)、死人を生き返らせるバイオリン(フルート)
魔法の品物のオンパレードですね。
グリム童話KHM54「背嚢と帽子と角笛」

570 穴ウサギ番
うさぎを集めることのできる笛。
「三つの五月のもも」(こちら⇒
「ハーメルンの笛吹き男」

571 みんなくっつけ
魔法の品(黄金の動物、乗り物など)を触った人や、その人にさわった人が次々とくっつく。
「おひめさまとはらぺここびと」(こちら⇒
グリム童話KHM64「金のがちょう」

572 吠える犬の頭、打つ斧、等
吠える(歌う、さけぶ)頭、自動で打つ斧、歌う植物。
読める話は見つかりませんでした。

575 王子の翼
空を飛ぶ道具(折りたたみの翼、翼のある機械仕掛けの馬など)
『パンチャタントラ』『デカメロン』にあるようです。

576 魔法のナイフ
未詳

577 王の課題
自動で打つ斧、自動で掘るシャベル、自動で演奏するバイオリン。
読める話は見つかりませんでした。

580 女にもてる
女にもてる力を得て、それを使って魔法の品物を手に入れる。
食べ物が現れるテーブルクロス、飲み物を出すオンドリ、何もない所から服を作るはさみ。
読める話は見つかりませんでした。

585 錘と杼と縫い針
錘は娘の所へ導き、杼は魔法の道を作り、縫い針はみすぼらしい部屋を美しい部屋に変える。
グリム童話KHM188「紡錘と杼と針」

590 不実な母
超自然の強さを与えてくれる品(腕輪、ベルト、剣、シャツ、など)
グリム童話KHM121「怖いものなしの王子」

591 泥棒鍋
隣人たちの家に行って食べ物やお金を盗んでくる鍋。
「ちょっとでかけるよ(こちら⇒)」

592 茨の中のダンス
けっして的を外さない鉄砲、人を踊らせるバイオリン(または、フルート)、力、など。
グリム童話KHM110「いばらの中のユダヤ人」

593 フィデヴァヴ
魔法の石。石を炉の灰の中に入れると、炉の火かき棒をつかんだものはみなくっつき、意味不明のことを言い続ける。
「ビデバオ」(子どもと昔話22:小澤昔ばなし研究所)

594 魔法の馬勒
どんな馬でも手なずける馬勒、なんでもこなごなにする針、ねらったものは必ず当たる鉄砲。
読める話は見つかりませんでした。

610 病気を治す果物
病気を治す果物。水上よりも速く陸を走る船、魔法の鳥の羽、など。
グリム童話KHM165「怪鳥グライフ」

611 デーモンたちの贈り物
魔法の塗り薬(または、病気を治す水)、魔法の剣(または、めがね、双眼鏡、フルート、笛、骨、武器、など)
読める話は見つかりませんでした。

612 三枚の蛇の葉
人を生き返らせるハーブ(草、木の葉)。
グリム童話KHM16「三枚の蛇の葉」

613 ふたりの旅人
立ち聞きした彼岸者の話から、自分の視力を回復し、王(王女)の病気を治し、干ばつを終わらせる。
特に魔法の品物が出てくるわけではありません。
グリム童話KHM107「ふたりの旅職人」

昔話では、彼岸者との関係を贈り物で表します。呪宝は贈り物のひとつです。
国際話型カタログ(ATU)のどれに属するか分からないのですが、日本の昔話には「聴き耳」「宝下駄」「おおかみの眉毛」「隠れ蓑笠」「鼻高扇」「尻鳴りべら」などの呪宝があります。どれも、竜王や神さまや天狗などからの贈り物です。
主人公は贈り物を上手く使って幸せになります。これは、願望でしょうか、希望でしょうか。
贈り物については昔話の語法も見てください(こちら⇒)。

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