ペローどうわしゅう
『韻文による物語』と『過ぎし昔の物語ならびに教訓』をあわせて、ペロー童話集と呼びます。
『韻文による物語』1695年
それまでに発表されていた3篇に序文を付けて出版されました。
韻文なので、詩の形になっていています。
「グリゼリディス」「ろばの皮」「愚かな願いごと」
作者は、シャルル・ペロー。
『過ぎし昔の物語ならびに教訓』1697年
散文による8篇です。
「眠れる森の美女」「赤ずきんちゃん」「青ひげ」「ねこ先生または長靴をはいた猫」「仙女たち」「サンドリヨンまたは小さなガラスの靴」「まき毛のリケ」「親指小僧」
作者は、謎です。この本にはシャルル・ペローの息子の名前が署名されているからです。父ペローの作なのか、息子との合作なのか、息子が書いたのか、分りません。
あわせて11話ですが、これらは、もともとは口承文芸であったものを、ペローが再話したものです。たとえば「ろばの皮」はすでにいったん書承になっていたものからの再話、「赤ずきんちゃん」はペローが初めて書きとめた類話です。
「赤ずきんちゃん」のストーリーは、主人公が狼に食べられるところで終わっています。グリム童話の「赤ずきん」との違いをどう説明したらいいのでしょう。
このように、ペローのものは古い形(中世。日本でいえば江戸時代の初め)なので、昔話を研究する材料にもなります。
シャルル・ペローは、1628年生まれのフランス文学者。1703年没。
父親は法廷弁護士でしたが、ペローは建築総監だった兄のもとで気楽に働きながら、余暇に文章を書いていたそうです。
ルイ14世の大蔵大臣コルベールに気に入られて、宮廷で働くことになります。
当時、ベルサイユの宮廷では、廷臣たちがおたがいに故郷の昔話を語って楽しむ習慣があったそうで、それが出版のきっかけになったようです。
物語のあとに付け加えられている「教訓」は、時代を表していておもしろいです。
完訳は、岩波文庫で読むことができます。