長い名の子供

夫婦に子どもができたけれど、名前が短かったので早死にした。それで長い名前を付けた。ところが、その子が井戸(や川)に落ちて、みんなで名前を呼んでいるうちにおぼれて死んでしまった。というストーリーの話は、全国に伝わっていて、「長い名の子供」と呼ばれる話型です。
 
この話型は、笑い話の中の大話(おおばなし)に分類されています。大話というのは、ほら話のことで、頭に柿の木が生えたとか、ふんどしにはさんだ鴨に運ばれて大仏殿まで飛んでいったとか、あり得ないようなうそ話のことです。
 
本格的な昔話では、主人公がこんなにあっけなく死んで終わるということはありませんね。この話は、聞き手が主人公と同化する前に、つまり長い名前をおもしろがっているうちに、死んじゃった、でおしまいです。
 
この話の面白さは、長い名前を唱えるところにあります。例えばこんな言葉が使われます。

「イッチョウギリカチョウギリカ」
「トクトクリンボウソウリンボウ」
「ジュゲムジュゲム」
「ゴコウノスリキレ」
「ヘエトコヘエトコヘエガーノコ」などなど

これらの言葉がつながって長い名前になります。もともと早(はや)物語という、早口言葉で唱える口伝えの文芸があって、それと関りがあるそうですが、早物語については詳しいことはよくわからないそうです。また、井戸に落ちた子どもの名を呼ぶのに大あわてでしょうから、語りかたとしては、早口言葉のように唱えるのが、この話の面白さを活かすことになります。
 
笑い話なので、おまけの話として、子どもの死を気にかけないでからっと語ればいいでしょう。笑い話だと分かっているから、子どもも本気にとることはないし、ちょっとブラックなユーモア感覚をはぐくむことも大切かと思います。
 
≪日本の昔話≫のページに「へーとこへーとこ」を載せていますので、ぜひ語ってみてください。