あひるのピンのぼうけん

マージョリー・フラック文/クルト・ヴィーゼ絵/まさきるりこ訳 瑞雲社 1994年

ピンは「とても美しい子どものあひる」です。揚子江に浮かぶ船に、67羽の家族たちと暮らしています。船の名前は「かしこい目」といって、目があるので、まるで生き物のように描かれています。

船の主人は、毎朝、あひるたちを陸地に放し、夕方になると、あひるたちを集めて船にもどらせます。あひるたちは一列になって、船と陸の間に渡した板の橋をわたって行き来しますが、列の最後のアヒルは、主人からおしりに鞭を食らうのです。ある日ピンはもどるのが遅くなって、鞭を食らうのがいやで、草むらにもぐりこんでかくれました。
かしこい目は、ピンを岸に残したまま遠ざかっていきました。

そこから、ひとりぼっちになったピンのぼうけんが始まります。

川に暮らす人々の生活の様子が、素朴だけれど動きのある絵と、ピンの視線で描かれます。ピンは人間につかまってしまいますが、逃がしてくれたのも人間の男の子です。ピンは奇跡のようにかしこい目を発見します。

瀬田貞二のいう「行きて帰りし物語」です。ピンはおしりを鞭で打たれましたが、無事家に帰ることができて、めでたし、めでたしです。

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