しろいゆき あかるいゆき

しろいゆき あかるいゆき

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アルビン・トレッセルト文 ロジャー・デュボアザン絵 えくにかおり訳 ブックローン出版 1995年 

冬、雪が降り始めると、人びとは空を見上げてこれからの季節に向けて準備を始めます。
ゆうびんやさん、おまわりさん、おまわりさんのおくさん、そして、子どもたち。
雪が少しずつつもって家も道路も田畑も雪で覆われます。
雪の中での人々の生活が静かに描かれます。

雪が解け始め、春が来ます。その年最初のこまどりが、子どもたちに、春を告げます。
詩のような静かな文章に、素朴な絵がぴったりです。

ねずみのおいしゃさま

なかがわまさふみ作 やまわきゆりこ絵 福音館書店 1957年

《こどものとも傑作集》の一冊です。

ねずみのお医者さまの家に、りすさんから「子どもが熱を出した」と電話がかかります。
ねずみのお医者さまは、雪の中をスクーターで急ぎます。けれども、雪はどんどん降り積もり、お医者さんは、雪だるまのようになってしまいました。スクーターも動かなくなりました。
そのとき、冬眠中のカエル一家の家を見つけました。

すいぶん古い本なので、電話機やスクーター、往診など、今の子どもたちの知らないものが出てきますが、絵とストーリーが十分にカバーしてくれます。

たからもの

たからもの

ユリ・シュルヴィッツ作 安藤紀子訳 偕成社 2006年

ヨーロッパでよく知られている昔話の類話を絵本にしたものです。イギリスでは「スワファムの行商人」が有名です。
話型的には「宝は自分の家にあり」という話群。

主人公はアイザックという男。貧しくて、「おなかをすかせたままとこにつくことも、めずらしくはなかった。」
作者の伝記を読めば、この一文にも実感がこもっていることが分かります。

ただの夢だと思っていたけれども、3度も同じ夢を見ると、「ほんとうかもしれない」と、宮殿まで長い旅をします。
昔話らしく、同じ言葉をくりかえして、一直線に出かけ、一直線に帰ってきます。

宝物を手に入れたアイザックは、感謝の気持ちを表すために、〈いのりのいえ〉を建てます。その壁の片隅に書いた言葉、それがこの絵本のテーマです。
「ちかくにあるものをみつけるために、とおくまでたびをしなければならないこともある」

いました

いました

五味太郎作 ブロンズ新社 2013年

カラフルなオタマジャクシのようなフライパンのようななにかが、進んでいきます。するとよく似た何かがこちらに向かってやって来ます。
通り過ぎます。
今度は、大きいのと小さいのがやって来ました。大きいのとぶつかりました。
という感じで、進んでいく主人公(?)が、他者といろんな形で出会います。
それを、「きました」「ぶつかりました」「よけました」と、ひとことで表します。
それがリズムがあって楽しいのです。
最後は、ずっと見開いていた眼がねむります。
ほっと安心の結末です。

年齢を選びません。

まよなかのおしっこ

まよなかのおしっこ

さいとうしのぶ作 KADOKAWA 2022年

今日からひとりで寝ると宣言をしたぼく。でも、問題は、おしっこです。真夜中におしっこがしたくなりました。
ぼくは、どうやってこの問題を解決するのでしょうか。子どもにとって、永遠の課題かもしれませんね。あるある感がいっぱいの共感できるストーリーです。
ところどころのページに隠れている小さなお化けを見つけるのも楽しいです。

た

田島征三作 佼成出版社 2022年

書名に驚きます。が、作者名を見て、なんとなく納得してしまいます。

見開きに1語ずつ「た」の付く単語が力強い絵とともに展開されます。
よくある言葉遊びではなく、それぞれの単語は関係性を持っていて、物語が形作られます。

「たがやす たねまく」
⇒「たちまち!!めがでた」
⇒「たいよう」
⇒「たくましくそだつ」

このあたりから、「た」は「田」のことだと気がつきます。

⇒「たいへん」
からは、稲作の大変さが描かれ、収穫の喜びへと収束していきます。

みらいのえんそく かざんのしまへ

みらいのえんそく かざんのしまへ

ジョン・ヘア作 椎名かおる文 あすなろ書房 2022年 

『みらいのえんそく』の続編です。前回は月へ遠足に行きましたが、今回は火山島へ行きます。

吹きだす間欠泉や溶岩は、子どもだけでなく大人も心うきうきさせるものがありますが、当然、遠くから見ることしかできません。けれどのこの未来の世界では、近づくことができるし、触ることもできるのです。それだけでもうれしくなります。

今回も、ひとりだけ別行動をして置いてきぼりになる子どもがいます。この子が主人公。そこへ、溶岩の親子が現れて・・・

ストーリーのパターンは前回と同じですが、前回は絵画、今回は粘土細工(陶芸)で、異生物と心を通わせます。テーマはより強調されています。

子どもたちはみな防護マスクをかぶっているのに、表情が見えるという描き方は前回と同じく脱帽です。

わたしのぼうし

わたしのぼうし

佐野洋子作・絵 ポプラ社 2022年

おにいさんは青いリボンのついた帽子、わたしは赤い花のついた帽子を持っています。
幼い兄妹は、でかけるとき、いつも帽子をかぶります。
トンボとりに行くときも、動物園に行くときも、「おかあさん、ぼうし、ぼうし」といって、かぶります。
古くなって少しよごれていますが、羊の噛み跡があったり、デパートで迷子になっても帽子のおかげで見つかったりと、日常のささやかな経験とともになくてはならない帽子です。
ところが、わたしは電車の窓から帽子を飛ばしてしまったのです。
お父さんは、「とんでいったのが、おまえでなくてよかったよ」といい、お母さんは、アイスクリームを買ってくれましたが、わたしは悲しくて大声で泣き続けます。
帽子をなくした次の日、お父さんは、兄妹に新しい帽子を買って来ました。
おにいさんは、すぐにその帽子をかぶりましたが、わたしはかぶることができません。わたしの帽子のようではなかったからです。

幼い子どもにとって、「自分のもの」がどのようにしてほんとうの自分のものになるのかが、よく分かります。

両親の子どもへの対応がとてもあたたかく、信頼しうる親というもののあり方も、よく分かります。
心優しいストーリーと文章と絵がマッチした傑作です。

1876年刊『わたしのぼうし』の新装版です。 

もしぼくが本だったら

もしぼくが本だったら

ジョゼ・ジョルゼ・レトリア文 アンドレ・レトリア絵 宇野和美訳 アノニマ・スタジオ 2018年

もしあなたが本だったら、何を望みますか?

見開き2ページに、「もしぼくが本だったら」で始まる一文が書かれていて、黒い表紙の本が、地味だけれど想像豊かに描かれます。

「もしぼくが本だったら、つれて帰ってくれるよう、出会った人にたのむだろう」にはじまり、「『この本がわたしの人生を変えた』とだれかが言うのをきいてみたい」で終わります。
ぜんぶで28の文があります。この28の文に、本というものの本質や役割が集約されています。

自分はどれに共感するかなと考えて読むのも楽しいです。

ここからおいしいよかんがするよ

たな作 パイ・インターナショナル 2021年 

しかけ絵本です。
左ページに、おいしい予感で期待にあふれた男の子が、温かなタッチで描かれます。
そして右ページには、ふたをしたおべんとう箱、茶碗蒸しのふた、リボンをかけた四角い缶、なべのふた、ふたをした重箱・・・
そのページを上に開くと、ぎっしり詰まっためっちゃおいしそうな・・・!
父親と母親、祖父母もさりげなく登場しますが、それぞれに重要な役割を持っています。

やがて男の子は、ホットケーキミックスの箱を見つけます。
 ここからおいしいよかんが・・・
ところが、箱の中はからっぽです。男の子は考えます。そして、とってもいいことを思いつきます。

最後に、台所からいい匂いが漂って来て、おいしい予感が!
男の子とお母さんが走って行くと、お父さんがホットケーキを作っていました。

ごちそうさま!