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いのちのひろがり

中村桂子文/松岡達英絵/福音館書店 2017年 

たくさんのふしぎ傑作集(月刊たくさんのふしぎ2015年4月号)です。

わたしたちは様々な生き物に囲まれて暮らしています。
生きものたちはみな私たち人間の仲間です。どうしてそういえるのか、38億年前に生命が生まれてから今までの時空の旅が描かれます。
この旅は、「あなたはどこから来たのでしょう」ということばから始まります。
母親の卵と父親の精子が結びついて生まれた受精卵、これが最初の自分です。これは、たった一個の細胞です。それが、お母さんのお腹の中で成長して生まれてきます。
38億年前の生命も、一個の細胞でした。太古の海の中で生まれた細胞。それが長い年月かけて成長して、最初に生まれたのが、カイメン。砂粒くらいの大きさたったそうです。

5億年前、生きものたちは陸に上がる大冒険をしました。
まず、植物が。
森や野原が生まれると、動物も上陸しました。
昆虫の祖先であるカブトエビの仲間、ついでクモやサソリの祖先たち。やがて両生類、爬虫類、ほ乳類。
この5億年の間に、5回も大量の生きものが滅びたそうです。それでも、生き物は命をつないできました。

約600万年前に人類が誕生しました。
さまざまな人類がうまれたけれど、今生きているのはホモ・サピエンス一種類だけです。私たちですね。
ホモ・サピエンスは、20万年ほど前にアフリカで誕生しました。そこから旅に出て地球のあちこちで暮らすようになりました。私たちの故郷は、みなアフリカなのです。

自分も含めあらゆる生きものは、もとは同じ一個の細胞でした。みな38億年という気の遠くなるような時間を体の中に持っているというわけです。

バージニア・リー・バートン作『生命の歴史』とあわせて読むといいと思います。

さがす

長倉洋海著/アリス館 2020年 (高学年から)

作者の最新の写真絵本です。
作者は、子どものとき誰もがぶつかる難問「自分は何なのか」「何のために生きているのか」の答えを求めて人生の旅に出ます。

「出会った人たちは、かがやくばかりの笑顔をもっていた。
苦しみやかなしみを経験したあとに、生まれてきた笑顔。
負けそうになる自分を、はげます笑顔。
まわりの人の心を、あたたかくする笑顔。
そんなすごいものを、みんなも、自分も、もっている。」

そして、世界じゅうで出会った人々、特に子どもからヒントを得ます。
自分の幸せを見つけることが「生きる意味」かも知れないと。
たくさんの人に出会うことで、さがしていたものを手に入れたといいます。

大地と子どもの表情がすばらしい写真絵本です。

おきなわ島のこえ ヌチドゥ タカラ

丸木俊・丸木位里作 小峰書店 1984年

「ヌチドゥ タカラ」とは、「いのちこそたから」という意味です。
ゆたかな沖縄の自然の中でくらすつるちゃんとその家族が、戦争のために、その生活と命まで奪われて行きます。沖縄の人たちにとって、敵はアメリカだけではありませんでした。守ってくれるはずの日本兵こそが、人びとの命を奪ったのです。
戦争の悲惨さ、その現実を私たちに突きつける絵本です。重いけれど、受けとめなくてはなりません。今を生きる、そして、未来を生きる子どもたちのために。

ウミガメと少年

野坂昭如戦争童話集沖縄編 
野坂昭如文/黒田征太郎絵 講談社 2001年

野坂昭如が戦争をテーマに書いた子どものための物語『戦争童話集』は、中公文庫から出版されています。それに絵をつけて、一冊ずつの絵本にしたのが、黒田征太郎。この沖縄編は、続編です。
ウミガメは毎年、沖縄の浜にやってきて産卵します。ある年のこと、爆撃で家族とはぐれてしまった少年が、浜辺にたどり着き、ウミガメの産卵を見ます。少年は、このままでは、卵が爆撃でやられてしまうと考え、卵を自分の隠れている洞窟に、ひとつひとつ避難させます。毎日砂をかえて世話をするのです。
少年は、何日も何も食べていません。思わず、割れた卵をひとつ食べてしまいました。後は、次から次と卵を食べてしまいます。
アニメ化された作品ですが、絵本で自分のペースで読むことをお勧めします。

出発進行!里山トロッコ列車

かこさとし作 偕成社 2016年

作者晩年の絵本です。

トロッコ列車とは、車両の屋根や壁を取り払って、まわりの景色や風を楽しむ列車です。表紙の見開きに、日本地図が描いてあって、全国トロッコ列車運行状況図(2016年3月現在)とあります。北海道から九州まで、ぜんぶで18の路線があります。わたしはこの中で、黒部峡谷と釧路湿原の二つに乗りました。あなたは?・・・そんなふうに遊びたくなるのがかこさんの絵本の面白さです。

さて、この本は、千葉県房総半島を走る、小湊鉄道の里山トロッコ列車について書かれたものです。列車の仕組みの細かな図はもちろんのこと、沿線の地図は、ハイキングガイドのように丁寧です。列車好きの子どもにはたまらない魅力があります。コッペル社製蒸気機関車の設計図まであります。

しかも、空・山・大地が広々と描かれ、まるでトロッコ列車に乗って走っているような気になります。沿線の四季折々の動植物や、寺社、その由来、地層、各種トンネル、発電所、伝承の踊り、ゆかりの歴史上の人物、名物。

この絵本を持って、房総半島を歩いてみようと思いました。

はらぺこゾウのうんち

藤原幸一 写真・文 偕成社 2018年

南アジアの熱帯雨林にすむゾウ。巨大なからだにやさしい小さな目、黒々とした巨大なうんち!

動物好きの子どもは目が離せないでしょう。

森の木々も空も美しく、よくある自然や野生動物の写真絵本かと思ったら、じつは深いメッセージが込められていたのです。

地球温暖化のせいで、雨期になっても雨が降らず、ゾウの森は、ここ10年で9回も干ばつが起きています。

やせ衰えたゾウが、水をさがして歩きまわり、しまいには柵を越えて人間の土地に入りこみます。人びとは、ゾウを神さまと信じているので、お供え物としてお菓子や果物をゾウに与えるようになりました。

ゾウは、あまいにおいに引き寄せられて、とうとう、人間のゴミ捨て場を発見。ゴミ捨て場のそばのゾウのうんちには、レジ袋がいっぱいつまっていました。

地球温暖化自体が人間のもたらしたもの。自然とうまく着き合えない人間の罪を突き付けられました。

こんとん

夢枕獏文・松本大洋絵 偕成社 2019年

中国の思想書『荘子』に、混沌(こんとん)という帝の話があります。また、中国の古い神話に、混沌という名の怪物が登場します。それらをもとにかかれた絵本です。

こんとんは、目耳鼻口がなく、いつも空を見て笑っています。南海の帝と北海の帝が、こんとんのために目耳鼻口の七つの穴を開けてやります。そのとたん、こんとんは死んでしまうのです。
 

じぶんの 目で みる きく かぐ じぶんの 口で かたる
それは なんだか とてつもなく たいへんな ことだったんだろうね
と絵本の作者はいいます。そして、
 
こんとん こんとん きみのことが すきだよ
と。

さてさて、混沌は、カオスのこと。「混沌に目鼻を空ける」ということわざがあります。むりやり物事に道理を付けるという意味です。

こんとん、魅惑的な存在です。

ニットさん

たむらしげる作 イースト・プレス 2012年

ニットさんは、毛糸の編み物が得意なおばさんです。シャカシャカとどんどん編んで行きます。
まずはふわふわの椅子。のどがかわいたので、テーブルと、ティーポットと、カップ。風が吹いてきて寒くなったので、大きな家!
毛糸の玉と、毛糸のメリヤス編みは、写真を使ってあるので、リアリティがあって、おお~っと驚いてしまいます。
 
夜になると、三日月を編み、ベッドを編んでおやすみなさい。
よく見ると、地球も土星も、星たちも、みんな毛糸で編んであります。

ひよこのコンコンがとまらない

ポール・ガルドン作/福本友美子訳 ほるぷ出版 2007年

北欧の昔話です。めんどりのコッコさんが、ひよこのタッペンを連れて森に出かけます。おいしい種が落ちていないか探しに行ったのです。
コッコさんはタッペンに、大きい種は食べてはいけない、コンコン(せき)が出るからといいました。ところが、タッペンは、大きい種を飲みこんで、せきが止まらなくなりました。
 
コッコさんは、水をくみに泉へ行きますが、泉はコップを持ってこないと水をやらないといいます。
そこで、コッコさんは、かしの木にたのみましたが、かしの木は枝をゆすってくれなければ、コップをやらないといいます。
そこで・・・コッコさんは、木こりの息子、くつ屋、雌牛・・・と、必死で走ってたのみに行きます。連鎖譚です。

絵は、素朴であたたかいです。コッコさんは左から右へ走って行き、出会うものたちは、右にいて左を向いています。だから、連鎖譚の楽しさがわかります。

ももくりチョコレートのあそび

かこさとし作 農文協 1991年

「かこさとしあそびの大惑星」シリーズの7冊目。副題は「遊びのお菓子大列車」。

すみからすみまで、お菓子を使った遊びで埋め尽くされている本です。

紙の桃太郎の作り方、まめリンピックで豆とマッチ棒を使った遊びの遊び方、豆の数え歌、みつ豆やコーヒーやアイスクリームの作り方(ほんもの。食べられます)、ホットケーキとカステラの小咄、紙で膨らむおもちやのびる餅菓子の作り方、クイズのカステラの切り方・チョコの分け方、レモンの実験(紅茶レモン・牛乳レモン・お金レモン)、・・・・これは、ほんの一部です。とにかく、読んでみてください。

<レモンばなし> せんせい「レモンのじっけんはうまくできましたか?」せいと「はぁ、すっぱいでした。」

「パパはパパイヤ」
「おいしいのはドリヤン?」
「これスイカ、あまいか?」

「これはなんでしょう?」「かきのたねです?」「いいえケンカのタネです」と、さるとかにが話しています。