「4 中学年から」カテゴリーアーカイブ

きみの行く道

ドクター・スース作絵/いとうひろみ訳/河出書房新社 1999年

原作『Oh,the Places You’ll Go!』 は、1990年に発表され、世代を越えたミリオンセラーになったそうです。
たしかに、おとなが読んでも勇気が湧いてきます。

人生は旅です。広い未知の世界への旅です。頭の中には脳みそがぎっしりつまっているし、靴の中には足がぎっしり。行きたいところへ歩いていけばいい。
行きたい道が見つからなければ町を出ていきます。どんなところへ行っても、大丈夫。頭にはぎっしりの脳みそ、靴にはぎっしりの足。だから、大丈夫、トップに躍り出ます。
でも、人生にはスランプがあるわけで、どうにもならないところまで落っこちることもあります。その苦しみも、描かれます。

ドクター・スースが86歳のときの作品です。酸いも甘いもかみ分けた。

いのちのひろがり

中村桂子文/松岡達英絵/福音館書店 2017年 

たくさんのふしぎ傑作集(月刊たくさんのふしぎ2015年4月号)です。

わたしたちは様々な生き物に囲まれて暮らしています。
生きものたちはみな私たち人間の仲間です。どうしてそういえるのか、38億年前に生命が生まれてから今までの時空の旅が描かれます。
この旅は、「あなたはどこから来たのでしょう」ということばから始まります。
母親の卵と父親の精子が結びついて生まれた受精卵、これが最初の自分です。これは、たった一個の細胞です。それが、お母さんのお腹の中で成長して生まれてきます。
38億年前の生命も、一個の細胞でした。太古の海の中で生まれた細胞。それが長い年月かけて成長して、最初に生まれたのが、カイメン。砂粒くらいの大きさたったそうです。

5億年前、生きものたちは陸に上がる大冒険をしました。
まず、植物が。
森や野原が生まれると、動物も上陸しました。
昆虫の祖先であるカブトエビの仲間、ついでクモやサソリの祖先たち。やがて両生類、爬虫類、ほ乳類。
この5億年の間に、5回も大量の生きものが滅びたそうです。それでも、生き物は命をつないできました。

約600万年前に人類が誕生しました。
さまざまな人類がうまれたけれど、今生きているのはホモ・サピエンス一種類だけです。私たちですね。
ホモ・サピエンスは、20万年ほど前にアフリカで誕生しました。そこから旅に出て地球のあちこちで暮らすようになりました。私たちの故郷は、みなアフリカなのです。

自分も含めあらゆる生きものは、もとは同じ一個の細胞でした。みな38億年という気の遠くなるような時間を体の中に持っているというわけです。

バージニア・リー・バートン作『生命の歴史』とあわせて読むといいと思います。

おきなわ島のこえ ヌチドゥ タカラ

丸木俊・丸木位里作 小峰書店 1984年

「ヌチドゥ タカラ」とは、「いのちこそたから」という意味です。
ゆたかな沖縄の自然の中でくらすつるちゃんとその家族が、戦争のために、その生活と命まで奪われて行きます。沖縄の人たちにとって、敵はアメリカだけではありませんでした。守ってくれるはずの日本兵こそが、人びとの命を奪ったのです。
戦争の悲惨さ、その現実を私たちに突きつける絵本です。重いけれど、受けとめなくてはなりません。今を生きる、そして、未来を生きる子どもたちのために。

ウミガメと少年

野坂昭如戦争童話集沖縄編 
野坂昭如文/黒田征太郎絵 講談社 2001年

野坂昭如が戦争をテーマに書いた子どものための物語『戦争童話集』は、中公文庫から出版されています。それに絵をつけて、一冊ずつの絵本にしたのが、黒田征太郎。この沖縄編は、続編です。
ウミガメは毎年、沖縄の浜にやってきて産卵します。ある年のこと、爆撃で家族とはぐれてしまった少年が、浜辺にたどり着き、ウミガメの産卵を見ます。少年は、このままでは、卵が爆撃でやられてしまうと考え、卵を自分の隠れている洞窟に、ひとつひとつ避難させます。毎日砂をかえて世話をするのです。
少年は、何日も何も食べていません。思わず、割れた卵をひとつ食べてしまいました。後は、次から次と卵を食べてしまいます。
アニメ化された作品ですが、絵本で自分のペースで読むことをお勧めします。

出発進行!里山トロッコ列車

かこさとし作 偕成社 2016年

作者晩年の絵本です。

トロッコ列車とは、車両の屋根や壁を取り払って、まわりの景色や風を楽しむ列車です。表紙の見開きに、日本地図が描いてあって、全国トロッコ列車運行状況図(2016年3月現在)とあります。北海道から九州まで、ぜんぶで18の路線があります。わたしはこの中で、黒部峡谷と釧路湿原の二つに乗りました。あなたは?・・・そんなふうに遊びたくなるのがかこさんの絵本の面白さです。

さて、この本は、千葉県房総半島を走る、小湊鉄道の里山トロッコ列車について書かれたものです。列車の仕組みの細かな図はもちろんのこと、沿線の地図は、ハイキングガイドのように丁寧です。列車好きの子どもにはたまらない魅力があります。コッペル社製蒸気機関車の設計図まであります。

しかも、空・山・大地が広々と描かれ、まるでトロッコ列車に乗って走っているような気になります。沿線の四季折々の動植物や、寺社、その由来、地層、各種トンネル、発電所、伝承の踊り、ゆかりの歴史上の人物、名物。

この絵本を持って、房総半島を歩いてみようと思いました。

はらぺこゾウのうんち

藤原幸一 写真・文 偕成社 2018年

南アジアの熱帯雨林にすむゾウ。巨大なからだにやさしい小さな目、黒々とした巨大なうんち!

動物好きの子どもは目が離せないでしょう。

森の木々も空も美しく、よくある自然や野生動物の写真絵本かと思ったら、じつは深いメッセージが込められていたのです。

地球温暖化のせいで、雨期になっても雨が降らず、ゾウの森は、ここ10年で9回も干ばつが起きています。

やせ衰えたゾウが、水をさがして歩きまわり、しまいには柵を越えて人間の土地に入りこみます。人びとは、ゾウを神さまと信じているので、お供え物としてお菓子や果物をゾウに与えるようになりました。

ゾウは、あまいにおいに引き寄せられて、とうとう、人間のゴミ捨て場を発見。ゴミ捨て場のそばのゾウのうんちには、レジ袋がいっぱいつまっていました。

地球温暖化自体が人間のもたらしたもの。自然とうまく着き合えない人間の罪を突き付けられました。

ネコが見た”きせき”

マイケル・フォアマン作/せなあいこ訳 評論社 2001年

イエスキリストの誕生の物語は、古来絵画で表され、降誕劇として演じられてきました。絵本にも、たくさんの作品があります。

この『ネコが見た”きせき”』は、題名のとおり、ねこの目で描かれたキリストの誕生です。

その夜、外では雪が降っていて星が驚くほど明るく光っていたと、ネコはいいます。ネコは、牛やヤギといっしょに納屋の中にいて、ねずみを取ろうと考えていました。そこへ、いきなりとびらが開いて、雪まみれの人間がふたりとロバが入って来ます。赤ちゃんが生まれ、羊飼いたちがやって来て、ラクダに乗ったりっぱな人間が三人もやって来て、ねずみたちもぞろぞろ出て来て、みなで赤ちゃんを見つめます。

翌日、男の人と女の人は赤ちゃんをつれて出て行きました。その夜以来、ネコはねずみをいっぴきも取っていません。だれかと争うのが、すっかりいやになったからだと、ネコはいいます。

マリアやヨセフという名まえは出てきません。ただのネコに過ぎないのに、キリストの愛の心を手に入れた、奇跡の夜の物語です。

静かなクリスマスにぴったりの絵です。

まなぶ

長倉洋海 アリス館 2018年

写真家長倉洋海さんの写真絵本です。
 
題の通り、世界じゅうの子どもの学ぶ姿が映し出されます。キューバ、アフガニスタン、ミクロネシア、カンボジア、スリランカ、日本・・・。子どもたちの瞳の深さ、笑顔の明るさは、背景の景色が違ってもみな同じです。そして、その背景が子どもたちを見守り育てているのだということを、これらの写真は感じさせてくれます。子どもと、子どもの生きる場所への、作者の愛を感じるのです。

「自分の道を見つけるために、人はまなぶ。まわりのみんなとはちがう「自分だけの道」。ほかの人とぶつかったり、競争しなくてもいい、きみだけの道が、そのまなびの先にある」
作者のこの言葉は、子どもたちへ贈られたものですが、子どもたちの姿に浄化された大人にとっても、たいせつなものとして受けとめることができます。

ぼく・わたし

高畠那生 絵本館 2003年

見開きの右ページに「ぼく、べんきょうはとくいじゃないけれど」と、男の子がノートの上にひじをつき、スツールに片足上げてつまらなそうな顔で、遠くを見ています。ノートの横にはおそらく算数と国語と思われる教科書が開かれています。同じ机の上に、鉛筆が二本と消しゴムが直立しています。

左ページには、「かみひこうきはとくい。」。同じ部屋の中、同じ机の前で、男の子は笑顔で紙飛行機を飛ばしています。右ページでは気付かなかったくず入れが、左ページでは大きく描かれ、中に紙飛行機がふたつ、そばには四つ落ちています。飛んでいるのも置いてあるのも手に持っているのも、紙飛行機はあちこちの方向を向いています。鉛筆と消しゴムは倒れ、算数の教科書は閉じられています。

このようなページ構成で、「ぼくむしにさされるのはだいきらい。」=「でも、ちゅうしゃはがまんできる。」とか、「ぼく、ちょっときがよわい。」=「でも、こたえはしってるんだ」とか、人には不得手なものと得意なものがあって当然だと主張しています。

最後のページは、登場した子どもたちがみんないっしょにジェットコースターに乗っている場面です。

子どもの健やかな心の成長に欠かせないのは、自己肯定感。親子で読んでほしいなと思う本です。

いろいろいっぱい

ニコラ・デイビス文 エミリー・サットン絵 越智典子訳 ゴブリン書房 2017年

副題が「ちきゅうのさまざまないきもの」

科学絵本。術語は難しいですが、ひらがなが多用してあるので、興味のある子どもなら低学年でも読めます。

「ちきゅうにはなんしゅるいのいきものがいるとおもう?」との問いかけから始まります。「ひとつ」「ふたつ」「みっつ」と数えていって、「いっぱい!」
 
虫、花、象といった子どもの好きな物が描かれ、つぎには多種多様なきのこ。そして微生物。大きさの多様性を教えたあとは、棲家の多様性。砂漠、島。鳥の羽のすきま。それからつぎは、種類の多様性。見た目が違うのに種類は同じだったり、見た目がそっくりなのに違う種類だったり。
 
「すべての生きものが複雑にからみあってひとつの大きくて美しい模様を織りあげているようだ」という説明(主張)とこまやかな素朴な絵とがマッチしています。
 そして、人間がこの模様をこわしている、人間もこの模様がないと生きられないのに。 

同じ作者たちの『ちいさなちいさな  めにみえないびせいぶつのせかい』もおすすめです。