みるなのくら

福島県の昔話

話型名は「見るなの座敷」といいます。

見てはいけないのは、蔵であったり、座敷であったり、たんすであったりします。
わたしは、幼いころに読んだ絵本で、たんすの引き出しの中で田植えをしている風景が、ふしぎでたまらず、今でもはっきりと思いだします。

見てはいけない(禁止)といわれると、見てしまう(違反)のは人の常ですね。昔話でも、禁止―違反は、構造の上で重要な機能です。特に家の中に見てはいけない部屋があるモティーフを「開かずの間」といいます。
日本の昔話では、「あぶらとり」とこの「見るなの座敷」がこの形を持っています。
そして、「あぶらとり」では、違反することで災難から脱出できますが、「見るなの座敷」では、違反することで幸せを逃してしまいます。

ヨーロッパの昔話にも、開かずの間はあります。グリム童話の「マリアの子」は、見てはいけない部屋を見たために難しい課題を乗り越えなければなりませんが、そのおかげで最後は幸せになります。「青ひげ」も違反したおかげで危機から脱出することができます。
それと比べると、「見るなの座敷」は寂しい終わりかたをしますね。わびや寂(さび)に通じる日本独特の美意識の表れなのでしょうか。

「見るなの蔵」にはもうひとつのバージョンがあって、見なかった男は宝物をもらって帰り、それを知って出かけて行き見てしまった男は何ももらえなかったという話もあります。


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まゆ綱 灰綱

まゆづな はいづな

鹿児島県の昔話

話型名は「天道さん金の綱」
日本全国に類話はありますが、特に西日本に多いです。鬼婆など恐ろしいものからひたすら逃げる話で、逃竄譚(とうざんたん)といいます。⇒こちら

類話では、兄弟が天に上って終わるものが多いのですが、ここで紹介したお話は、天から地上にもどって来ます。そして、鬼に飲みこまれた両親も助かります。だから、ちょっとほっとします。
鬼は死にますが、自業自得です。

結末は、ススキの根が赤い由来譚になっていますね。

類話は、朝鮮半島や中国にもあります。⇒こちら
グリムの「おおかみと七匹の子やぎ」も類話です。


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かえるの人まね

かえるのひとまね

岩手県の昔話

話の中に季節は出てこないんだけれど、なんとなく春ののどかな風景が見えてきそうな話です。

かえると博労が話をするのは、昔話の一次元性。何の違和感もなくその世界を受け入れて聞いてしまいます。
かえるの鳴き声や、擬態語もかわいいですね。
かえるの目が後ろについているということも教えています。
だから、本来は幼い子に語られた話だと思います。
いまでは、博労とか伊勢参りとか、幼い子には背景が分からないので残念です。


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京のかえると大阪のかえる

きょうのかえるとおおさかのかえる

滋賀県の昔話

笑い話です。
もともとは、かえるの目が後ろについていることに注目して作られたのでしょう。
愚か話として分類できるのでしょうが、こんな愚かさは、だれにでもありますよね。自分のことはわからない。馬鹿にして笑うのはもったいないです。共感して笑いましょう。
二匹のかえるが、手をつないで立ち上がる様子は、想像するとかわいらしいです。


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きつねの茶釜

きつねのちゃがま

山形県の昔話

話型名は「文福茶釜」
青森から熊本まで、全国に類話があるそうです。

「ぶんぶく」というのは、茶釜の湯が沸く音の擬声語から来ているとのことです。

茶釜に化けるのは、きつねのこともタヌキのこともあります。⇒こちら

今回紹介した「きつねの茶釜」は、後半は笑い話ですが、前半は、きつねが恩返しをするというほっこりした話になっています。


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