たからげた

岡山県の昔話

呪宝譚です。こちら⇒《昔話雑学》

一本歯の下駄は、山伏や天狗が履いているイメージですね。最近、健康にいいと人気が出ているそうですが(笑)。
この話に出てくる下駄は,履いて転ぶとそのたびに小判が出てくるという不思議な力を持っています。ただし、転ぶたびに身長が縮みます。

最後のオチに出てくるゴンゾウムシは、ゾウムシの一種で、米くい虫とも呼ばれる害虫です。無農薬玄米を買うと、たまに入っています。

短い話ですが、ファンタジックでしかも深いメッセージがあります。

テキストは、『語りの森昔話集5ももたろう』に掲載しています。こちら⇒書籍案内

日常語の語りが聞けます。

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佐渡の白つばき

さどのしろつばき

新潟県の昔話

「夢の蜂」とか「夢買い長者」とよばれる昔話のひとつです。

昼寝中の男の鼻の穴から、昆虫が飛び出して、その昆虫がもどって来て鼻の穴に入ると目が覚める。そして、そばで見ていたもう一人の男に、夢を見たと話をします。その夢の中で、昆虫が宝のありかを教えたと話すのです。それを聞いた男は、その夢を売ってくれといって、自分が宝のありかを探しに行くという話。

古く『宇治拾遺物語』にあって、日本じゅうに広く伝わっています。いろんなバリエーションがあって、おもしろいです。

人間の霊魂が動物の姿になって、睡眠中の肉体から出て行くというのは、世界各地にみられる信仰だそうです。それで、世界じゅうに、この類話があります。

ATU1645A「宝の夢を買う」
王さまが木の下で寝ていると、動物が王さまの口から出て来て川を渡り、山のほら穴に入って行く。それを召使いが見ていて、王さまに告げる。王さまは、動物に宝のありかを教えてもらった夢を見たと話す。王さまは、山の中に大変な宝を発見する。というような話。

ヨーロッパでは、中世の早い時期に記録があるということです。

テキストは、『語りの森昔話集5ももたろう』に掲載しています。こちら⇒書籍案内

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お雪といちご

おゆきといちご

山梨県の昔話

まま母にいいつけられて雪の山へいちごをつみに行く娘。雪の中でこごえそうになったとき、おじいさんの家に導かれます。いろりを囲んで、十二の月の精たちが座っています。スロバキア民話の「十ニの月のおくりもの」を思い出しますね。

このお雪の話は、日本ではここでしか語られていないそうです。昭和11年刊の『続甲斐昔話集』所収です。山梨県の郷土史家土橋里木氏が聞き書きされました。この話を土橋氏に語った人は、もしかしたらヨーロッパの「十二の月のおくりもの」をどこかで聞くか読むかして、語りのレパートリーにしたのでしょうか。

情景描写が少なく、ストーリーは短いですが、きちっとした継子話(こちら⇒)になっています。そして、ヨーロッパの伝承では森の中のたき火ですが、ここでは、山の一軒家のいろりになっています。日本らしい換骨奪胎といえます。

ATU480「親切な少女と不親切な少女」。グリム童話の「ホレばあさん」の類話です。


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宝のひょうたん

たからのひょうたん

岩手県の昔話

話型名は「宝瓢(たからひさご)」。
ふしぎなひょうたんを手に入れて、福を授かる話。
呪宝譚のひとつです。呪宝譚についてはこちら⇒《昔話雑学》

おじいさんは、観音さまにお願いをして、ひょうたんを手に入れますが、類話によっては、ヒョウタンネズミからもらうという話もあるそうです。鼠浄土と混ざっているのですね。どちらも、ひょうたんから童子が出てきて望みをかなえてくれます。その点では竜宮童子と似ています。

ひょうたんから出て来たふたりの童子には、名前が付いています。おじいさんが,ひょうたんを抱きあげたらひょっこり飛び出して来たというのが、かわいらしいですね。

馬喰は、馬や牛を売り買いする商人です。子どもに語るときには、ちょっと説明をはさむといいかと思います。

低学年から高学年まで楽しめると思います。


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山神さま

やまがみさま

鹿児島県の昔話

話型名は「山神と童子」
子どもが山神に弁当を与えることによって福を得る話。

沖永良部島の話では、山神は三日間弁当を食べ、そのお礼をするから天竺の寺へ参れといいます。山のてっぺんではなくて天竺の寺です。仏教と関りがありそうです。
その道中、長者の娘の病気を治す方法、宿屋の三段花の二本が枯れた理由、渡し守の女が昇天できない理由をたずねて来てくれと頼まれます。課題が三つですね。
今回紹介した甑島の「山神さま」は課題が二つですが。

ここで思い出すのが、グリム童話KHM29「三本の金髪をもった悪魔」です。
そうなんです。「山神さま」はこの類話なのです。ずいぶん雰囲気が異なりますね。

ATU461「悪魔の三本のあごひげ」
類話は世界じゅうにあって、多くは、グリムのように、前半に予言のエピソードがあります。日本の話にはこのエピソードはありません。そのため、ドラマチックさに欠けるのですが、おかげで、話のテーマがくっきり見えてきますね。

日常語での語りが聞けます。

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