こんな顔

こんなかお

岩手県の昔話

恐い話ですね。でも、どこかで聞いたことありませんか?
わたしは中学校の英語の時間に、ラフカディオ・ハーン(小泉八雲)の「むじな」を読んだのが、この種の話を知った最初です。「むじな」をもとにした落語「のっぺらぼう」もおもしろいです。

昔話的には、世間話に分類されます。
「二度の威嚇」というグループに入るそうです。
なるほど、「むじな」では、一度目は見投げ娘、二度目は蕎麦屋と、二度怖い思いをしますね。妖怪に会って、めっちゃ怖い思いをして逃げ帰り、やっとホッとしたところで、また出てくるという恐怖。心理的な盲点をついています。
落語は、三度目に家に帰っておかみさんがのっぺらぼう。それが延々と続きます。

さてこの妖怪は、ここでは「口が耳までさけた男」ですが、のっぺらぼうのほかに、ひとつ目小僧、幽霊などがいるそうです。

ストーリーが単純なので、どんな状況設定にもはまりやすく、体験談や伝聞談として、広く分布しているようです。現代の民話にもないものか、ちょっと気をつけてさがしてみます。

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たにし息子

たにしむすこ

岩手県の昔話

話型名は「田螺長者」。たにしの姿で生まれた申し子が、人並み以上に働き、機知を働かせて美しい嫁を得、人間の姿となって長者として栄える話。全国によく似た話があります。
ここではたにしですが、ほかに、かたつむり、さざえ、なめくじなどがあります。『語りの森昔話集3しんぺいとうざ』には新潟県に伝わっている「かたつむり」を載せています。
動物ではなくて、小さな人間が生まれる話もあります。「一寸法師」がそうですね。『語りの森昔話集4おもちホイコラショ』の「小指たろう」はロシアの話です。グリム童話の「親指小僧」もそうですね。
小さく生まれた者が知恵と勇気で幸せをつかむというのは、いかにも昔話らしいです。

小さ子の誕生については《昔話雑学》へ⇒こちら

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とほう

新潟県の昔話

原題は「鼻たれ小僧」。話型名「竜宮童子」です。

竜宮からもらってくる小僧の名前は、ここでは「とほう」ですが、ほかに、「はぎわら」「よげない」「ひょうとく」「うんとく」「うん」などの名前があるそうです。その土地の言葉で何か意味がありそうですが、調べようがありません。

海や川に、花や薪を投げ込んで、亀や魚に竜宮に連れて行ってもらい、お土産をもらってくるという話は、だいたい三つの種類があるそうです。

ひとつは、この「竜宮童子」。子どもをもらってくる。これがいちばん分布が少なくて、現在、新潟,岩手、熊本に限られているようです。

ふたつ目は、「竜宮小槌」。呪宝をもらって帰り、幸せになって終わる。

三つ目は、「竜宮子犬」。富を生み出す子犬をもらって帰る。隣人または兄弟がうらやんで子犬を借りるが失敗して殺してしまう。主人公が子犬の亡骸を庭にうめると、木が生えて、富を落としてくれる。

三つとも設定がよく似た話ですが、結末が異なります。ラストが違うと、ずいぶん雰囲気も違いますし、テーマも変わってきますね。おもしろいです。

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娘のくりひろい

むすめのくりひろい

新潟の昔話

話型名「糠福米福」。全国で非常に多く語られている継子話です。「米福粟福」ともいいます。栗拾いではなく椎の実拾いだったり、援助者が旅のお坊さんではなくて、山姥、おばあさん、神仏、亡くなった母親の霊である鳥だったりします。
ところで、グリム童話「灰かぶり」に登場する白い鳥が、亡母の霊だったことを思い出してください。舞踏会に行く美しい衣装と靴を出してくれますね。お坊さんのくれた小箱も同じまほうです。灰かぶりは靴を残していきますが、ここでは下駄になっています。そっくりですね。
そうです、「糠福米福」は、世界的に見ると、ATU510a「シンデレラ」に属します。シンデレラは、世界的にもっとも広く分布しているといわれる継子話です。
継子話を、自分を支配する存在(母親)から迫害を受け、あるいは阻害され、自分にとって唯一の援助者の力を得て、幸せをつかむ話、と考えると、だれもに心当たりはあり、渦中にいるとき、大きな希望になるのではないかと思います。だから、普遍的に広がっているのではないかと思います。
内容的に、高学年向きでしょう。

 

テキストは、『語りの森昔話集5ももたろう』に掲載しています。こちら⇒書籍案内

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八ヶ岳と富士山の背比べ

やつがたけとふじさんのせいくらべ

山梨の昔話

日本各地に残る山の背くらべの伝説のひとつです。≪昔話雑学≫では、「山の背くらべ」の項で、柳田国男の論考からいくつかの伝説を紹介しました。この富士山と八ヶ岳の伝説は、それより少し後に記録されたものです。『口碑伝説集』は昭和十年の発行です。
音声は関西弁で語っていますが、土地のことばで富士山や八ヶ岳をながめながら語れば、きっと楽しいでしょうね。
 


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