五分次郎

ごぶじろう

山形県の昔話

話型名は「一寸法師」。
私たちがよく知っている「一寸法師」はお伽草子に書かれているストーリーがもとになっています。でも、口づたえの世界では、もっと多彩です。小さく生まれた子どもが冒険ののち、宝を手に入れたり結婚したりしてしあわせになるというストーリーですが、その名前は、「五分次郎」だったり、「豆助」「豆たろう」「豆一」「ちびたろう」などなど様々です。

山形県のこの「五分次郎」は、化け物退治をしてお屋敷のあととりになるという結末。ラストで体が大きくなるということはありません。小さいままで幸せになるのがいいなあと思います。
それから、子どもらしい好奇心で木の葉の船に乗ってみるところや、船が波に揺られてゆく情景が好きです。

類話は日本じゅうにたくさんありますが、実は世界じゅうにあるのです。
ATU700「親指小僧」。
身近に読めるものとしては、グリム童話にKHM37「親指小僧」があるし、ロシアの「小指たろう」は、『語りの森昔話集4おもちホイコラショ』に載せています。これはおはなしひろばで語りを聞けるので、ぜひどうぞ(こちら⇒)。


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わらしべ長者

わらしべちょうじゃ

広島県の昔話

わらしべ一本を、たまたま出会った人と次々に交換して、最後は幸せになる話。
この話の面白さは、「たまたま」にあります。そんなうまくいくはずがないと笑ってしまうような出会い。それも、奇跡というような大きな出会いではなく、小さな出会いです。昔話によくある状況の一致が次々と連鎖しています。
そして、その交換には、主人公の親切、というより無欲があります。
もともと、観音さまに出世を願ったはずですが、主人公は手に入れたものをあっさり手放します。もし途中で欲を出して、例えば布を売るとか馬を使って仕事をするとかしたとしたら、この連鎖は切れてしまいます。

どうにも生きていかれなくなったときに、主人公は観音さまに願をかけました。そして、お告げを信じ、自分の運命を信じて歩いて行った。
最後の屋敷の主人は、ひょっとしたら観音さまの化身ではなかったかと思ったりもします。若者の出発点だった西に向かって行ってしまったのですから。

類話はいろいろあります。
親に追い出されて、ハスの葉や三年みそ、刀と交換する話は「三年味噌型」と呼ばれています。
観音さまのお告げを受けて、アブ、みかん、反物、馬と交換するのは「観音祈願型」。これは、『今昔物語集』巻16に、第28「長谷に参りし男、観音の助けに依りて富を得たる話」として入っています。古いですね。平安時代です。わたしが幼いころ絵本で読んだのも「観音祈願型」だったので、嬉しくて、この広島県の話を再話しました。

話型名「藁しべ長者」。世界的には、全く同じ話型のものは少ないそうですが、ATU1655「有利な交易」が近いということです。韓国の「藁縄一本で長者になる」話が似ているそうです。残念ながら未見。

テキストは、『語りの森昔話集5ももたろう』に掲載しています。こちら⇒書籍案内

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化け物問答

ばけものもんどう

長野県の昔話

問答というのは、問うことと答えること。
ここでは、おまえは何者かと名前を問い、化け物が答えます。
話型名「化物問答」
言葉の力によって化け物を退治するという話型です。

岡山県に伝わる類話もおもしろいのですが、まずは、比較的短くて、小さな子でも聞いて分かり易いあまり恐くない長野県の伝承を紹介します。

言葉のリズムを楽しみながら語るといいと思います。


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ねこの口ひげ

広島県の昔話

とらは、もともと日本にはいない動物なのですが、昔話やことわざなどで、身近なものとして登場します。「ねこの口ひげ」のとらも、中国からやって来ますね。

話型名「狐と獅子と虎」。
日本のきつねと、唐(中国)のとら、天竺(インド)の獅子が、だれがいちばん強いか、また速いかを比べる話です。
前半は駆け比べ、後半は力比べです。後半で大声で吠える競争をして、獅子は大きな声を出しすぎて、首が飛んでしまいます。きつねが獅子の首を日本に持って帰って、獅子舞の頭にしたという由来ばなしになっています。

前半だけで終わる話もたくさん伝わっています。
「ねこの口ひげ」もそうですね。勝利を得る方法は、きつねが仲間に終点の所で待っていてもらうというもの。
きつねととらだけでなく、とらとかめ、くじらとなまこ、唐の鵜と日本の鵜、などがあるそうです。
後半まである類話では、きつねが虎のしっぽにくっついて行くという方法で勝ちます。

二匹の動物が競争する話は世界じゅうにあります。
《外国の昔話》に、アフリカ・コンデ族の「かめとぞうのかけくらべ」を紹介しているので、こちらの解説も参考にしてください。(こちら⇒

また、小さな動物が大きな動物に勝つ話について、マックス・リュティの解説を《井戸端会議》で紹介しています。(こちら⇒


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かっぱの一文銭

かっぱのいちもんせん

島根県の昔話

呪宝譚のなかでも、もっとも代表的な話。
話型名は「犬と猫と指輪」。
え?指輪?バタ臭いですねえ(笑)。
そうなのです、これは世界じゅうに分布している話で、「マジック・リング」と呼ばれている話です。ATU560。
朝鮮半島に伝わる類話「いぬとねこと玉」を再話してあるので比べてください(こちら⇒

日本の話の場合は、呪宝をさずけてくれる者によって、三つのサブタイプに分かれます。
「蛇サブタイプ」は東北地方中心ですが、かつては日本全体がこの系統だったようです。
「猿サブタイプ」は九州から中国地方で、宝物は猿の三文銭です。
「竜宮サブタイプ」は竜王から宝をもらう話で、九州中心。

今回紹介した島根県の「さるの一文銭」は、猿タイプと竜宮タイプの合体したものです。
犬はあまり出てこず、おじいさんを助ける猫がかっこいいなあと思います。


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