あちちぷうぷう

福島の昔話

和尚と小僧譚のひとつで、話型名は「小僧改名(こぞうかいめい)」といいます。けちん坊の和尚さんが、おいしいものをいつもひとりで食べるので、小僧が一計を案じる話です。
小僧はひとりではなく三人のパターンが一般的なようです。ここでは、幼い子向けにと考えたので、和尚と小僧が一対一でやりあうものを原話にしました。
餅だけでなく、お酒もいただくという話もあります。
「小僧改名」は、「鮎はかみそり」「馬の落とし物」「焼餅和尚」などの話型といっしょになって、連鎖譚として語られている場合もあります。連鎖譚については、《昔話雑学》で確認してください。

共通語テキストは、出典『語りの森昔話集4おもちホイコラショ』に掲載しています。 ⇒書籍案内

日常語での語りを聞くことができます。

⇒ おかしな話一覧へ

 

彼岸花のふとん

ひがんばなのふとん

福島の昔話

きつねにだまされた話です。山で道に迷うと、狐に化かされたんだといい、馬のふんを食わされたとか、野つぼを風呂だと思って、気持ちよく入ったとかいって、笑い合います。そんな時代がついこの間まであったのですね。
 科学の発達した現代では、本気にする人はいないでしょう。けれども、現代でも、きつねは、神の使いとして信仰されています。お正月には、稲荷大社にお参りする人が、全国から集まって来ます。妖怪としてのきつねは、神さまのなれの果てと考えられています。
福島県のこの話は、娘きつねにだまされて泊まった所が、彼岸花の草原でした。視覚的に美しいですね。
余談ですが、彼岸花には、「まんじゅしゃげ」などの別名があって、地方によって呼び名が変わります。あなたの地方では、何と呼びますか?「きつね」が含まれる呼び名もありますよ。「きつねのちょうちん」「きつねのかんざし」「きつねのはなび」「きつねのたいまつ」「きつねのろうそく」「きつねのたばこ」など。
彼岸花について知りたい人には、絵本『ヒガンバナのひみつ』(かこさとし作/小峰書店)、『ひがんばな』(甲斐信枝作/福音館書店)がおすすめです。読み聞かせにも使えます。


下のボタンからテキストをダウンロードできます。

日常語での語りを聞くことができます。

⇒ おかしな話一覧へ

さるかに合戦

さるかにがっせん

岡山の昔話

これは、岡山県に伝わる「さるかに合戦」です。以前に紹介した鳥取県の「さるかに合戦」と、冒頭が異なります。さるがより狡猾になっています。会話文がリズミカルなのはどちらも同じですが、「ぱちくり」「ぽんぽらはち」「とっこんうす」などの名前やオノマトペは、こちらのほうが豊かです。幼い子どもはこちらのほうが喜ぶかもしれません。でも、語るのは難しいかもしれません。
テキスト選びの参考にしてください。
鳥取と岡山は地理的に近いのですが、同じ話でもこんなふうに違うのですね。

テキストは、『語りの森昔話集4おもちホイコラショ』に掲載しています。 ⇒書籍案内

日常語での語りを聞くことができます。

地獄めぐり

じごくめぐり

徳島の昔話

話型名は「閻魔(えんま)の失敗」といって、日本全国に伝えられています。笑い話で、『日本昔話通観』では、その「誇張」に分類されています。笑い話は短いものが多いのですが、「閻魔の失敗」譚は、長いですね。旅の職業人によって、改作されながら伝えられたのではないかといわれています。
徳島県のこの話では、お医者と、山伏と鍛冶屋が地獄送りになりますが、ほかに、歯医者、軽業師が出てくる話もあります。
地獄に送られた三人は、それぞれ自分の特技を生かして、切りぬけます。剣の山では、鍛冶屋が金(かね)のわらじを作って剣をこわします。熱湯の釜では山伏が水の印を結んで水に変えます。鬼の口の中では、医者が薬をまきます。条件の一致がそのまま笑いになっています。
落語の世界でも江戸時代から話されていたとのことです。いまは、関西では、『地獄八景亡者戯(じごくばっけいもうじゃのたわむれ)』という演目で、一時間以上かかる大ネタです。この落語をもとに作られた絵本『じごくのそうべえ』(田島征彦作/童心社刊)は、子どもたちに人気です。


下のボタンからテキストをダウンロードできます。

日常語での語りを聞くことができます。

⇒ おかしな話一覧へ

蟹満寺(かにまんじ)

かにまんじ

島根の昔話

娘が蟹をかわいがっている、または蟹の命を助けてやる。娘は蛇の嫁になると約束するが、蟹に助けられる。というはなし。
話型名は、「蟹報恩」または「蟹の恩返し」。『日本霊異記』『今昔物語集』などの古い文献にあります。だからでしょうか、全国に分布しているそうです。

こに紹介したのは、島根県に伝わっている話ですが、資料の註に、《「蟹満寺」は山城の国にある》とあります。現京都府木津川市にある蟹満寺の由来として語り伝えられたものです。
実際に蟹満寺には、蟹の恩返しの伝説が残っています。比較すると、冒頭が少し異なっているのが分かります。娘は蟹を、いたずら小僧から助けてやります。いっぽう、父親がかえるをヘビから助けてやります。娘が蛇の嫁になるという約束は、父親がするのですが、このパターンは、「猿婿」「蛇婿」などの異類婚姻譚にはよくありますね。
この島根県の伝承は、父親は脇役で、娘の行動にスポットライトが当てられています。また、満月の晩にやって来る蛇の若者の登場も印象的です。それで、語ってみたいと思いました。
冒頭で娘が「生きているものが、お互いに、食うたり食われたりするのはいけない」といいます。娘の「やさしい」という性格があらわれているのでしょう。けれども、他の命を奪って生きるのが生き物の自然の姿でもあります。結末で、蛇は蟹に「食い殺され」てしまいます。そして、娘は「尼になって」、一生蟹を弔うことになります。宗教的、哲学的な課題を考えさせてくれる話になっています。

下のボタンからテキストをダウンロードできます。

日常語での語りを聞くことができます。

⇒ 本格昔話一覧へ