きゅうり姫

きゅうりひめ

山形の昔話

話型名は「瓜子姫」。きゅうり、もも、うぐいす、といった季節感から、夏の話として再話しました。先に紹介した「うりひめの話」と比べてください。印象がずいぶん違いますね。「きゅうり姫」は、きゅうり姫が殺されて顔の皮をはがれるし、あまのじゃくもひどい殺されかたをします。瓜姫(きゅうり姫)が殺されるという結末は、東北地方での伝承に多いものです。
親の言いつけを守らないで、ちゃんと留守番しなかった子どもは、こんな目に遭うよと教えているのでしょう。グリム童話の「おおかみと七匹の子やぎ」も母親の留守中におおかみを家に入れてしまって食べられますね。でも、最後は救われます。「きゅうり姫」は再生しません。厳しいですね。現実そのままです。敵は退治されますが、主人公が死んでしまうので幼い子には向きません。
《昔話雑学》も参考にしてください。


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駅前の自転車預かりの話

えきまえのじてんしゃあずかりのはなし

京都の昔話

短いおまけのおはなしです。もうひとつ話をせがまれたときに語られる形式譚の一種です。話の最後を「はなし」で結びます。
鼻のあなに椎(しい)の実が入って「鼻椎(はなしい)」とか、大根やカブや柿や竹などに葉がなくて「葉なし」とか、この話のように、口を開けたら歯がなくて「歯なし」などがあります。「鼻をにぎられてはなしにならぬ」というのもあるそうです。子どもたちに手をつながせておいて、「放し!」といって手を放させるのもあります。この手のおはなしをひとつ知っておくと便利ですね。
「駅前の自転車預かりの話」は現代の民話です。気味が悪いですが、「歯なし」のタイプはだいたいがグロテスクなものが多いようです。
実際に陰惨な事件が起こるので、語りづらかったりするのですが、それを笑い飛ばすエネルギーも大事かなと思います。音声は、おとなに語っているものです。夏休みの恐いおはなし会で依頼されたけれど、どんな話があるのかなと相談を受けて、思い出しました。以前は子どもに語っていました。またやってみます。


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へーとこ へーとこ

京都の昔話

京都府城陽市はわが町の隣町、木津川の川向うの市です。そこに残っていた昔話を見つけました。昔話といっても、とても短くて誰でも語れそうですね。これは、話型名「長い名の子供」という笑い話です。落語の「寿限無」も長い名前の子どものはなしです。
はなしの最後、子どもが死んでしまうのでぎょっとしますが、笑い話なんですね。
あっけらかんと笑える感覚を大切にしたいです。
子どもが「もうひとつ!」とねだったときのおまけとして語ってください。「長い話をして」と言われたときにもいいですね。


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いなばの白うさぎ

いなばのしろうさぎ

日本の神話

よく知られているいなばの白うさぎの話は、小学校の国語の教科書にも載っています。
神話なのですが、昔話に共通する要素があります。
たくさんの兄弟の神は、原文では「八十神(やそがみ)」と表現されています。極端に描かれています。そして、主人公のオオクニヌシは、一番最後、最後尾を歩いています。荷物持ちとして卑しめられているのです。端っこの存在。昔話では、端っこの存在こそが主人公の資格を持っていますね。
うさぎがさめをだますモティーフも、昔話にあります。このホームページの《外国の昔話》に掲載しているインドネシアの昔話「カンチルとワニ」を見てください。ところで、「いなばの白うさぎ」の「さめ」ですが、原文では「和邇」とあり、「わに」と読ませています。「和邇」が、いったい何の動物なのか、諸説あって定まってはいないようです。ふと、白うさぎ=カンチル、和邇=ワニ???と思ってしまいますね。でも、残念ながら、日本にワニは住んでいませんでした。


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サイデン、サイデン、小僧、小僧

さいでん、さいでん、こぞう、こぞう

岡山の昔話

話型名は「宝化け物」。荒れ屋敷に化け物が出るというので、旅の男が泊まって退治すると、お金が手に入るという話。化け物の正体はお金だったのです。お金が人間に使ってほしくて化けて出るっておもしろいですね。「金は天下のまわりもの」といいますが、貨幣経済の社会では、お金を使わなければ世の中が回っていかない。「タンス貯金はダメ」ってことですね。
ところで、昔話のなかでは、正体が暴かれると、その化け物は出なくなるというのが決まりのようです。「山寺の怪」や「化け物寺」の話でも、正体が蜘蛛だったり欠けた茶碗だったりするのですが、それを言い当てたり、または白状させると、化けて出なくなります。
子どもは怖い話が大好きです。でも陰惨な話は語りたくないですね。恐くても勇気を持って当たれば大金持ちになれる。なんとストレートで分かりやすいメッセージでしょう。
昔のお金の話をしてから、語りはじめるといいと思います。

共通語テキストは、『語りの森昔話集3しんぺいとうざ』に掲載しています。⇒書籍案内

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