にんじんとごぼうとだいこん

岡山の昔話

絵本などでおなじみのお話です。誰でも知っている話だと思っていましたが、昔話資料は案外多くありませんでした。それでも、日本各地にまばらに広がって分布しています。
岡山のこの話は、冒頭でおばあさんがお風呂を沸かします。にんじんとごぼうとだいこんが、畑でしゃべっている光景が目に浮かぶようです。
「もらい湯」の風習は、いまでは聞かれなくなりましたが、わたしの母の世代では、農村では、都市近郊であっても、当たり前のことだったようです。お風呂を沸かす家があれば、夕方ごろから近所の人たちが三々五々集まって来て、順番を待ちながら世間話をしたそうです。時には昔話も語られたでしょうか。この「にんじんとごぼうとだいこん」もそんな中で生まれた話かもしれません。
ところで、この類話には、旅に出てお風呂に入る話や、にんじんとごぼうが、病気のだいこんの見舞いに行く話など、いくつかのバージョンがあります。どれも、大根はなぜ白いのか、にんじんはなぜ赤いのか、ごぼうはなぜ黒いのかといった色の由来を説いています。そういった由来譚(ゆらいたん)は、もともと、幼い子どもに語ったものだそうです。

共通語テキストは『語りの森昔話集4おもちホイコラショ』に掲載しています。⇒書籍案内

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だんごころりん

熊本の昔話

幼い子がよろこぶお話です。
「目かご」というのは、竹などで編んだ目の粗いかごのことです。子どもがたずねたら簡潔に教えてあげましょう。
話型名は「ねずみ浄土」。類話が全国に広がっています。この「だんごころりん」は、隣の爺型の形がきちっと整っています。「だんごころりんだごころりーん すってんとーん」という歌のくりかえしも楽しいです。しかもこの歌は、ねずみではなくだんご自身が歌っています。目かごも自分で歌いながら入っていきますし、おじいさんも自分で歌います。なんともユーモラスです。
よく似た話で、地下の世界に行ってお地蔵さまと出会う話を「地蔵浄土」といいます。
おはなしの最後に、「人まねはするものではない」と、知恵を授けているのも、幼い子どもにぴったりだと思います。


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きゅうり姫

きゅうりひめ

山形の昔話

話型名は「瓜子姫」。きゅうり、もも、うぐいす、といった季節感から、夏の話として再話しました。先に紹介した「うりひめの話」と比べてください。印象がずいぶん違いますね。「きゅうり姫」は、きゅうり姫が殺されて顔の皮をはがれるし、あまのじゃくもひどい殺されかたをします。瓜姫(きゅうり姫)が殺されるという結末は、東北地方での伝承に多いものです。
親の言いつけを守らないで、ちゃんと留守番しなかった子どもは、こんな目に遭うよと教えているのでしょう。グリム童話の「おおかみと七匹の子やぎ」も母親の留守中におおかみを家に入れてしまって食べられますね。でも、最後は救われます。「きゅうり姫」は再生しません。厳しいですね。現実そのままです。敵は退治されますが、主人公が死んでしまうので幼い子には向きません。
《昔話雑学》も参考にしてください。


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駅前の自転車預かりの話

えきまえのじてんしゃあずかりのはなし

京都の昔話

短いおまけのおはなしです。もうひとつ話をせがまれたときに語られる形式譚の一種です。話の最後を「はなし」で結びます。
鼻のあなに椎(しい)の実が入って「鼻椎(はなしい)」とか、大根やカブや柿や竹などに葉がなくて「葉なし」とか、この話のように、口を開けたら歯がなくて「歯なし」などがあります。「鼻をにぎられてはなしにならぬ」というのもあるそうです。子どもたちに手をつながせておいて、「放し!」といって手を放させるのもあります。この手のおはなしをひとつ知っておくと便利ですね。
「駅前の自転車預かりの話」は現代の民話です。気味が悪いですが、「歯なし」のタイプはだいたいがグロテスクなものが多いようです。
実際に陰惨な事件が起こるので、語りづらかったりするのですが、それを笑い飛ばすエネルギーも大事かなと思います。音声は、おとなに語っているものです。夏休みの恐いおはなし会で依頼されたけれど、どんな話があるのかなと相談を受けて、思い出しました。以前は子どもに語っていました。またやってみます。


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へーとこ へーとこ

京都の昔話

京都府城陽市はわが町の隣町、木津川の川向うの市です。そこに残っていた昔話を見つけました。昔話といっても、とても短くて誰でも語れそうですね。これは、話型名「長い名の子供」という笑い話です。落語の「寿限無」も長い名前の子どものはなしです。
はなしの最後、子どもが死んでしまうのでぎょっとしますが、笑い話なんですね。
あっけらかんと笑える感覚を大切にしたいです。
子どもが「もうひとつ!」とねだったときのおまけとして語ってください。「長い話をして」と言われたときにもいいですね。


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