新潟の昔話
「田螺長者(たにしちょうじゃ)」という話型名で知られる話です。
おじいさんとおばあさんが子どもがほしいと願っていたら、ある日、田螺がさずかります。田螺でなくて、なめくじやさざえのこともあります。ここは、かたつむりですね。
一寸法師などと同じ「小さ子話」のひとつです。ふしぎな誕生の子どもが、知恵と勇気を出して長者の娘の婿になります。昔話の幸せ、結婚と富の獲得で、話は終わります。
ふたりで祭りに行って、嫁がお参りしているあいだに田螺が人間になる結末の話もありますね。この「かたつむり」のように、嫁につぶしてもらって人間になる話もあるのです。場合によっては、嫁が田螺を嫌がってたたき殺す、というシチュエーションもあります。と、そこで、思い出すのがグリム童話の「蛙の王さま」です。
「蛙の王さま」では、蛙は、呪いをかけられた王子の仮の姿で、王女に投げつけられることで呪いがとけることに決まっていましたね。「かたつむり」では、かたつむりは、生まれた時からかたつむりで、そこに魔女の呪いはありません。そして、自分の力で獲得した嫁につぶされることで人間になる、そのことをかたつむりは知っていました。「蛙の王さま」で、ともすれば理不尽に思えるこの場面が、「かたつむり」では、そういう運命なんだと納得できてしまうのは、わたしだけでしょうか。
共通語テキストは『語りの森昔話集3しんぺいとうざ』に掲載しています。こちら⇒書籍案内