さるかにがっせん
鳥取の昔話
みなさんご存知の有名なさるかに合戦のおはなしです。
かにが畑で「生えねばはさもう」「大きいならねばはさもう」・・・と繰り返すと、かきは大きくなっていって実をつけます。リズミカルで、楽しい場面です。昔話の語法でいえば、言葉の出来事によるくりかえしであり、同じ場面は同じ言葉で語られています。
ただ、このモティーフには、「成木責(なりきぜ)め」という古来の風習が背景にあります。小正月(一月十五日)に、豊作を祈って行われた全国に分布する風習です。その家の主人が、果樹(とくに柿の木)に向かって、「なるかならぬか、ならねば切るぞ」といいながら斧で切るしぐさをし、家人が「なります、なります」と答えるそうです。
今では行われなくなってほとんどの人が知らない風習が、こんな形で昔話に残っているのです。リュティ理論でいう、社会的(または、呪術的)モティーフが純化されて、昔話モティーフとして取り込まれている例です。
ところで、この話ではかには殺されますが、再話によっては、かにはけがをするだけで、最後も、猿は殺されるのではなく、ごめんなさいと謝って改心するというように、変えてしまっているものがあります。残酷だからといって改ざんしてしまうと、昔の人が伝えようとした命のやり取り、命のかけがえのなさを子どもに教えることはできません。
この話は、幼児向けに再話しました。
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