岡山の昔話
絵本などでおなじみのお話です。誰でも知っている話だと思っていましたが、昔話資料は案外多くありませんでした。それでも、日本各地にまばらに広がって分布しています。
岡山のこの話は、冒頭でおばあさんがお風呂を沸かします。にんじんとごぼうとだいこんが、畑でしゃべっている光景が目に浮かぶようです。
「もらい湯」の風習は、いまでは聞かれなくなりましたが、わたしの母の世代では、農村では、都市近郊であっても、当たり前のことだったようです。お風呂を沸かす家があれば、夕方ごろから近所の人たちが三々五々集まって来て、順番を待ちながら世間話をしたそうです。時には昔話も語られたでしょうか。この「にんじんとごぼうとだいこん」もそんな中で生まれた話かもしれません。
ところで、この類話には、旅に出てお風呂に入る話や、にんじんとごぼうが、病気のだいこんの見舞いに行く話など、いくつかのバージョンがあります。どれも、大根はなぜ白いのか、にんじんはなぜ赤いのか、ごぼうはなぜ黒いのかといった色の由来を説いています。そういった由来譚(ゆらいたん)は、もともと、幼い子どもに語ったものだそうです。
共通語テキストは『語りの森昔話集4おもちホイコラショ』に掲載しています。⇒書籍案内