におうさんとがま
熊本県の昔話
話型名は「仁王と賀王」。笑い話の中の業比べの話群に属しています。
全国で語られているのは、仁王さんが寺院の左右の門の中にいて、身近に親しまれているからかもしれません。
仁王の相手は、唐や朝鮮にいて、「賀王、がま、がまん」などと名づけられています。
力持ちの業比べの話は、世界じゅうにあって、ATU1962A「大きなレスラー」に分類されています。
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極楽の門に鬼の門番がいるというのは、昔話に限らず、世間話や落語などによくあるモティーフです。
また「ふぐ(ふく)は内」というダジャレのオチも、節分の話ではよくあります。
だから、この話は、どこにでもあり得る笑い話といえます。
ところが、和泉の国の岡田浦と、実際に存在する土地が明示されていますね。
ここに語り手の遊びがあります。自分が聞いた話を、自分の土地のこととして、さもあったことのように語る、そのおかしさ。語り手も楽しいし、聞き手もおもしろい。
こんな気持ちで笑い話を語りたいものです。
地名が示されていますが、聞き手に信じさせようという意図はないので、「伝説」とはいえないでしょう。
共通語テキストは『語りの森昔話集6プレッツェモリーナ』に掲載しています。⇒書籍案内
びんぼうがみ
話型名「貧乏神」
大晦日のおはなし。
金の馬、銀の馬、銅の馬は、「大晦日の客」の年神さまの信仰と重なります。
貧乏神が、夫婦といっしょに逃げようとわらじを作るのがユーモラスです。このモティーフは、外国の昔話にもあります。
また、貧乏神が夫婦にお金をやって酒を買いに行かせるのも、おかしみがあります。
結末が、ずっと貧乏神が居続けるタイプもありますが、この話では、夫婦に説教をしてちゃんと出て行ってくれます。それもなんだかユーモラスです。
貧乏神が、やって来た福の神と戦う話もあります。
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くすり
継子話が世界じゅうにあるのは、どうしてなのでしょう。
実際の継子継母を語っていると考えても、また実の親子関係を継子話に託して語っていると考えても、親子の心理的葛藤の中で癒されるべきものがあるからではないかと思います。
さて、「薬」は、「姑の毒殺」という話型に属します。
愚人譚のなかの愚か嫁の話群のなかの「姑の毒殺」。笑い話です。
嫁が姑を殺そうとする話。
それを継子話にしてあるのが、この「薬」です。
この話型は、人の愚かしさを笑ういっぽうで、処世術というか、教訓性がとても強いので、昔話というより、世間話のようです。
全国にけっこう濃厚に伝えられているようです。
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