「ふしぎな話」カテゴリーアーカイブ

若がえりの水

わかがえりのみず

島根県の昔話

話型名は「若返りの水」。

日本全国に伝わっています。
ただし、西日本では、泉を見つけて若返るのはおばあさんですが、全国的には、逆に、おじいさんが多いようです。

不死や若返りの思想は、日本文化の中に古くから根付いていた考え方だそうです。
お正月に初めてくむ水を若水といって、神棚にお供えしてから料理やお茶に使う風習もあります。若水は、邪気を払う力があるといわれています。
「若返りの水」の話は、そんな思想や風習につながっているようです。


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つれにこいつれにこい

鹿児島県の昔話

アルメニアの「くるぞくるぞ」⇒《外国の昔話》と似た話です。自然の中から聞こえて来た声に応えることで宝を得ます。

主人公は、貧しい兄弟の弟のほうです。極端な端っこの存在ですね。
こんな短い昔話でも、世界に共通の昔話の語法に沿っているのです。

話型名は「取付く引付く」

子どもは恐い話が好きです。これは、恐いけれど、最後は黄金を得る話で、勇気があるとよいことがあるという教訓が付いています。
おまけの恐い話にうってつけです。


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稲荷山

いなりやま

長崎県の昔話

無欲のおじいさんが、無欲であったために幸運を手に入れるおはなし。

「天福地福」の類話です。
ただ、ここには夢のモティーフがありません。

自分に授かった福ならわざわざ取りに行かなくてもむこうから来るという生き方に共感します。
でも、なかなかそのようには生きられませんね。


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化け物を飲みこんだ話

ばけものをのみこんだはなし

京都の昔話

話型名「鬼をひと口」

出典の『諸国百物語(しょこくひゃくものがたり)』は、江戸時代(1677年)に、京都市の寺町松原通上ルにあった本屋から出版されました。
諸国というから、全国から集めた話という形をとっています。
百物語というのは、当時流行っていたおはなし会です。怪談を次つぎに語って百話が終わったとたんに、それまで語った話に登場する幽霊や化け物があらわれるという形のおはなし会。やりたいですね~笑

「化け物を飲みこんだ話」は、京都三十三間堂が舞台です。
ただ、再話するにあたって、伝説ではなく昔話として語るために、たんに「お寺」とし、固有名詞は使いませんでした。「天皇」は、昔話で一般的な「お殿さま」にしました。京都市内の話として語りたいかたや、三十三間堂のイメージを大事にしたいかたは、単語を差し替えてください。

ところで、化け物をうまくおだてて、小さな物に化けさせて、パクっと食べてしまうというモティーフは、日本の昔話では「三枚のお札」などでもおなじみです。和尚さまが鬼ばばを餅にはさんでパクっと食べる、納豆餅の由来とか。
このモティーフ、外国の昔話にもありますが、気が付きましたか?ペローの「長靴をはいたねこ」です。確かめてみてくださいね。こちら⇒


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へび婿入り

へびむこいり

新潟県の昔話

話型名「蛇聟入」
異類婚姻譚です。

この話の前半、娘のもとに美しい若者が通って来るんだけれど、いったいだれだか分からない。それで、若者の着物のすそに針を付けておく。その糸をたどって行くと(紹介した話では、糸ではなく血の跡をたどります)、正体は蛇だったというストーリーは、有名です。
かの奈良の三輪山の神さまの話と同じですね。

「蛇聟入」には、2パターンがあって、夜な夜な男が通ってくるパターンは、苧環型と呼ばれます。「おだまきがた」と読みます。
おだまきは、糸を巻いた物。おだまきから糸を繰りだして、機(はた)で布を織ります。

蛇は、三輪山伝説では神さまですが、昔話では、多くが異類としての蛇です。
日本の異類婚姻譚では、結末は別離で終わることが多く、この「へび婿入り」もそうです。
ヨーロッパの昔話では、異類は魔法にかけられた人間で、ラストはまほうがとけてハッピーエンドが多いですけれど。

また、苧環型の蛇婿入りは、五月五日や三月三日、九月九日といった節句の行事のいわれに結びつくことが多いようです。神さまであった痕跡なのでしょうか。


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