「ふしぎな話」カテゴリーアーカイブ

化け物を飲みこんだ話

ばけものをのみこんだはなし

京都の昔話

話型名「鬼をひと口」

出典の『諸国百物語(しょこくひゃくものがたり)』は、江戸時代(1677年)に、京都市の寺町松原通上ルにあった本屋から出版されました。
諸国というから、全国から集めた話という形をとっています。
百物語というのは、当時流行っていたおはなし会です。怪談を次つぎに語って百話が終わったとたんに、それまで語った話に登場する幽霊や化け物があらわれるという形のおはなし会。やりたいですね~笑

「化け物を飲みこんだ話」は、京都三十三間堂が舞台です。
ただ、再話するにあたって、伝説ではなく昔話として語るために、たんに「お寺」とし、固有名詞は使いませんでした。「天皇」は、昔話で一般的な「お殿さま」にしました。京都市内の話として語りたいかたや、三十三間堂のイメージを大事にしたいかたは、単語を差し替えてください。

ところで、化け物をうまくおだてて、小さな物に化けさせて、パクっと食べてしまうというモティーフは、日本の昔話では「三枚のお札」などでもおなじみです。和尚さまが鬼ばばを餅にはさんでパクっと食べる、納豆餅の由来とか。
このモティーフ、外国の昔話にもありますが、気が付きましたか?ペローの「長靴をはいたねこ」です。確かめてみてくださいね。こちら⇒


下のボタンからテキストをダウンロードできます。

日常語での語りが聞けます。

⇒ 本格昔話一覧へ

へび婿入り

へびむこいり

新潟県の昔話

話型名「蛇聟入」
異類婚姻譚です。

この話の前半、娘のもとに美しい若者が通って来るんだけれど、いったいだれだか分からない。それで、若者の着物のすそに針を付けておく。その糸をたどって行くと(紹介した話では、糸ではなく血の跡をたどります)、正体は蛇だったというストーリーは、有名です。
かの奈良の三輪山の神さまの話と同じですね。

「蛇聟入」には、2パターンがあって、夜な夜な男が通ってくるパターンは、苧環型と呼ばれます。「おだまきがた」と読みます。
おだまきは、糸を巻いた物。おだまきから糸を繰りだして、機(はた)で布を織ります。

蛇は、三輪山伝説では神さまですが、昔話では、多くが異類としての蛇です。
日本の異類婚姻譚では、結末は別離で終わることが多く、この「へび婿入り」もそうです。
ヨーロッパの昔話では、異類は魔法にかけられた人間で、ラストはまほうがとけてハッピーエンドが多いですけれど。

また、苧環型の蛇婿入りは、五月五日や三月三日、九月九日といった節句の行事のいわれに結びつくことが多いようです。神さまであった痕跡なのでしょうか。


下のボタンからテキストをダウンロードできます。

日常語での語りが聞けます。

⇒ 本格昔話一覧へ

沼神の手紙

ぬまがみのてがみ

岩手県の昔話

話型名は「沼神の手紙」。「水の神の文使い(みずのかみのふみづかい)」とも言います。
水の神に手紙を届けたために、財宝を得るという昔話。

東日本に多く伝わっているそうです。
沼や池の伝説として伝わっていることが多いといいます。今回紹介した話も、伝説的です。黄金をひる馬が駒ヶ岳になったと、地名由来の伝説として語られていますね。

沼の主は、大蛇や河童ですが、女性になって出現します。

手紙の書き換えのモティーフが中心になっていて、グリム童話の「三本の金髪をもった悪魔」や「手を切られた娘」のようなヨーロッパの昔話を思い出させます。いわゆるウリアの手紙のモティーフですね。こちら⇒《昔話雑学》
ただ、「沼神の手紙」の類話では、手紙を書き換えないでそのまま持って行って、しかも財宝を手に入れるというパターンもあります。

高学年から大人まで楽しめる、夏向けのおはなしです。


下のボタンからテキストをダウンロードできます。

日常語での語りが聞けます。

⇒ 本格昔話一覧へ

佐渡の白つばき

さどのしろつばき

新潟県の昔話

「夢の蜂」とか「夢買い長者」とよばれる昔話のひとつです。

昼寝中の男の鼻の穴から、昆虫が飛び出して、その昆虫がもどって来て鼻の穴に入ると目が覚める。そして、そばで見ていたもう一人の男に、夢を見たと話をします。その夢の中で、昆虫が宝のありかを教えたと話すのです。それを聞いた男は、その夢を売ってくれといって、自分が宝のありかを探しに行くという話。

古く『宇治拾遺物語』にあって、日本じゅうに広く伝わっています。いろんなバリエーションがあって、おもしろいです。

人間の霊魂が動物の姿になって、睡眠中の肉体から出て行くというのは、世界各地にみられる信仰だそうです。それで、世界じゅうに、この類話があります。

ATU1645A「宝の夢を買う」
王さまが木の下で寝ていると、動物が王さまの口から出て来て川を渡り、山のほら穴に入って行く。それを召使いが見ていて、王さまに告げる。王さまは、動物に宝のありかを教えてもらった夢を見たと話す。王さまは、山の中に大変な宝を発見する。というような話。

ヨーロッパでは、中世の早い時期に記録があるということです。

テキストは、『語りの森昔話集5ももたろう』に掲載しています。こちら⇒書籍案内

日常語での語りが聞けます

⇒ 本格昔話一覧へ

宝のひょうたん

たからのひょうたん

岩手県の昔話

話型名は「宝瓢(たからひさご)」。
ふしぎなひょうたんを手に入れて、福を授かる話。
呪宝譚のひとつです。呪宝譚についてはこちら⇒《昔話雑学》

おじいさんは、観音さまにお願いをして、ひょうたんを手に入れますが、類話によっては、ヒョウタンネズミからもらうという話もあるそうです。鼠浄土と混ざっているのですね。どちらも、ひょうたんから童子が出てきて望みをかなえてくれます。その点では竜宮童子と似ています。

ひょうたんから出て来たふたりの童子には、名前が付いています。おじいさんが,ひょうたんを抱きあげたらひょっこり飛び出して来たというのが、かわいらしいですね。

馬喰は、馬や牛を売り買いする商人です。子どもに語るときには、ちょっと説明をはさむといいかと思います。

低学年から高学年まで楽しめると思います。


下のボタンからテキストをダウンロードできます。

日常語での語りが聞けます。

⇒ 本格昔話一覧へ