「ふしぎな話」カテゴリーアーカイブ

旅人馬

たびびとうま

鹿児島の昔話

話型名「旅人馬」。災厄から逃げる話で、これも「三枚のお札」などと同じ逃竄譚に属します。

「旅人馬」は日本全国に伝わっています。ここに再話したのは鹿児島県喜界が島の話ですが、『子どもに贈る昔ばなし15 馬にされた大吉』所収の話は岩手県の話。馬にされた大吉が逃げるとちゅう、子どもたちの歌を聞いて、人間にもどる薬草をさがし求めて助かる話です。「旅人馬」の「七十歳のおじいさんの助言」の役割をするのが「わらべうた」、「なす」が「薬草」。小道具の違いが、話のテーマや空気感に深く影響すると感じます。大吉のほうもぜひ読んでくださいね。

この話型は、古くは平安時代末期八百年以上前の『宝物集』という説話集に見られます。全国に広がるのもうなづけます。
ところが、国際カタログで探してもこの話型名はありません。STU314「黄金の若者」が最も似ていますが、魔法の馬の正体が王子だったというあのパターンの話です。魔法使いから逃げ出す逃走のモティーフもありますが、ほんと、かすかに似ているなあという程度です。
馬にされるあの不思議な魔法や人間にもどるための苦難の旅は、描かれていません。

では、「旅人馬」は日本に固有の昔話なのでしょうか?

じつは、中国の唐の時代に書かれた『河東記』という伝奇小説集にこの話があるのです。九世紀前半。古いですねえ。そのなかの「板橋三娘子(はんきょうさんじょうし)」の話がこの「旅人馬」。中国でも好まれて後に単独で書物になったりしています。

書物が日本に入ってきて口伝えされたのでしょうか? それとも、中国や朝鮮半島で口伝えされて日本に入ってきたのでしょうか? 極東地域の人々の交流を想像するとたのしいです。

『河東記』の三娘子の話は、絵本『ふしぎなやどや』(はせがわせつこ文/いのうえようすけ絵/福音館書店)で読めます。

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大みそかのお客

おおみそかのおきゃく

奈良の昔話

話型名 「 大歳の客 」 。これもまた日本全国に分布しています。旅人はお坊さんだったり、巡礼だったり、物乞いだったりします。
宿を乞う日が大晦日、つまり年神さまが身をやつしてやってきたのです。
死体がお金になるというのが衝撃的ですね。死体とお金という極端な対比、昔話の語法を思い出してください。

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三人のどろぼう

新潟の昔話

とんでもないファンタジーですね。原話を初めて読んだときはひっくり返って笑いました。語りで聞いたら面白いだろうなと再話しましたが、語るのはけっこう難しいです。まだ子どもには語っていませんが、対象年齢はどのくらいでしょうね。

共通語テキストは『語りの森昔話集2ねむりねっこ』に掲載しています。⇒書籍案内

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