「動物の話」カテゴリーアーカイブ

たいとふぐ

大阪の昔話

極楽の門に鬼の門番がいるというのは、昔話に限らず、世間話や落語などによくあるモティーフです。
また「ふぐ(ふく)は内」というダジャレのオチも、節分の話ではよくあります。
だから、この話は、どこにでもあり得る笑い話といえます。
ところが、和泉の国の岡田浦と、実際に存在する土地が明示されていますね。
ここに語り手の遊びがあります。自分が聞いた話を、自分の土地のこととして、さもあったことのように語る、そのおかしさ。語り手も楽しいし、聞き手もおもしろい。
こんな気持ちで笑い話を語りたいものです。

地名が示されていますが、聞き手に信じさせようという意図はないので、「伝説」とはいえないでしょう。

共通語テキストは『語りの森昔話集6プレッツェモリーナ』に掲載しています。⇒書籍案内

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あとはみんなきつね殿

あとはみんなきつねどの

山梨県の昔話

動物たちが、手に入れてきた物を分ける話。動物分配譚です。
食べ物とか、何かいいものを拾ったり、分捕ってきて何匹かで分けようとします。

大きく2種類の話が合って、ひとつは、この話のように、奸智にたけたトリックスターが分配するのですが、自分が得をするように分けます。
もうひとつは、「はちは八文」とか「くもは九文」のように語呂合わせで分けます。

どうすればうまく分けられるかというのは、幼い子どもたちにとっては、いつも大問題ですね。


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ねこの口ひげ

広島県の昔話

とらは、もともと日本にはいない動物なのですが、昔話やことわざなどで、身近なものとして登場します。「ねこの口ひげ」のとらも、中国からやって来ますね。

話型名「狐と獅子と虎」。
日本のきつねと、唐(中国)のとら、天竺(インド)の獅子が、だれがいちばん強いか、また速いかを比べる話です。
前半は駆け比べ、後半は力比べです。後半で大声で吠える競争をして、獅子は大きな声を出しすぎて、首が飛んでしまいます。きつねが獅子の首を日本に持って帰って、獅子舞の頭にしたという由来ばなしになっています。

前半だけで終わる話もたくさん伝わっています。
「ねこの口ひげ」もそうですね。勝利を得る方法は、きつねが仲間に終点の所で待っていてもらうというもの。
きつねととらだけでなく、とらとかめ、くじらとなまこ、唐の鵜と日本の鵜、などがあるそうです。
後半まである類話では、きつねが虎のしっぽにくっついて行くという方法で勝ちます。

二匹の動物が競争する話は世界じゅうにあります。
《外国の昔話》に、アフリカ・コンデ族の「かめとぞうのかけくらべ」を紹介しているので、こちらの解説も参考にしてください。(こちら⇒

また、小さな動物が大きな動物に勝つ話について、マックス・リュティの解説を《井戸端会議》で紹介しています。(こちら⇒


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さるかに合戦

さるかにがっせん

岡山の昔話

これは、岡山県に伝わる「さるかに合戦」です。以前に紹介した鳥取県の「さるかに合戦」と、冒頭が異なります。さるがより狡猾になっています。会話文がリズミカルなのはどちらも同じですが、「ぱちくり」「ぽんぽらはち」「とっこんうす」などの名前やオノマトペは、こちらのほうが豊かです。幼い子どもはこちらのほうが喜ぶかもしれません。でも、語るのは難しいかもしれません。
テキスト選びの参考にしてください。
鳥取と岡山は地理的に近いのですが、同じ話でもこんなふうに違うのですね。

テキストは、『語りの森昔話集4おもちホイコラショ』に掲載しています。 ⇒書籍案内

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いのししとかめ

長野の昔話

来年の干支「いのしし」の話です。お正月に間に合うように再話しました。短いのですぐに覚えられると思います。これは長野県の伝承ですが、どうぞご自分のお国言葉になおして語ってください。
幼い子ども向きの由来話です。
いのししは、東北から沖縄まで広く生息していて、古来から人々の生活に深くかかわっていたそうです。狩りをして食料にもしますが、田畑に害を及ぼす困った存在でもありました。となると、やはり、神としてあがめられたのです。鹿や熊など人間のそばにいる他の野生動物たちと同じです。山の神が白いいのししとなって現れるという伝承もあったそうです。

共通語テキストは、『語りの森昔話集4おもちホイコラショ』に掲載しています。⇒書籍案内

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