かっぱのむこさん
鹿児島県の昔話
話型名を「河童婿入」といいます。異類婚姻譚です。
異類はここでは河童(かっぱ)ですが、全く同じ話で、かっぱではなく、蛇の話がありますね。
かっぱは、架空の妖怪で、もともとは水の神さまだったようです。水神なら、田んぼに水を入れるのはお手のものです。
この話で気に入っているのは、末の娘の強さです。父親も情けないですが、かっぱも娘に手玉に取られています。
昭和初年の伝承ですが、そのころの女性の強さを感じます。
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くまがみのむすめ
アイヌの昔話の多くが一人称で語られます。
(ちなみに、ペナンぺ話などの隣の爺型の話や和人から伝わった話は三人称です。)
この「くま神の娘」も一人称です。しかも、初めは老女が語り、次は犬、最後は男が語るという形になっています。
「アイヌの語り手は常に自ら昔話の登場人物になりかわって語り、しかも時には神になりかわって語るのである。聴衆の前で、語る行為のうちに、人である語り手は神と同一化している。」
と、原話の解説にあります(千本英史)。
ただ、わたしたちが語るとき、どこまでなりかわることができるか、または、なりかわっていいものかは、疑義のあるところだと思います。
わたしたちは、あくまでも媒体なので、過度の感情移入は慎まなければならない。ひとりの語り手が、いかにも犬になったり男になったりと、演じるのは不自然だと思います。
ただ、一人称であるための臨場感というか、リアリティは生まれます。それをうまく語りに生かしたいです。
さて、内容。
人と動物と神がゆるやかにつながっているアイヌの世界観を楽しみましょう。
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おおかみのまつげ
話型名は「炭焼長者」
生まれたときに授かった運で人生が決まっていく話は、たくさん残っているようです。ちょっと残念な気もしますが(笑)
主人公は、運命と戦ったりやりすごしたりしながら前向きに生きているように思います。
この話の主人公である福を持っている女性は、夫のために福を失います。けれども、勇気をもって次の一歩を踏み出すことで、ふたたび福を得ます。
やはり、その人がどう生きるかということなのですね。
生まれたときに、神が運を授ける話は、世界じゅうにあるようです。
おはなしひろばの「七つの年の水のじゅみょう」(日本の話)も、生まれたときに神さまから運をもらっていますね。こちら⇒
おおかみに出会って、人と動物を見分ける呪物であるまつ毛をもらうモティーフがおもしろいと思います。これだけでひとつの話型にもなっています。
共通語テキストは『語りの森昔話集6プレッツェモリーナ』に掲載しています。⇒こちら
15世紀室町時代のお伽草子です。
別名を「七夕」といい、七夕の由来を語ります。
天上の異郷遍歴譚であり、難題嫁、異類婚姻譚でもあります。これらのモティーフは、ヨーロッパの昔話にもあるので、世界共通で本当に古くから好まれてきたストーリーなんだなあと、おどろいてしまいます。
七夕の話は様々あって、特に天人女房が多いのですが、ここは、男が彼岸の存在で、妻が夫を求めて天にのぼるというのが、ちょっと違っておもしろいと思います。
宵の明星や、すい星、スバルなどの星が登場するのも、おもしろいですね。
ぜひ七夕に語ってくださいね。
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