「心が温かくなる話」カテゴリーアーカイブ

鬼の面、お福の面

おにのめん、おふくのめん

愛媛県の昔話

話型名「孝行坂」

お面をかぶって悪者から逃れる、という知恵の働きをテーマとする話を「孝行坂」または「鬼の面」といいます。
全国で語り継がれているそうです。

愛媛県に伝わっているこの「鬼の面、お福の面」のストーリーは、「孝行坂」の典型的な形ですが、娘が鬼の面をかぶるのは、山賊を恐がらせることを意図したものではなく、煙を防ぐためで、偶然でした。テーマは「知恵の働き」ではありません。

病気の親に代わって出稼ぎに行く小さな娘、親に何か悪いことがあったのではないかと悲壮な思いで家に向かう娘、真っ暗な夜道。峠に灯りがひとつ、そこにいたのは恐ろしい悪党たち。最悪の状況で、鬼の面が娘を救ってくれました。

たくさんのお金を手に入れて母親の病気も治って幸せになるという、それまでとは極端な幸福で物語の幕は下ります。
どんなときでも、目の前のことに真剣に向き合えば幸せになれるよ、というメッセージを感じます。


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さる地蔵

さるじぞう

山形県の昔話

話型名は「猿地蔵」。

人の好いおじいさんが、動物の援助で宝物を手に入れて幸せになる話。多くは、隣の爺型になっているそうです。 
日本全国に広がっています。
今回紹介したのは山形県の話ですが、「ぶいが谷のお酒」こちら⇒は島根県に伝わる話です。どちらも同じ話なのに、言葉の選びによって雰囲気が異なりますね。自分の感性に合った話を選べばいいと思います。

なお、この話型は、古いもので、鎌倉時代の『雑談集(ぞうたんしゅう)』にも載っています。『雑談集』は、『沙石集』を書いた無住(むじゅう)が書いた説話集です。

低学年でも楽しめます。


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うろこ玉

うろこだま

岩手県の昔話

呪宝譚のなかでも、もっとも代表的な話。
話型名は「犬と猫と指輪」。え?指輪?バタ臭いですねえ(笑)。そうなのです、これは世界じゅうに分布している話で、「マジック・リング」と呼ばれています。
ATU560。
朝鮮半島に伝わる類話「いぬとねこと玉」を再話してあるので比べてください(こちら⇒

日本の話の場合は、呪宝をさずけてくれる者によって、三つのサブタイプに分かれます。
「蛇サブタイプ」は東北地方中心ですが、かつては日本全体がこの系統だったようです。
「猿サブタイプ」は九州から中国地方で、宝物は猿の三文銭です。
「竜宮サブタイプ」は竜王から宝をもらう話で、九州中心。

今回紹介した「うろこ玉」は「蛇サブタイプ」です。
ねこと犬がそれぞれの特性に応じて活躍します。
失敗の原因がきつねというのも、意外性があっておもしろいです。

「猿サブタイプ」と「竜宮サブタイプ」の合体した話として「かっぱの一文銭」(こちら⇒)もどうぞ。


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ぽったりもち

高知県の昔話

単純なストーリーですが、お地蔵さまがしゃべるところや、その言葉「ぽったりぽったり・・・」が、のんびりしていて、心が温まります。
年末の話になっていますが、いつでも語れます。冬のほうがイメージしやすいでしょうけれど。
「こぢこぢにする」は、「ばらばらにする」の土地言葉です。耳に心地よいのでそのまま再話しました。

話型としては、「大歳の亀」「ものいう動物」に近いのですが、天恵をさずけてくれるのが動物ではなく、地蔵さまになっています。


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命のろうそく

いのちのろうそく

岡山県の昔話

印象的な話ですが、『日本昔話通観』には3話しか載っていない、珍しいものです。
話型名「寿命のろうそく」

ろうそくの長さが人間の寿命を示していて、ろうそくが消えるとき、その人の寿命も終わるという設定で、ストーリーが進みます。
ここで紹介した広島の話では、はしごを登って天国に行きます。天国にろうそくが並んでいるのです。門番が鬼だというのが意外です。
鬼が目覚めないか、子どもたちははらはらしながら聞きます。

ろうそく=寿命というモティーフは、グリム童話にあります。KHM44「死神の名づけ親」。ここでは、ろうそくは、洞窟の中に並んでいます。ヨーロッパにはよくあるモティーフのようです。


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