「心が温かくなる話」カテゴリーアーカイブ

みそ買い橋

みそかいばし

岐阜県の昔話

夢の知らせによって宝を発見する致富譚の一話型です。「みそ買い橋」とか「夢の橋」とかいわれます。
とっても日本的なストーリーのように思われますが、実はヨーロッパを中心にたくさんの話が伝わっています。

ATU1645「宝は自分の家にあり」。
古くは13世紀のペルシャ語の文献にあるそうです。
グリム兄弟の伝説集にもこの話はありますが、よく知られているのは、イギリスのジェイコブスの昔話集に入っている「スウォハムの行商人」です。

じつは、この「スウォハムの行商人」が、大正時代、日本語に翻訳されて『世界童話大系』に収録されました。それを読んだ岐阜県高山市の小学校の先生が、換骨奪胎して、高山のふるさとの話として子どもたちに語りました。それが日本じゅうに「みそ買い橋」として広がったのだそうです。
『世界童話大系』は第1巻が1925年ごろの出版ですから、「みそ買い橋」は日本の昔話としては新しいのですね。


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かっぱの一文銭

かっぱのいちもんせん

島根県の昔話

呪宝譚のなかでも、もっとも代表的な話。
話型名は「犬と猫と指輪」。
え?指輪?バタ臭いですねえ(笑)。
そうなのです、これは世界じゅうに分布している話で、「マジック・リング」と呼ばれている話です。ATU560。
朝鮮半島に伝わる類話「いぬとねこと玉」を再話してあるので比べてください(こちら⇒

日本の話の場合は、呪宝をさずけてくれる者によって、三つのサブタイプに分かれます。
「蛇サブタイプ」は東北地方中心ですが、かつては日本全体がこの系統だったようです。
「猿サブタイプ」は九州から中国地方で、宝物は猿の三文銭です。
「竜宮サブタイプ」は竜王から宝をもらう話で、九州中心。

今回紹介した島根県の「さるの一文銭」は、猿タイプと竜宮タイプの合体したものです。
犬はあまり出てこず、おじいさんを助ける猫がかっこいいなあと思います。


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たにし息子

たにしむすこ

岩手県の昔話

話型名は「田螺長者」。たにしの姿で生まれた申し子が、人並み以上に働き、機知を働かせて美しい嫁を得、人間の姿となって長者として栄える話。全国によく似た話があります。
ここではたにしですが、ほかに、かたつむり、さざえ、なめくじなどがあります。『語りの森昔話集3しんぺいとうざ』には新潟県に伝わっている「かたつむり」を載せています。
動物ではなくて、小さな人間が生まれる話もあります。「一寸法師」がそうですね。『語りの森昔話集4おもちホイコラショ』の「小指たろう」はロシアの話です。グリム童話の「親指小僧」もそうですね。
小さく生まれた者が知恵と勇気で幸せをつかむというのは、いかにも昔話らしいです。

小さ子の誕生については《昔話雑学》へ⇒こちら

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かねふき明神

かねふきみょうじん

広島の昔話

中国の「岩じいさん」を思い出させるおはなしです。日本にもあったんだと嬉しくて再話しました。
明神様の夢のお告げで、貧しい男の子が、狛犬から小判をもらいます。
昭和9年発行の資料です。会話文の語尾を少しだけ土地言葉にしました。「とーかっちり」は結末句です。結末句については、≪昔話雑学≫こちら⇒を見てくださいね。

テキストは、『語りの森昔話集5ももたろう』に掲載しています。こちら⇒書籍案内

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笠地蔵

かさじぞう

山形の昔話

善良なおじいさんが、地蔵に笠をかぶせて、お礼をもらう話。全国に分布します。伝説にもあるそうです。
多くが、大晦日の話になっていて、お地蔵さまは雪をかぶっています。「笠地蔵」というと大晦日の雪。それはそれで季節感があっていいのですが、この山形の話は、雪ではなくて雨に濡れています。だから季節を問わずに語れます。
かさがひとつ足りないから、ふんどしをかぶせた、でも失礼だったかもしれない、と心配するおじいさんの心根の良さが好きです。


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