ほうじのみやげ
京都府の昔話
この話は、わたしと同世代の人が、祖父から体験談として聞いた話です。
50年くらい前までは、きつねやたぬきに化かされた体験談が数多く話されていたそうです。しかも、全国どこでも同じような話、つまり類話なのです。
口伝えでストーリーを楽しむ気持ちは、いつまでも生きているということですね。
お盆やお正月など、親族や親戚が集まるときに、こんな話を知らないかとリサーチすると、きっと楽しいでしょう。
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アルメニアの「くるぞくるぞ」⇒《外国の昔話》と似た話です。自然の中から聞こえて来た声に応えることで宝を得ます。
主人公は、貧しい兄弟の弟のほうです。極端な端っこの存在ですね。
こんな短い昔話でも、世界に共通の昔話の語法に沿っているのです。
話型名は「取付く引付く」
子どもは恐い話が好きです。これは、恐いけれど、最後は黄金を得る話で、勇気があるとよいことがあるという教訓が付いています。
おまけの恐い話にうってつけです。
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話型名「蛇聟入」
異類婚姻譚です。
この話の前半、娘のもとに美しい若者が通って来るんだけれど、いったいだれだか分からない。それで、若者の着物のすそに針を付けておく。その糸をたどって行くと(紹介した話では、糸ではなく血の跡をたどります)、正体は蛇だったというストーリーは、有名です。
かの奈良の三輪山の神さまの話と同じですね。
「蛇聟入」には、2パターンがあって、夜な夜な男が通ってくるパターンは、苧環型と呼ばれます。「おだまきがた」と読みます。
おだまきは、糸を巻いた物。おだまきから糸を繰りだして、機(はた)で布を織ります。
蛇は、三輪山伝説では神さまですが、昔話では、多くが異類としての蛇です。
日本の異類婚姻譚では、結末は別離で終わることが多く、この「へび婿入り」もそうです。
ヨーロッパの昔話では、異類は魔法にかけられた人間で、ラストはまほうがとけてハッピーエンドが多いですけれど。
また、苧環型の蛇婿入りは、五月五日や三月三日、九月九日といった節句の行事のいわれに結びつくことが多いようです。神さまであった痕跡なのでしょうか。
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話型名「天道さん金の綱」。
本格昔話の逃竄譚(とうざんたん)のひとつ。「逃竄譚」については《昔話雑学》こちら⇒を見てください。
「兄弟星」とも呼ばれ、「ソバの茎はなぜ赤い」の由来譚が付いたりします。
典型的なストーリーでは、冒頭で、出かけた母親が山姥に食われてしまいます。そして、結末で、天に上った子どもたちが星や月や太陽になります。恐ろしいだけでなく悲劇を感じます。
今回紹介した長崎県の話では、このモティーフ(母親が食われる・子どもが星などになる)がないので、ストーリーとしての明瞭さには欠けますが、「やがて母親が帰って来て、子どもは鎖で降ろしてもらって再会するのだろう」と想像することで、救いが得られます。
青森から沖縄まで全国的に語りつがれています。とくに九州などの南に多いです。
子どもが山姥から逃げる話では「三枚のお札」が有名ですが、「三枚のお札」も全国的に語られていて、おもしろいことに東北や北の地方に多いです。
外国の話では、中国や朝鮮半島に類話があります。こちら⇒「日と月と星」
グリム童話「おおかみと七匹の子やぎ」も同じモティーフが入っていますが、これは動物昔話で、似ているけれど類話ではありませんね。
恐い話なので、中学年くらいから。親しい間柄の子どもなら低学年でも楽しめます。子どもは恐い話が好きですからね。
なお、長崎県のこの伝承では、子どもの性別が示されていません。「子ども」と呼ぶだけで、男の子なのか女の子なのかを示していないのです。どちらなのかは、語り手が決めるか、または聞き手との関係の中で決めるといいと思います。不明のまま語ってもいっこうに差し支えありません。言葉としてはテキスト通りに語って不自然ではないようにしました。
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原題は「化け物問答」
前回紹介した長野県の「化け物問答」(こちら⇒)の類話です。
この話型の話は全国に見られますが、この岡山県真庭市に伝わる「てえてえ小法師」は、完成形に近いのではないかと思います。
同じ言葉で問答を繰り返しますが、口に乗せるととっても気持ちがいいです。
化け物の正体暴露の部分が難しいので、高学年向きです。
夜中ごろ化け物が登場する場面は、聞き手をじゅうぶんに恐がらせたいですし、最後の血が出ている場面も考えあわせると、やっぱり高学年向きかと思います。
が、家族に語る場合は、もっと小さい子でも楽しむでしょう。
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