「男の子の成長の話」カテゴリーアーカイブ

ねむり虫の次郎

ねむりむしのじろう

沖縄の昔話

話型名「隣の寝太郎」。寝てばかりいる怠け者が、あるとき一念発起して知恵を使って長者の婿になる話群を広く「隣の寝太郎」といいます。
ここに紹介した寝太郎は、知恵といっても、天帝の使いだと偽っているわけで、罰が当たらないのかなと思ってしまいます。が、なんのなんの、大成功。そして、ほんとうに働き者に変身するのですね。若者の可能性を信じよというメッセージかな。それとも、貧しい庶民の夢。または庶民の生き抜こうというエネルギー。いろいろ考えさせられます。でも、あんまりまじめに語る話ではなくって、笑い話として語るといいかなと思います。笑いの中に真実ありって感じで。
「隣の寝太郎」は日本全国に分布しています。『遺老説伝』は、十八世紀に編纂された沖縄の歴史書です。もとは漢文の写本(手書き)ですが、それを書き下し文にしたもの(1935年刊)から再話しました。
全国的には、しらさぎではなくて鳩にちょうちんをつけてとばす話が多いです。寝太郎が登る木がガジュマルというのも沖縄らしいですね。

共通語テキストは、『語りの森昔話集3しんぺいとうざ』に掲載しています。⇒書籍案内

日常語での語りを聞くことができます。

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かたつむり

新潟の昔話

「田螺長者(たにしちょうじゃ)」という話型名で知られる話です。
おじいさんとおばあさんが子どもがほしいと願っていたら、ある日、田螺がさずかります。田螺でなくて、なめくじやさざえのこともあります。ここは、かたつむりですね。
一寸法師などと同じ「小さ子話」のひとつです。ふしぎな誕生の子どもが、知恵と勇気を出して長者の娘の婿になります。昔話の幸せ、結婚と富の獲得で、話は終わります。
ふたりで祭りに行って、嫁がお参りしているあいだに田螺が人間になる結末の話もありますね。この「かたつむり」のように、嫁につぶしてもらって人間になる話もあるのです。場合によっては、嫁が田螺を嫌がってたたき殺す、というシチュエーションもあります。と、そこで、思い出すのがグリム童話の「蛙の王さま」です。
「蛙の王さま」では、蛙は、呪いをかけられた王子の仮の姿で、王女に投げつけられることで呪いがとけることに決まっていましたね。「かたつむり」では、かたつむりは、生まれた時からかたつむりで、そこに魔女の呪いはありません。そして、自分の力で獲得した嫁につぶされることで人間になる、そのことをかたつむりは知っていました。「蛙の王さま」で、ともすれば理不尽に思えるこの場面が、「かたつむり」では、そういう運命なんだと納得できてしまうのは、わたしだけでしょうか。

共通語テキストは『語りの森昔話集3しんぺいとうざ』に掲載しています。こちら⇒書籍案内

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